成功の秘訣

山田は、自分が成功したいという強い願望を持っていた。彼は、成功するためには何が必要なのかを常に考えていた。ある日、彼はインターネットで「成功の秘訣」という本を見つけた。その本は、世界中の有名な成功者たちが自分の経験と知恵を語ったものだった。山田は、その本を読めば自分も成功できると思い、すぐに購入した。
その本は、厚さが10センチもある分厚い本だった。山田は、その本を一日でも早く読み終えることを目標にした。彼は、仕事や家事や趣味をすべて放り投げて、その本に没頭した。彼は、その本の中に書かれていることをすべてメモに取り、自分の心に刻み込んだ。彼は、その本の中に書かれていることを実践しようと努力した。
しかし、山田は気づかなかった。その本に書かれていることは、すべて成功者たちが自分の成功を誇張したり、他人の成功を否定したりするために作り話したものだったということに。その本に書かれていることは、すべて現実とはかけ離れたものだったということに。
山田は、その本を読み終えるまでに一年もかかった。その間に、彼は仕事を失い、家族と疎遠になり、友人とも縁を切られた。彼は、自分が成功することだけを信じて生きてきた。しかし、彼が手にしたものは何もなかった。
山田は、その本を読み終えた後、自分が何も成し遂げていないことに気づいた。彼は、自分が失ったものを取り戻そうとしたが、もう遅すぎた。彼は、自分が孤独で不幸な人間になってしまったことに絶望した。
山田は、その本を捨てようとした。しかし、その時、彼はその本の最後のページに書かれている一文に目が止まった。
「この本を読んだあなたは、すでに成功しています。なぜなら、この本を読むことであなたは私に一年分の収入を提供してくれたからです。これが私の成功の秘訣です。ありがとうございます」
山田は、その一文を読んで呆然とした。彼は、自分が騙されていたことに気づいた。彼は、自分が成功者の金儲けの道具にされていたことに憤りを感じた。
山田は、その本を破り捨てようとした。しかし、その時、彼はふと思いついた。
「この本を売ろう」
彼は、その本をネットオークションに出品した。彼は、「この本を読めばあなたも成功できる」という宣伝文句をつけた。彼は、「この本は世界中の有名な成功者たちが自分の経験と知恵を語ったものだ」という嘘をついた。彼は、「この本は限定版で、もう手に入らない」という嘘をついた。
その本は、すぐに高値で落札された。山田は、その本の値段の10倍の利益を得た。彼は、その本を買った人が自分と同じように騙されることを知っていたが、気にしなかった。彼は、自分が成功したと思った。
山田は、その本を売り続けた。彼は、その本を安く仕入れて高く売った。彼は、その本の内容を変えて別の本にした。彼は、その本のタイトルを変えて別の本にした。彼は、その本の作者を変えて別の本にした。
山田は、やがて大金持ちになった。彼は、自分が成功者の仲間入りをしたと思った。彼は、自分が成功の秘訣を見つけたと思った。
しかし、山田は気づかなかった。彼が売っている本は、すべて同じ内容の本だったということに。彼が騙している人々は、すべて同じ願望を持つ人々だったということに。彼が得ているものは、すべて他人の不幸から生まれるものだったということに。
山田は、自分が成功したと思っていた。しかし、彼が手にしたものは何もなかった。