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再録禁止カードに関する私見

今回は、昨年後半に再録禁止を再録すべきかどうか議論になった際に書いたモノを、年数や金額等を手直しした文章です。
相変わらず推敲・校正なしの雑文です。ご容赦ください。

1 おじ話

2010年8月、4枚セット4万円で≪Underground Sea≫を購入した。東北の三流大学を卒業し、地元に就職して2年目の事だった。

就職1年目は、実家からの引っ越し費用や、そもそも給料が安すぎて生活するだけで精一杯でした。食費を削ることにより、2年目は多少の余裕ができていました。

2010年4月頃、中学校の同級生と、いわゆるスーパー銭湯で昔話をしていたところ、小学校高学年から中学校卒業までずっと遊んでいたMTGを思い出し、帰りに買ってみようと懐かしのおもちゃ屋に寄ったのが復帰のきっかけでした。

復帰後は、社会人として働きながらスタンダードを追い続けるのは厳しいことと、ヴィンテージ(当時のType1)が昔からあこがれのフォーマットではあるものの、いきなりヴィンテージでは高すぎるということで、レガシーからプレイしつつヴィンテージへ参入を目論むこととなりました。

≪Force of Will≫4枚、≪不毛の大地≫4枚などと買い進める中で、遂に思い切って行動に出た。それが≪Underground Sea≫4枚セットの購入でした。

今からしてみれば、たったの4万円ですが、手取り15万強だった当時の収入では頑張った方でした。

もちろん、高額カードを始めて購入した人の例に漏れず、届いたときは少し手が震え、直接触るのにも抵抗があるくらいでした。また、それから数日間は、≪Underground Sea≫を肴に毎日酒が飲めるほど(注:下戸)眺めていたし、見ているだけでニヤニヤしていました。

それがもう10年以上前の話だなんて信じられないのですが、俺はすでに33歳の“おじ”である。

2 ナウなヤングの話

2021年現在の社会人1年目は、≪Underground Sea≫を購入しようとしたら、いくらかかるのでしょうか。

なんと、晴れる屋価格(2021年1月29日現在)で、NMが1枚16万円。HPでも11万2千円と10万円を下回らない。

実際、2010年に購入した≪Underground Sea≫は、NMでこそなかったものの、SP程度ではあったので、現在購入しようとすると13万6千円。4枚で54万4千円が必要と事になります。

平均的な大卒1年目の給料で考えると年収1/5~1/6に達する金額です。月収の1/4で手が震えている場合じゃない。

試しに俺の相棒(夏の帳の所為で封印中)であるANTを晴れる屋でデッキ検索して最安優先に設定して一括購入をポチッとな(死語)

「¥834,800」

は!?冗談だろ??いや、冗談ではないぞ!!

今からレガシーをイチから始める人はこんな大金を支払わなければならないのか?俺がANTを組んだ頃は15万円程度だった筈なのだが?

いや、きっと大卒初任給が上がっているに違いない。そう思ってググってみましたが、20万6千円。ボーナスが夏と冬で40万円ずつ入ったとして320万円強でした。因みにうちの職場は、18万9千円にボーナスが4.5か月分なので、311万8千500円だそうです。

俺が新卒の頃(17万3千円)とあまり変わってないですね。月額1万5千円くらいの増額という程度です。仮に、3年かけて80万円貯めたとしても、今から3年後に再録禁止カードが同じ価格である可能性は低く、ANTを組むのに必要な金額は100万円を超えている可能性も高いです。

つまり、20代前半から中盤の若者が、レガシーを始めたいと思っても、一般的な収入レベルではほぼ不可能であると推測されます。

3 未来予想図には

若手の新規参入がいないということは、そのコンテンツの崩壊の序章となります。

単純な話で、新規参入者がほぼ皆無となったレガシーというフォーマットは、少ないとはいえ結婚や死亡等によりMTGを離れる人がいる限り、プレイヤーが減っていく一方でしかなくなります。

