本の山に登る 1歩目

これから記すのは、家に積まれた本たちで生まれた山を登っていく僕の登本(登山とかけて)記録である。末永くお付き合いいただきたい。

記念すべき一歩目は、森見登美彦著「四畳半王国見聞録」である。

森見作品は、これまでも何冊か読んできた。
出身が京都ということもあり、彼の作品はとても親近感があり、馴染み深い。

そして、彼の作品で僕が好きなところでもある阿呆たちが、この作品には出てくる。とても楽しみな作品の一つだ。それでは読んでいこう。


「四畳半王国見聞録」は、京都を舞台に描かれた、笑いと妄想の連作短編集である。もちろん、阿呆たちがたくさん出てくる。この世界では見渡す限り、阿呆たちでいっぱいである。

笑いと妄想の世界にひたすら浸かりたい方は是非読んでみてほしい。森見ワールドが際限なく広がっている。

ここからは、少し作品の内容について触れたい。まだ読んでいない方はここで引き返して、ぜひ書店に行って手に取っていただきたい。そして、ぜひ京都に来て聖地巡礼していただきたい。


この本で一番笑い、最も好きな場面は、四畳半に鎮座する京都の某大学生が深夜に咆哮しているところである。彼らは、消し去りたい過去を思いだし、未来を嘆き、もしくは内から湧き上がる感情に従い、それぞれが咆哮する。闇夜に月に照らされ、崖の上で咆哮しているオオカミなどとは、全く違う。「阿呆」の咆哮である。僕は、この咆哮に彼らのすごく純粋性を見出し、そこに僕たち人間がかつて自由気ままに咆哮できる動物だったことを思い出させるのだと勝手に解釈している。これを書いているときも、思い出し笑いをしてしまっている。

僕も七畳半のこの王国で、この素晴らしき要塞について考え、また少し煮詰まった時、未来を嘆きたくなった時、過去に後悔した時、咆哮してみようと思う。



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