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和紙漉き 4 和紙のちょっと科学

和紙はつよい

和紙は、日常使っている用紙に比べて圧倒的に破れや水に強い。
なぜでしょう、、、
一般の洋紙は、機械装置で大量に生産される。材料はパルプだ。パルプは針葉樹など樹木の表皮ではなく、中の木材部分だ。これは解砕していくと、繊維が短い。和紙の楮などの樹皮では太さは10ミクロン程度で、mm単位の長さだ。
用紙は繊維が短いので、互いに絡みにくい。紙にするため、タルクという鉱物の粉を混ぜる。この粉のタルクが白い用紙となっている。
一方、和紙は繊維だけになるので、和紙漉きで、材料を簀桁上で前後左右に揺らして、この繊維を互いにからましている。前後だけの揺らしだと、左右は破れやすく弱くなる。左右の揺らしも入れると、両方向強くなる。
 さらに、楮の繊維同志は、水素結合といってOH基で互いに結合する。ここに水が来ると結合はゆるむ。破りやすくなる。
いづれにせよ、洋紙に比べて、圧倒的な機械的強さだ。

1.紙繊維の構成について

1)ブドウ糖、セルロース、フィブリル、ヘミセルロース


紙になるというのは繊維の機械的な絡み合いもありますが、科学的には繊維同士の結合が水素結合という分子間力による結合です。粘剤のトロロアオイの糊ではありません。この繊維はセルロースと呼ばれ(C6H10O5)nで表され、植物の光合成で作られます。このセルロース分子はブドウ糖が何千個も結合したもので高分子と呼ばれます。この高分子が集まってフィブリルという集合体を作り、繊維状になります。さらにこのフィブリルに、ヘミセルロースという分子やリグニンという分子などが混ざっていて紙繊維となります。
重要なことは長い繊維状になったフィブリルは規則正しく束に並んでいる部分(結晶部分)と不規則な束の部分(非結晶部分)が混ざっています。この結晶部分は、すでに水素結合ができていて水が来ても結合しません。ところが、不規則な部分の非結晶部分には水が入ることができて、その部分の繊維が膨潤することになります。この結晶部分と非結晶部分の割合で繊維の強さが決まります。

2)繊維の種類

繊維は木材繊維と非木材繊維に分けられます。木材繊維は広葉樹、針葉樹です。非木材繊維の中に靱皮(じんぴ)繊維があり、楮、三椏、雁皮、桑、亜麻などがあります。この靱皮繊維は木材繊維よりも高分子の重合度が高く長い繊維で、結晶部分が多いのです。和紙が格段に強いのは靱皮繊維でできているためです。

3)水素結合とは

セルロースが連鎖して繋がっていくのは、それぞれのブドウ糖の水酸基OHと酸素Oが弱い結合をします。これを水素結合と呼びます。
これが連鎖(重合)して、長い高分子、いわゆるセルロース分子となるわけです。このセルロースが水に溶けないのは水素結合した結晶部分があるためです。しかし水分子とは溶けずに簡単に非結晶部分に結合します。次第に膨潤して次第に崩れていきます。このため吸湿した紙は紙の強度や伸び縮みが発生します。
水との親和性があるのですね。この性質があるので習字、ペンで筆記が出き、染色も可能となるわけです。適度な湿気を含んでいると、柔軟性のある紙の状態が維持します。セルロース分子繊維の製紙の仕組みは、その接着が水素結合の分子間力であるために水素結合の機会を増やしておく必要があります。この工程の一つに叩解(こうかい)という工程があります。
これは叩(たた)いて繊維を砕いて細かくするのが目的ではなく、基本的にフィブリルを増やし、繊維の表面を荒らして毛羽立たせることです。これで一本のセルロース繊維の面積が一気に増えるわけです。面積が増えると、セルロース分子同士の接触面積が増え、即ち水素結合の数が増え強度が増すことになります。

4)ヘミセルロース

もう一つ重要な材料にヘミセルロースがあります。トロロアオイ類と同様の化学構造であり、同じ性質を有する物質です。紙の化学という本によると、靱皮繊維には、このヘミセルロースが多く含まれていること、蒸解や叩解によって大部分は溶けてしまいます。この物質を多く含む繊維は膨潤して水中で良く分散します。フィブリルになりやすい。特に雁皮の繊維はヘミセルロースの含有量が多い。さらに先人がトロロアオイなどから粘性材料を見つけ出すのはすごいことでした。写真は、私が自分で漉いた紙を顕微鏡で撮影したものです。観察していると、粘っこい膜が繊維間にありました。これがヘミセルロースではないかと思われます。トロロアオイは繊維にコーティングされているのと思います。興味深い写真ですね。

ヘミセルロース?