プレイヤーが減れば大会も減って人気が無くなり、更にプレイヤーの減少を加速させ、最終的に誰もプレイしないフォーマットになってしまいます。

2010年当時、ヴィンテージは50万円以上するデッキが必要な「富豪の遊び」と呼ばれるフォーマットでした。

プレイヤーは少なく、大会もほとんど開催されていませんでした。

今でも、地方での大会の開催はほぼ望めず、GP等のサイドイベントや、晴れる屋の神決定戦の様な大型イベントでも数十人しか参加者が集まりません。2019年8月のEternal Weekend Asiaで参加者が126人もいたのは奇跡的でした。

実際のところ、ヴィンテージは主要フォーマットとして遊ぶには厳しい過疎フォーマットとなっているといえます。まあ、ヴィンテージというフォーマット自体はすごく面白いのでお金にだいぶ余裕のある方にはオススメしますが。

さて、ここまで話したところでわかると思いますが、2021年のレガシーのデッキの価格は、2010年のヴィンテージの価格を大きく上回っています。

必須に近いパーツであるデュアルランドは高騰を重ね、あらゆる再録禁止カードがそれに追随しています。このままの値上がりが続くとしたら、ここからさらに10年も経てば、ヴィンテージの様な過疎フォーマットになってしまうことは容易に想像できます。

少しずつ人が減り、昔から高いカードを所有しているだけの人が細々と遊び続け、新規参入もなく、じわじわと終わりに向かっていく斜陽フォーマットとなるのが今のレガシーの運命だといえます。

4 ウォール・リプリント

再録禁止の壁は厚い。大型巨人の蹴り程度では穴も開かない。

再録禁止カードを再録してしまうと、WotCには、

1)公約を反故にした責任から訴訟による賠償をしなければならない危険がある。
2)過去の宣言を一方的に撤回することで信用を失う。
3)再録により在庫の価値が暴落した小売店等が致命的な損失を受ける可能性がある。
4)再録禁止カードを所有しているユーザーの離反。

などのリスクがあります。

簡単に撤廃してはいけないというのは間違いありません。再録禁止ほど重要な事を簡単に覆してしまっては、それこそレガシーどころかMTGの未来すら怪しい。

ここ1~2年のカードパワーの暴走と禁止連発という暴挙もなかなか強烈ではありますが、再録禁止の撤廃はそれを超える大きなダメージをMTGに与えることになる可能性があります。

≪Black Lotus≫がMagic Online限定イラストで実際にWotCが印刷したら?再録禁止であったカードが大量に入った“マスターズ”が発売されたら?

小売店だけではありません。高額カードを所有しているMTG愛好家も大きな損失となり、MTGから離れてしまう人も少なくないでしょう。そして、それはそのままMTGにとっての損失になるのです。

5 いつかどこかで


再録禁止の撤廃に関しては非常に難しい問題であり、プレイヤーの間では長年議論されてきています。

WotCの内情はわかりませんが、このまま右肩上がりにカードが高騰していくだけの状態を放置していても良い結果にならないと思います。

緩やかに破滅を迎えるのではなく、どこかで決断が必要ではないかと思います。

再録禁止を撤廃したところで、イラストや枠等でしっかり差別化を図り、用途(需要)が限定されているものについては供給を絞るなど、再録する場合もその方法によって十分に価値の担保は可能だと思います。

実例として、モダンマスターズの発売により、収録されたカードは一時的に価格が落ちたものの、モダンが流行するにつれてモダンマスターズ発売前よりも価格が高くなるという現象がありました。

近年何度か再録している≪意志の力≫の価格上昇も近いものがあります。

再録禁止撤廃の際は大荒れになるともいますが、供給量や再録方法のコントロールにより、それ以上の価値を十分に生み出すことができるようになると思います。

難しいことですが、まだまだ長くレガシーを遊んでいきたいので、WotCには長期的な目線で方針を考えていってほしいと願っています。


※これは、あくまで自分がこれからレガシーに参入したいから値下がれと言っているのではなく、レガシーを長く遊んでいくためにこうあってほしいという願いです。もし再録禁止が撤廃されれば、自分は数百万円単位の損失を被ることになりますが、それよりも長期的なMTGの繁栄を願いたいと思って書いています。また、MTGの為に再録禁止を撤廃すべきではないという意見を一切否定する意図もありません。異論は受け付けます。より良い方法や結果が見つかってそれがWotCに届いてくれれば幸いです。

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