デュアルランドβ化計画
この文章を読んでいる人はαやβのカードは持っているだろうか。おそらく基本土地なら持っているという人はそれなりにいるものと思われる。
7~8年前なら500~1,000円で買えたし、今でも状態に拘らなければ5,000円程度で購入できる。GP会場で1,000円のくじのハズレとして入っていたこともあったので、探したら出てくるという人もいるんじゃないだろうか。
もちろん、黎明期のカードの色合いやイラストが好きで使っている人もいるだろう。自分もその一人だ。
「基本土地のこだわり」については過去に語っているが、基本土地に限らず古いカードが好きなので可能な限り古い初版のカードを使用している。
一般的にMTGプレイヤーに一番好きなカードやセットを聞くと、MTGを始めた時期のものを答える人が多いが、自分は初めて触れた1997年頃のカード(テンペスト・ウルザ期)よりも黎明期の古いカードを挙げる。そもそも1997年のカードも古いカードに分類されるレベルではあるが。
特にα・βは全体に少し黄色味がかった濃い印刷がとても良い。デュアルランドの中で最も一般的に使用されているのはリバイズドだが、その明るい雰囲気とは全く違って見える。主観的意見ではあるが、イラストの持つ怪しげな印象やカードとしての枠などのデザインと、印刷の色合いが最もマッチしていると思っている。
こういった印刷の品質や色の濃さなどはある種のロストテクノロジーであり、現代では再現できない重厚感がある。
TCGという概念すらない時代のカードであるため、ほとんどのカードにスレやシャッフルの跡がある。当然ながら、当時の所有者は30年後にこんな価格になっているとは想像もできなかっただろう。古いカードは、こういったカードに刻まれた歴史も含めて愛着を覚える。
オールドカードは良いぞ。
いくら好きだと言ってもβのデュアルランドとなると現代の価格で安く状態が悪いものでも30万円、α版の存在しないボルカに至っては100万円を下らない超高額カードである。数十万円というお金をそうそう捻出できるわけもなく、自分の中ではずっと以前から買えないモノと諦めていた。
稀に大会等で使っている人を見かけ、「イイナー」と遠くから眺めるだけの存在に過ぎなかったし、その高騰を見ていると「あと3~4年早く社会人になっていたら買えたかもしれない」とか無意味な感想が出てくる。
そもそもプレイヤーとして「β化する」より「デッキに入れる可能性のあるカードを買う」ことが優先であったので、黒蓮以外はβでなくとも仕方がないと自分を納得させて気持ちに蓋をしていた。
そう言いつつもβのカンスペとかStPとかボルト買っているんだけども。なんだろう?この現象。5万円を10回払うより50万円を1回払う方が躊躇するこの心理に名前はあるのだろうか。
話がそれたが、とにかくβのデュアルランドは買うことができなかった。
その状況が大きく揺らいだのは「デュアルランド、βにしないの?」という悪魔とも天使ともとれる友人の囁きだ。
もちろん、これまでも似たようなことを言ってきた人はたくさんいた。しかし、今回は事情が違った。
現時点で既にレガシー環境に存在するほぼすべてのデッキを組むことができるだけのカードを手に入れていることや、長年の目標であったヴィンテージの参入も2018年に完了している状況であることがまず1つ目の要因である。
そして、それ以上に大きい要因が、その言葉がただβ化を“奨励”したのではないことにある。
発言者自身が実際にβのデュアルランドを入手・販売できる人物であり、実際に現物を所有した状況で具体的な商談に発展する可能性を持って“提案”してきているのだ。
「欲しいけど、そんな金はない」と言ってその場は終わったが、脳内にはβ化という具体的なイメージが、真夏に1時間歩いた後のワイシャツの様にまとわりついていた。
帰宅してカードだらけの自室内を見渡すと、自分の手元には使わないカードがたくさんあることに気付く。
Foilerでもないのにチマチマ買い続けたANT用のFoilカードの束、所持枚数が4枚を超えたデュアルランド、日本語版を買ったけどデッキを英語に統一したくて買い直して余った日本語版のカード、何故か集めたFrom the Vaultの未開封品等々
「これかぁ・・・」
βのデュアルランドのために一度に数十万円を貯金から捻出するのは簡単ではないが、使わない雑多なカードをデュアルランドに変換することならできるのではないか?そもそも黒蓮もそうやって手に入れたではないか。
キッカケは時々目の前にやってきて、行動しなければ掴むことはできない。今こそ行動すべき時。覚悟を決めよう。
≪デュアルランドβ化計画≫、始動。
目標は、ANTとヴィンテージで使うデュアルランドをすべてβ化できる枚数とする。
そうと決まれば即行動。休日を利用して資産整理を始める。
コレクションとして手元に残したいものを除いて余剰カードを集めていくが、デルタのFoilと、バーゲンのFoilと、ネクロのFoilと・・・意外と多い。
いざ手放すとなると「これも手放すのか」と少し惜しくなるが、それと同時に「こんなに使わないカード買うくらいならお金貯めてさっさとβ化したらよかったのではないだろうか」という反省もチラつく。
なんとかストレージ2本分のFoilを抽出し適当に撮影してTwitterに載せたところ、「2~3件は知人から問い合わせが来るかな」という予想を大きく超えて20件以上の問合せをもらい、数日間は対応に忙殺されることとなった。
この後の目標は、残ったカードを持ってGP常滑に赴いて本件の言い出しっぺと“商談”してどこまで手に入るかというところだろう。
一見して順調に進み始めた本計画だが、これらのカードを手放しても目標の全額には及ばない。おそらくこれは年単位の長期計画になるだろう。
長年の憧れに向かって、今、小さな一歩を踏み出したのだ。
なお、常滑前のジャブに旧友から1枚譲り受けたアンシーがこちら。
一番好きなデュアルランドを長い付き合いの人から譲り受けられるのは嬉しい。
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