2.にじみについて

習字の半紙などは墨汁のにじみがアートとして重要だ。
半紙はにじみ制御に、パルプなどを混ぜて制御していると思われる。抄紙機械で薄く製造できる。おそらく、化学粘剤とパルプ、ものによってはタルクも入れているかもしれない。にじまない紙とか、表面に微粒子をコーティングしたりする。

1)インクジェットプリンターとレーザープリンター技術

インクジェットプリンターが出現したとき、水性インクのにじみを抑えるために、用紙の表面を、微粒子を組み合わせて薄くコーティングした。このコーティング技術と材料が発展して、写真用紙に代わる各種プリンター用紙が
開発された。
にじみは、インクジェットノズルから吐出した微小適が、表面で横に広がらないように微粒子材料のコーティングで縦に円筒状のようにしみこんでいくようにしてある。余談だが、インクにはグリセリンのような粘性を制御する材料が入っていて、実際にはすぐには乾燥しない。紙の中は湿潤状態だ。

一方、レーザープリンターと称されるプリンター技術はトナーと呼ばれる
10ミクロン弱の粉体が使われる。トナーは粉体なので、紙に浸み込んではいかない。紙の上にできた画像にヒートロールで熱と圧力を加えて、用紙の繊維に絡ませている。いわゆる、コーティング無しの安価な普通紙が使えるわけだ。コピヤーと呼ばれる。考慮点は、用紙の電気的な抵抗を制御して、完全に絶縁な紙にはしていないことだ。いわゆる、半導電体である必要がある。これは、感光体という光半導体ドラムに形成されたトナー画像を用紙に電気的にトナーを引っ張て転写させる必要があるからだ。絶縁の粒子では電流が流れないので、強く引っ張れない。
和紙そのものは、絶縁性が高く、レーザープリンターではトナーは転写できないとされた。
昔、プレゼン用の投影透明プラスチックシートをOHP用紙と呼んで、プリンターでプリントしていた。実はこれも、実際は表面導電処理をしたり材料を少し導電側に処理してある。

和紙にインクジェットプリンターでプリントすると、基本的に滲まない。
そのために、昔いろいろと実験をした。なぜにじまないのか、、、

和紙の顕微鏡写真100倍

写真は約10ミクロンの太さの楮繊維が、からまった和紙の表面だ。
けっこう粗く隙間がある。

X300 顕微鏡写真
墨汁で線を描いた状態

このサイズの繊維では、毛細管現象にもならならないようで、にじまない。
インクは縦方向に浸透していく。

以下、昔まとめていた資料 長いですが、、興味あれば、、

2)墨の滲み(にじみ)について

一般の紙の滲みについては山岳写真や風景写真など、また、書で遊んでいることなど、紙の知識はそれなりに持ってきましたが、この滲み現象は重要なテーマなのです。和紙に触れたという機会ができて、わくわく、以下、滲みについて調べて行きましょう。
驚く発見に、純粋な和紙を使う限り、インクジェットプリンターの水性インクでも滲みにくいのです。これは自分にとっても驚きでした。
一般の紙は、滲み防止に、タルクとよばれるような粘土や色々なもの(サイジング剤)を添加しています。これに対して、和紙は基本的にセルロース繊維のみの単一材料なのです。滲み、いわゆるサイズ度はJISで測定方法が規定されています。この方法をステキヒト法といいます。日本語ではないのでしょうが、目にとまる名称ですね。
1)コロイド溶液
書の世界では、墨と紙と筆の道具に対して、この滲みについては、重要な
書の表現要素です。

