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うだつのあがらない街、神戸

俗世に疲れ果てたので現実逃避のため神戸市の田舎のほうに赴いている。神戸電鉄の電車は今にも止まりそうである。神戸市は三宮〜ポートタワーの間以外は世間的な神戸のイメージとはほど遠く、散らかった下町かのんびりとしすぎた住宅街が大半である。しかしながらその品性の無さや田舎具合こそが神戸市の魅力だと思い込んでいるし、私はそんな街で生まれ散らかしている。

そんな神戸から出てきたバンドで今もなお神戸のうだつのあがらなさを纏いながら活躍し続けていているのがさよならポエジーである。

先日彼らの新しいアルバムがリリースされた。名のあるレーベルに所属しているので、売り物としてまとまった形になっているかと思いきや、神戸のうだつのあがらなさを全面に吸い込んだ音源たちであった。最高である。

彼らの音楽からは、現在も奈良で活動している某バンドや、かつて天王寺で活躍していた某バンドの影響を大きく感じるが、その一方であの頃神戸の匂いも全面に吸い込んでいる。

あの頃の神戸は品がなく、うるさかった。
今は潰れたが三宮のマージービートというライブハウスに初めて行った時、外はヤニカス達が滞留し最悪で、中に入るととんでもない爆音で耳が取れた。2度と行くものかと思いながら、その後結局取れた耳を探しに何度か足を運んだ。
そんなマージービートなどでバキバキに活動していたシリカというバンドがいた。うるさくて決して偏差値の高い音楽ではないが、熱量が高く痛烈であった。
さよならポエジーはあの頃の神戸の匂いをきちんと音楽として残してくれていて最高である。

ボーカルのオサキアユ氏は筆者と同い年でかつほぼ同郷であるからか、彼の歌から漂う匂いにやけに共感してしまう。センター街、パイ山、マクドナルド、遊戯王カード、鬼ギャルのやけに長いスカート、あの頃三宮に漂っていたあれやこれやを彼の歌から感じる。歳を取っても彼らの曲一つ聴けば、神戸のダメで愛おしい部分を思い出すことができる。

神戸は世間のイメージとは少し違い、全くうだつのあがらない街である。でもそんなうだつのあがらない街にも味があり、その味をパッケージしたグッドなバンドがしっかり存在し現在のシーンにしっかり食い込んでいる。

さよならポエジー/その復元



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