祭りの夜
田舎の祭りは、子供たちにとって最高の楽しみだった。夏の夜に、提灯や花火が飾られた山車が町中を練り歩き、屋台ではおいしいものが売られていた。子供たちは、お金を握りしめて、自分の好きなものを買ったり、ゲームに挑戦したりした。祭りの音楽や歌や笑い声が、夜空に響いていた。
ある年の祭りの夜、小学校四年生の健太は、友だちと一緒に屋台を回っていた。健太は、金魚すくいに興味があった。金魚すくいとは、水槽に入った金魚を、紙でできたすくい網ですくうゲームだった。すくった金魚は、自分で持ち帰ることができた。健太は、金魚を飼ってみたかった。
「ねえ、金魚すくいやってみない?」健太は友だちに声をかけた。
「うん、やろうよ!」友だちも賛成した。
健太と友だちは、金魚すくいの屋台に向かった。屋台のおじさんは、二人に笑顔で声をかけた。
「ようこそ!金魚すくいは一回百円だよ。すくえるだけすくっていいからね」
健太と友だちは、おじさんから紙でできたすくい網とバケツを受け取った。そして、水槽に入った金魚を狙って、すくい網を差し込んだ。
しかし、金魚はなかなかすくえなかった。金魚はすばしっこくて、すくい網から逃げてしまった。また、すくい網は紙でできているので、水に濡れると破れてしまった。健太と友だちは、何度もすくい網を交換しながら、必死に金魚を追いかけた。
やっとのことで、健太は一匹の金魚をすくうことができた。健太は嬉しくて、バケツに入れた金魚を見つめた。
「やった!金魚がすくえたよ!」健太は友だちに叫んだ。
「おめでとう!僕も頑張るよ!」友だちも喜んだ。
その時、健太は気づいた。バケツに入れた金魚が、何か言っているような気がした。
「え?何か言った?」健太は不思議そうに金魚を見た。
すると、金魚は口を動かして言った。
「助けてください」
健太は驚いてバケツから手を離した。金魚が話したなんて信じられなかった。
「なんだって?金魚が話した?」友だちも驚いてバケツを覗き込んだ。
すると、今度は別の金魚が言った。
「私達は人間です」
健太と友だちは、さらに驚いてバケツから顔を離した。金魚が人間だなんて信じられなかった。
「どういうこと?金魚が人間?」健太は困惑して屋台のおじさんに聞いた。
「ああ、それはね、実は私達は魔法使いなんだよ。この町に住んでいる人間を金魚に変えて、祭りの屋台で売っているんだ」
屋台のおじさんは、にやりと笑って言った。
「えっ?魔法使い?人間を金魚に変えるなんて、そんなことできるわけないよ!」健太は信じられないと言った。
「できるんだよ。見せてやるよ」
屋台のおじさんは、手に持っていた杖を振って、健太と友だちに向かって言った。
「金魚になれ!」
すると、健太と友だちは、金魚に変わってしまった。二人は水槽の中に入れられて、他の金魚と一緒になった。
「助けてください!」健太と友だちは叫んだが、誰も聞いてくれなかった。
屋台のおじさんは、満足そうに笑って言った。
「さあ、次のお客さんを待とうかな」
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