3.ちょっと昔の長~いお話。。。

1)ナノ微粒子

ナノの微粒子というのは最近、よく聞かれるかと思いますが、100万分の1mmです。1mmを1000で割ったサイズが1ミクロン、その半分くらいの微粒子の金属を扱っています。光学顕微鏡では見えない世界、電子顕微鏡が必要ですが、生きたものは見えません。
「まさに世界流行したコロナのウィルスは、ナノのサイズです。コロナウィルスからマスクは空気みたいですり抜けます。」
バクテリアは2,3ミクロン、いかに小さいかわかると思いますが、墨の煤のカーボンもその大きさの世界にあります。これに膠、香料などを加え、墨にしていくわけですね。
墨の微粒子は、この膠でくるまれます。この状態をマイクロカプセルといいます。この状態になると、この一個一個の微粒子が、ブラウン運動という熱擾乱で分離します。あの偉大なアインシュタインが理論証明をしました。
すなわち、粒子同士は結合しないのです。牛乳もそうですね。これをコロイド溶液といいます。
 ややこしい話はここまでで、仲間との話題で、墨のカーボンの話。
古墨がなぜすばらしい書を書かせてくれるのかという興味のある話でした。物質の経時変化、自然の力による変化。経時変化した状態の墨を摺る事と摺り方の問題。やっぱり、均一なコロイド粒子を得るには、ゆっくりした速度で摺らなきゃなあ、という結論になりました。

2)墨をゆっくり擦る

友人の書家、小熊日々軌先生の、ゆらびの書の講習会、30分間、静かにゆっくりと摺りましょうと日々軌先生のおっしゃる言葉。その意味がわかりました。日々軌さんはご存じなのでしょうが、私には新鮮な出来事なのです。仲間が墨の世界もおもしろいぞと分厚い文献を見せてくれ、自然の力と時間経過ということに改めて敬服したというわけです。
 さて、固形の墨は、自然に置いておくと、長い年月の間で、膠が変化してきます。コロイド状にカーボンの周りに膠がカプセルとなっている状態が破れ崩れていきます。この変化の形態が、筆、紙とからんで、書の基線にたいしての滲み表現に大きく関係して表現に影響します。完全に膠が分解、コロイド状態を保てなくなった墨は、書いた後、滲めなくなり、水分だけが拡散していくことになります。
議論した文献の墨コロイドの部分の引用は、神戸の老舗 みなせ筆本舗の経営者山口琮一氏でした。この方の、知識情熱、博学はすごいものですね。
http://www.minase.co.jp/
古墨について
http://www.minase.co.jp/syouhin/index_sumi.htm
この話の中で、紙についても、触れられています。これも同様、自然の中で放置されることで、繊維の材質の変化とからみ状況のミクロの変化が起こり、墨の滲みに大きく影響する。たぶん放置しておく間、水分や、それによる結合の緩みなどが生じるのでしょうが、いづれにせよ、人間である我々の尺度では、気づきえない、見えないミクロの変化なのです。美味しいお酒のアミノ酸もそうですね。マクロの世界にいる我々は一応、知覚する。人間は気づいてしまうのです。書の世界もまさにそうでしょうか、三つの要素が混ざり合う。墨、筆、紙。

3)滲みの原理

さて、にじみの話に行きましょう。ちょっと長くややこしいですが、、、
前述したように、墨汁は墨粒子が膠とくっつき、それぞれが分離されたコロイド溶液です。
木耳社(もくじしゃ)から、為近磨巨登著、書道用紙とにじみを手に入れてありました。著者は電子顕微鏡を駆使して墨や紙を解析しています。
タイトルはにじみのメカニズムが初めて解明された!です。研究論文ですが、よく研究実験されたものと感心しました。これを参考にして、まとめます。

