浅草演芸ホール昼席〜蝶花楼桃花主任興行

桃花師匠の主任興行に行ってきました。真打昇進から4ヶ月でトリを取るのは異例の早さで、一之輔師匠を抜いたことがニュースでも取り上げられていました。若手真打として期待の大きさを物語ります。

今日の興行で目を引いたのは、トリの桃花師匠含め、女性落語家が4名も出演していたことでしょうか。なかなか珍しい香盤でした。

桃花師匠を知ったきっかけは数年前、文化放送のラジオ番組SHIBAHAMAラジオです。春風亭昇々さんと金曜日のパーソナリティとして出演されていて、その明るいキャラクターが魅力的でした。高座を拝見するのは、その番組終了前後に開催された昇々さんとの二人会以来です。

桃花師匠は、二つ目の春風亭ぴっかり時代のトレードマークだったパーマではなく、ストレートのショートカット、羽織を身につけない袴の出立ちで登場。ニコニコした笑顔で手を振られている姿が可愛らしく、それだけでも高座が華やぎます。

マクラでは、女性落語家がいかに希少かという話に始まり、前座時代に小朝師匠が出演していた大河ドラマ篤姫に帯同したエピソードは「私はポスト宮崎あおいです」という一言をフリにした小噺で面白かったです。さらに、女性の職業の呼び方が今と昔で違うという話題から、女性看護師を主人公にした新作落語「ナースコール」に入りました。

噺は、破天荒な新人ナースが、看護婦長や患者を巻き込むドタバタ劇を描いたもの。女性落語家ならではの演目ではないでしょうか。新人ナースはいわゆるぶりっ子キャラで、それを演じる師匠がとにかく可愛らしいです。コーヒーを入れるように頼むと検尿カップに入れて出したり、ナースコールの電源を抜いてしまったり、糖尿病の患者に大福を無理矢理食べさせたりとどんどん周囲をかき乱していく様子に、一体次はどうなるんだろうと引き込まれていきます。また、扇子を爪切りに見立てる所作の時の「あまり見ない使い方だね」「そう、白鳥師匠しかやらない」、大福を食べる所作で「なんか動き違くありませんか」「新作だから何をやってもいいの。確かに柳家はやらないわね。喬太郎師匠は別だけど」といったフレーズにも笑ってしまいました。

今回は新作でしたが、次にトリの高座を拝見する機会が有れば、ぜひ古典落語も観てみたいです。

その他の主な出演者

弁財天和泉
女性落語家さんで、新作落語に定評があります。今日の演目は「紀州」。徳川家7代将軍家継の世継ぎが徳川家御三家の水戸、尾張、紀州のどこから選ばれるのかを描いた歴史物の古典落語です。鍛冶場で鉄を叩く音「トンテンカン」をか「天下とる」と尾張藩主に聞こえたというところが噺のキモなのですが、それと絡めて自身がファミレスでのバイト時代に常連さんの「今日、寒くない?」を「今日、サーモンフライ?」に聞き間違えたエピソードを入れたり、尾張藩主が一旦将軍になるのを断った際の心情説明で、子供がお年玉をもらった時に大人みたいに遠慮したら鼻につくよねという小噺を入れたり、例え話が入ることでちょっととっつきにくい話も楽しく聴くことができました。

柳亭こみち
こちらも女性落語家さん。何度か高座を拝見していますが、落語が面白いのはもちろんですが、江戸っ子のべらんめぇ口調が板についていて、男前な印象も受けます。マクラでは、弁財亭和泉さんとはママ友でという話を始め、「私にもママ友という名の表面的付き合いをする友達がいるんですよ」のフレーズで爆笑しました。今日は「ん廻し」という、単語を言って「ん」の含まれる数だけ、田楽をもらえる遊びを描いた古典落語。たわいない話ですが、なんでも先にやりたがる六さんがなかなか遊びのルールを理解できない様子や仲間内での馬鹿馬鹿しい会話のやり取りが可笑しく、落語の世界の住人が生き生きと動き回っている姿が想像できて面白かったです。


古今亭文菊
若手真打の中で個人的に一推しの師匠。マクラの「生まれ持った品の良さ」のくだりは何度聞いても毎回笑ってしまいます。師匠の古典落語の人物描写がコミカルでとにかく面白いです。今回やっていた「権助提灯」では、旦那のお供をする権助が、正妻にも妾にも家に入れてもらえない旦那をからかう描写は絶品です。初めて観た時からさらに芸に磨きがかかっている印象を受けます。ぜひ主任興行や独演会にも行ってみたいです。

今回改めて思ったのは、寄席はチームプレーの面白さがあるということです。観たことのある出演者でも、誰の主任興行で、どの出番で、どんな演目をやるのかで印象的がまるで違うことが多いと感じます。もちろん好きな噺家さんの独演会や落語会に行くのも楽しいですが、私が寄席に惹かれるのは団体芸的な要素に魅力を感じるからかもしれません。

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