SHOP編集ショップクエスト10〜地下の世界〜

浄化槽の補助金が打ち切られていることは、オーナーさんにもすぐに共有した。
補助金で浄化槽を入れて家を賃貸にしようと考えていたオーナーさんにとっても驚きの情報だっただろう。
浄化槽は自費で入れるには高い。
小さいものでも7、80万はするらしい。
わたしたちも自腹で浄化槽を入れてまで借りることは難しい。
どうしたものか・・・。

わたしたちはこの頃、今まで考えることのなかった地下の世界にものすごくアンテナを働かせるようになっていた。

街を見る解像度が格段に上がった。
車で出かけている時も、この街は下水道が通っているかどうかという話題でひと盛り上がりすることが増えた。
「えー！あいつん家下水通ってんのかよー！」
という下水トークや下水ジェラシーも増えた。
とにかく下水についての知識が急速に増えた。
でも別にそもそもすごく知りたかったわけじゃないから正直微妙である。
（もちろん知ってるに越したことはないが。）

数日後、ひとまず浄化槽の補助金がまだ申請できるエリアにある高台の空き家を見に行った。

その家は３年間この町にいて一回も行ったことのないエリアにあった。
細い坂道を登ったところにその家はあった。
広いお庭付き、裏側には竹林、その反対には畑が広がる気持ちのいい雰囲気だった。
家自体はそれなりに古そうな感じだった。
けれど土間があったり、不思議な隠し扉があって上に登れる秘密の小部屋みたいなものがあったり、楽しく使っていけそうなおもしろみがあった。

そして何より浄化槽の補助金が申請できる。

これはとても重要なことだった。

ところが、浄化槽でまた問題が起きることになる。

つづく