1)墨汁の構成

三種類の要素から成ります。
イ)煤と膠の墨粒子と水分子が結合したもの
ロ)膠のかたまりと水分子の結合したもの
ハ)自由水 いわゆる水分子で自由に動ける

墨汁の構成

墨粒子というのは油や木を燃やして出てくる炭素の粒を膠で包んだもの。大きさは油煙では、平均、約30ナノメートル、松煙墨で青墨と呼ばれるものは約100ナノメートルだそうです。1ナノメートルは100万分の1ミリメートルです。いかに小さいかわかりますね。このサイズは、水に分散しても沈んでしまったりせず、それぞれ分離した状態を保ちます。これを前述したようにコロイド溶液といいます。墨汁はこういう状態なのです。まさに、書はナノのサイズの墨を使って、書いているわけですね。
コロイド溶液はゾルと呼ばれます。温度を下げていくと、凝固状態に変化します。これをゲル化といいます。いわゆる、豆腐のようなゼリー状になります。これは膠の分子が格子状になって結合していき、水分子を囲い込んで動けなくするのです。加熱すると格子が崩れて、ゾルに戻り、水分子が自由に動きます。これが墨汁の性質です。
紙の繊維はセルロース分子(C6H10O5)n です。炭水化物で多糖類です。我々が漉く、紙繊維は以下のような構成です。
イ)セルロース分子がいくつも結合した高分子で、ミクロフィブリルといいます。
ロ)ミクロフィブリルが多数、束のように並んで、太いフィブリルを作ります。直径は約0.1ミクロン。
ハ)さらに、このフィブリルが集まって、層状の構造を作って、一本の繊維となります。

繊維の構成

セルロース分子から三段階の結合で、長い太い一本の繊維になるわけです。
さて、重要なのはロ)のミクロフィブリルでは、部分的に規則正しく並んでいる結晶領域と不規則に隙間がある非結晶領域とが混在しています。さて、水はこの非結晶領域にだけ、侵入できます。我々が作業で叩く、いわゆる叩解作業は、ハ)のフィブリルの結合をゆるめて、すき間を開ける作業のことです。すき間が空くとここへ水が入って行けるわけです。このようにして、一本の繊維は全体が毛細管の束のように多孔質の状態になります。このために、繊維は水の中で、水を吸収して膨潤して、柔軟になり、紙に漉くことが出来るわけです。繊維の平均的な太さは20ミクロンぐらいです。
和紙の靱皮繊維ではなく、木のパルプは、中空の繊維です。パルプの細胞膜にも小さなすき間があるそうです。パルプを叩解すると膜の層構造が破壊して、多くのすき間が出来て、靱皮繊維に比べて多くの水を含むことになります。
さて、滲みは、もうおわかりでしょう。水が一本の繊維の前記、吸水できる部分に沿って毛細管現象で動いていくのです。繊維と繊維がからまってできている穴ではありません。この無数の大きな穴は、マスクと同じで、濾紙のように過剰な水はあっという間に紙の厚み方向に落ちていきます。横へ広がるのは、繊維の中の水です。

繊維の水の伝わり方

2)書のにじみ

書では、薄い濃度で広がって、芸術性を醸し出します。これは、繊維に沿って、水と一緒に動いてきた墨粒子は、供給が止まったとき、そこで止まります。実は、ここまでの墨汁の移動は毛細管現象ではなく、単なる付着力です。ここからが毛細管現象で、墨粒子を置いて、動ける水(透明)はさらに先に進んでいきます。面白いことに、繊維の表面には墨汁は乗らずに、表面より下の、繊維との絡んだ隅っこなどに集まっているのです。セルロース分子は電気的にマイナスで、墨のカーボンもマイナスです。反発し合って、繊維の上にはひっつかないといわれますが、電気抵抗の低い水の中で相互の電気的反発力でカーボンが留まるとはちょっと考えにくいですが、、、

にじみ

滲み部分が薄く見えるのは、表層の白い繊維を透かして、その下の黒い墨を見ているので淡い黒色に見えているのです。
おもしろいですね。

3)にじみ止め

さて、最後に、滲み止めのお話しです。
にじみを止める材料として、大昔は澱粉が考えられました。その後、膠が使われ、さらに明礬(ミョウバン)を混ぜて完全なものができました。これをご存じのように、ドーサといって、塗布することをドーサ引きといいます。膠の効果は、塗ったとき、水だけが繊維に吸い込まれ、膠分子は大きいので、繊維には入れずすき間に残ります。これが乾くと、水の浸入を防ぐことになります。繊維が吸水できないことは、繊維は濡れないことで、墨汁との間に表面張力が生じないので、毛細管現象は起こりません。膠の濃度を上げれば、効果が大きくなるのですが、紙は柔らかさを失います。そこで、明礬を混ぜると、膠の量は少なくて良いわけです。明礬は膠を繊維表面に定着させる手助けをするようです。先人の知恵はすごいですね。

