見出し画像

命買います。(後編)

帰宅ラッシュだったので、人波に合わせて手慣れた足取りで周囲のスピードに合わせて、改札に向かった。改札を出て少し人波が落ち着いたのでスマホに目をやると、メールが来ていた。「こんばんは。もう到着してるので、着いたら返信願います。私の現在地は東口を出て横断歩道を渡ると喫煙所があるのわかりますか?私はそこにいます。年齢は70歳で背丈は160cm前後の小柄です。服装はハットを被っており、所謂紳士服を着ております。よろしくお願い致します」「了解しました。もう池袋には到着しているので
少々お待ちください」と返信して、喫煙所にむかった。

彼女は東口の喫煙所に向かっている間、どう振舞えばいいか考えていた。挨拶をしたら直ぐその場を離れて、お金の話や自分がどう死ねばいいのか?もしくはどう殺されるのか?をだれにも聞かれずに話せる場所に移動するべきか?あるいはその紳士服を着た年配のお爺さんの指示に従えばいいのだろうか?と考えてるうちに東口に着いた。信号待ちしてる間、彼女は喫煙者だったので喫煙欲が出てきたので、色々考えていたが、第一声は「タバコいいですか?」にしようと急遽思いついた。

信号が青に変わって横断歩道を渡り、喫煙所に向かうとハットを被った彼女と身長の変わらない老紳士が杖を片手に立っていた。向こうも、こちらに気づいたようで、小さく会釈をしてきたので会釈を返した。思ったよりも、何倍もまともそうな人だった、安心感から彼女から話しかけた。「遅れてすみません、ところで私も喫煙者なのでタバコ吸ってもいいですか?もう吸い終わったのかもしれませんが」「いいですよ。幾らでもご自由に。私になどに遠慮せず」

彼女は物腰の柔らかさと、服装の着こなしや所作に本当にこんな老紳士があんな掃き溜めみたいな掲示板の書き込みをするような人と関わりがあるのが信じられないと思いながら、優しい言葉に甘えてタバコを吸うことにして、会話を続けた。「もし良ければ一緒にタバコ吸いませんか?ここで出来ない話もあると思いますが折角なので」「いえ、私はもう吸ったので大丈夫です。しかし、話し相手になれと言うならお付き合いしますよ。」

彼女は、その大人な対応に金の事と飲み会の話しかしない上司とは、まるで違うなと思いつつ、いつも吸ってるメビウスを口元に持っていき、火を付けて一吸いし、再度話し始めた。「本当にあの書き込みを書かれた方とお知り合いなんですか?何の掲示板かご存じなんですか?」「勿論、存じ上げております。そして、こういった事は既に何度もしています。」「こういった事っていうのはつまり、、、そうゆうことですよね?」「はい。具体的な数は言えませんが、過去なんどもです。」「そうなんですね、、」

ある程度わかっていたとはいえ、目の前にいる紳士的なお爺さんが自分がしている事をわかってしていることに驚きと同時にうろたえてしまったが、話をつづけた。「その、言える範囲で構わないのですが、どの程度関わっているのですか?」「関わるといいますのは、自死のお手伝いについてですか?」「そうですね、はい。」「人によりますが、苦しませずにする場合もありますし、徐々に苦しませてという場合もあります。途中で止めてという場合はその場で止めて、お金はお返ししてもらう場合もございます。」「そうなんですね。たとえば、私がこの場で撃ち殺してくださいと頼んだらできるのですか?」「さすがにそれは出来ないですが、撃ち殺すことならできますよ。このように」

老紳士はそのセリフと共に胸ポケットに入ってる拳銃らしき物を彼女にだけ見えるように、見せた。彼女はそれを見た瞬間一気に血の気が引きその場を離れたくなった。あんなに死にたいと考えていたのに、いまはその場から離れたいという気持ちしかなくなってしまい、上司よりも幾分かまともだと思った老紳士が、サイコパスの殺戮者だという認識に変わった。幸い、いまなら人目も多く逃げれると思い、彼女は何も言わず立ち去ろうと思ったところ
老紳士が口を開いた。

「命買います」

※初めて書いたフィクションの文章なので、出来が悪いと思いますが、また何か思いついたら書いてみようと思います。見てくれた方がいたらありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?