4)ネリの効果

和紙漉きを初めてからの大疑問、漉いて重ねた紙が、あれだけの圧搾を受けても、分離できる。なぜでしょう。訊いても明確に答えてくれる人はありませんでした。トロロアオイの粘性が無くなるのかなと思ってましたが、やはりそのようです。よく、一晩おくといいと言われました。これは、一晩のうちに粘性が急速に無くなるとのことです。それで、接着せずに、分離できる。納得。
別に一晩置かなくても、分離できるのは、一枚の紙の繊維のからみや水素結合が勝っているということでしょう。
トロロアオイが、滲みを押さえることに影響しているのではないかと思ってましたら、やはり、実験で効果のあることがわかり、膠と同様に、繊維の吸水のすき間を防ぐ効果を持っています。乾燥すると、セルロース表面に分子が連鎖してコーティングされた状態になっているということなのでしょう。

一般的な量産の紙はパルプを使い、にじみ防止と破れ強化に、鉱物の粉末(サイジング剤)を混ぜます。白土(カオリナイト)滑石(タルク)などです。胡粉も使われます。白色度を高めるのに、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウムも使われています。これらは、いわゆる洋紙の印刷用紙では重要で、表面を平滑にして、光沢を増すために一般的に使われています。書道用紙にも入っています。にじみのコントロールです。
プリンターの技術では、このサイジング剤にどれだけ悩まされているか、最大の技術上の戦いです。機械の中に、サイジング剤やパルプ繊維が落ちて溜まり、動作不良を起こすし、部品を傷め、寿命を短くします。
特にパルプ繊維は固く、重要なレーザープリンターの感光体ドラムという比較的柔らかいプラスチックの光半導体の表面を傷つけるのです。
さらに、タルクなどが表面にひっついて取れなくなったりします。最大の敵であります。和紙万歳ですが、表面の凹凸が大きく、トナー粒子が電気的にうまく転写しません。
ついでに、インクジェット用紙はさらに、何層も表面にサイジング剤をコーティングしています。インクの水を厚み方向に充分に吸収するためです。
インクジェットプリンターの水性インクは、実は、なかなか乾いていないのです。グリセリンなど粘度調整用に入っていますので、結局、いつまでも乾かずです。そのうち、内部で毛細管現象?で横に広がって色がおかしくなったりもしますね。

5)和紙プリント

現在、自分で漉いた和紙にインクジェットプリンターでモノクロ写真をプリントして楽しんでますが、滲みません。これは、なぜだろうと完全には理解できませんでしたが、今まで、説明してきたことに合わせて、インクジェットインクの一滴の大きさが関係していると思います。一般的に、最近のプリンターのインクの一滴は数ピコリットルから20ピコリットルです。この一滴の数ピコリットルというのは、滴の径が1ピコリットルでは10ミクロン、数十ミクロンから100ミクロンぐらいの直径になります。ちょうど、10ミクロンはフィブリル繊維の一本の大きさぐらいです。液量が少ないので、繊維を毛細管現象で伝わらないのではと理解しています。
書の滲み部分の顕微鏡写真を撮ってみました。ほとんど滲んでいません。楮の繊維上に墨が乗っています。
インクジェットでは、液滴が小さいので、毛細管に行くまでの水は無いということかと思います。

顕微鏡写真
顕微鏡写真

6)ナノの世界から宇宙の単位へ 話の脱線

小さな物質が、我々のマクロの世界で、無意識に理解して扱っていることの驚き、コロイド、分子、原子の世界までの話になって、ついでに、ドカーンとジャンプして、今話題の素粒子まで綴りましょう。世界が広がるでしょう。広大な無限の宇宙の世界の話です。現代物理学、素粒子理論、宇宙理論と実証が急激に進んでいます。
まず、10の+27乗mの世界、これを構成する小さな素粒子の世界は10の-35乗m、実に、人間の世界は粒でしかないのですが、それを超越した62乗のダイナミックレンジです。大きさの尺度のことですが、宇宙の成り立ちは人間の想像を絶するスケールです。物質の間には、重力のように場のチカラを重力場、時間の場、などなど色々な場が存在します。今、話題のヒッグス粒子の場もあります。宇宙の成り立ちは、素粒子によってすべてが構成されているようです。さらに飛躍しますが人間がこれらの多種の素粒子の運動に反して、つまり、自然の力の場に逆らって作った物は違和感が生じ、我々は、すぐに無意識のうちに知覚してしまうということなんです。まさに、技術の世界がそうで、何かを人工的に作ると、必ず、自然に逆らうわけだから問題が起こる。それを克服しながら何とか、使える道具にする。結局、この自然の力の運動に対して不自然となり、いつの間にか、くずれてしまう。そしてエントロピーの法則の極限状態となって、完全な静寂の世界になっていくのでしょうか?わかりません。

こんな話を記述して何を言いたいかというと、工芸や音楽、まとめてアートという世界で、物事を創造するとき、現在の人間が知り得ている宇宙の成り立ちを、少しでも理解していると、アートとして創造するものが、さらに面白い発展に繋がるのでは思います。リアルな深い作品が出来る。知らないより、知っていた方がいい。好奇心の強い方が、より表現の幅が広がるんじゃないかと思うのです。

話があちこち、飛んじゃいましたが、人間は、もちろん他の生物も、はるか見えない極小の世界でも感性で知覚できる能力があるということです。このすばらしい能力はその地域に住んできた多様な自然の風土環境とその中で完成が培われ、他の地域の人間と比べて、それぞれで独特なものになっているということでしょうか。人間の能力は誰も一緒です。
我々の眼の前に広がる宇宙は、さらに、やはり我々人間の尺度を超えた神の天上界だ、なんて考えたりしています。こんな仕組みは、単にダーウィンの進化論だけでは説明できない。太古の昔、海中のある魚の上の方に敵の魚がいると、知らないうちに頭、背中に角やトゲが生えてくる。植物しかり、敵がいると、あるいは寄って来る生物を選択するために毒やトゲを用意する。こういう仕組みは宇宙を創造、支配する神が創造した人間を特別にして、その仕組みを制御しているのではと思わされます。

日本の世界に誇るスーパーコンピュータの”京”は表現は違いますが、16乗の世界。宇宙ではダイナミックレンジの16乗はまだたいした値ではない。
人間や生き物たちは無意識の中で知覚や感性が働いており、我々の触れている紙の世界では、紙の風合い、墨の柔らかさを知覚して理解できているということをあらためて思うのです。前述した物質を構成する超ミクロな世界によって構成されているのに、自然に感知できるのですね。
前述した、この数年内にもどんどん発見されようとしている素粒子と宇宙の世界の実証、アインシュタイン以来の大飛躍、ダークマター、ダークエネルギーの存在実証に世界の科学者が燃えていますね。スイスの円周27kmもある高速加速器CERNでの、実証と発見で、素粒子の理論の証明が続きます。このCERNの装置は、日本の高度な技術で支えられています。一番重要な素粒子センサーは日本人の町工場のパートおばちゃんです。
日本人の和紙漉きと同じように繊細な緻密な性格がなせる技ですね。
おばちゃん万歳です。男はだめか!日本の技術を支えてきたのは女性パワーです。私も昔、この眼で半導体の工場で、半導体の小さな小さなLEDチップの不良選別作業をみました。強烈な印象でした。いとも簡単に裸眼でやってしまう女性達。無意識で。
さてさて話は和紙からそれてしまいましたが、宇宙を構成するものの比率で、我々のが構成されている目に見える物質は4%しかありません、まだ発見されていないダークマター(暗黒物質)23%、ダーク(暗黒)エネルギー73%と理論予想されています。。ダークマターへの架け橋が今話題のヒッグス粒子、さらにアクシオンという未発見の粒子につながっていくようです。素人の私には、好奇心だけですが、生きているうちに少しでも知りたいもんです。ころりと理論が変わるかのせいもあるようです。人間の神から与えられた好奇心は宇宙原理のわずかな理解でもがいているのかもしれません。
大脱線しましたが、人間は、ものの原理を少し知って、宇宙の世界を垣間見て、世界観、宇宙観を広げ、常に新しい感性を大事に研ぎ澄ましましょうというのが、芸術家、アーティストへの願いです。






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