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クイズの話



・先日、友人に「これからスマブラを始めるのでレクチャーしてほしい」と頼まれたため、オンラインで基礎を教えた。自分は一応発売初期くらいからスマブラをプレイしているし、未だに大会の観戦なんかも行っているため、対人戦の基礎的なものは多少なり理解している自負がある。



・スマブラはパーティゲームを謳っているが、1対1でプレイすると、きちんと格闘ゲーム的な読み合いができるように設計されている。もっと具体的に言うと、各場面にリスクとリターンがしっかり存在していて、試合に勝利するにはこの駆け引きにより多く勝つ必要がある。


・例えば、攻撃をガードで防がれると隙が発生し、逆に攻撃される。だがガードしている相手には投げ攻撃ができる。もちろん投げ攻撃にも隙があるため、外すと攻撃されてしまう。

・こう書くと相手の技を避けて隙を伺うのが有効に見えるが、避け続けているとどんどん画面端(崖)に追い込まれ、選択肢が狭まってしまう。このように簡単に記載しただけでも、読み合いやリスクリターンが発生するゲームだという事をなんとなく理解してもらえただろう。



・読み合いって要は運ゲーだとか、じゃんけんみたいなことでは?と思う人もいるだろうが、そうではない。一試合中にこの読み合いは何度も何度も発生するため、試合が進むごとにプレイヤーの癖やキャラクターの強み弱みが浮き彫りになってくる。読み合いの試行回数を重ねる事で、勝敗、ひいては強いプレイヤー弱いプレイヤーがはっきりしてくるのである。

・まとめると、初心者が上級者に1度も技を当てることができないということはほぼ無いが、最終的に試合に勝つこともまた不可能と言って差し支えない。宅飲みで行われるスマブラで、ゲーマーの男が初めてプレイする女の子をボコボコにしている様を何度も見かけたことがあるだろう(無論自分も例外ではない)。




・トランプ(ポーカーなど)や麻雀も、似たような考え方があると聞く。その場その場は運の要素が絡むが、試行回数を重ねた先に実力が現れる。1回きりの勝負で初心者が上級者に勝つことはあり得るが、10回100回と試合を回すと必ず実力通りの戦績になると。

・対人要素のあるゲームはこういった読み合いに魅力があると思う。これはプレイヤーとしても、観ている側としてもそうだ。ボードゲームなどが正にそうだが、原理原則を掴めば初心者でもある程度楽しめるゲームこそ、完成度が高い。



・その点、最近のしもふりチューブがやっているオリジナルゲームは凄いと思う。簡単に真似できるし面白そうだ。







・上記を前提に、なぜこんなに人気があるのかがイマイチ分からないコンテンツがある。それがクイズだ。特に、一般常識などからは大きく逸脱した「何で分かるの!?」的なやつ。


・昨今はテレビでもネットでもクイズが大人気であるように思う。界隈に明るくないので具体名を多くは出せないが、東大生がクイズの能力で競っている番組なんかはみんな少なからず観たことがあるだろう。



・昔から人気なクイズ番組というと、「ネプリーグ」とか「Qさま」とかだろうか。これらが面白いのは理解できる。お茶の間が分かるか分からないかのラインの出題によってこちらも参加ができることと、あとは演者のスター性だ。


・「ヘキサゴン」に関してもこっち側だけど、これに関してはまた別で言いたいことがあるのでそれはさておき。

・あとは「IQサプリ」「ナゾトレ」みたいな、知識問題ではなく工夫で正解に辿り着けるコンテンツも面白さは理解できる。やはり視聴者が参加できるからだ。



・難問が主であるクイズ的コンテンツを自分がイマイチ楽しめないのは「結果がプレイヤーの能力(知識)に全て依存していること」と「クイズを解くために勉強するという行為に対して価値を見出せないこと」が原因だと思う。

・結果がプレイヤーの能力に依存しているのはスポーツなんかもそうだが、例えば陸上選手なんかは0.1秒を縮めるために果てしない練習を積み重ね、道なき道を行く。一流のコーチが付いたとしても、結果が伴うことは確約されない。シンプルだが過酷な世界である。結果の裏に血の滲むような努力を想像し、視聴者は感動する。


・が、クイズ王の努力って何なんだろうか。「その問題をたまたま知っていたか」「それを覚えていたか」に尽きるんじゃないか。例えば世界中の首都を全て暗記することはそれなりに大変だろうが、「首都クイズ」に参加するなら「そりゃ全範囲勉強するわな…」となるし、ジャンルレスのクイズなら、正解しても「首都をよく知ってるんだね」としかならない。ここに読み合いや戦略は発生しないし、それこそ正解するかどうかは運ゲーに見える。


・ましてや「東大王」や「みんなで早押しクイズ」なんかで出題されるクイズは一般常識の範囲から大きく外れている知識問題が多い(と思う、知らんけど)。これを正解したからって何だっていうんだ。「いっぱい勉強してすごいねえ、メガネくん」の域を出ない。言い過ぎ?


・こういったコンテンツに好んで参加する人たちはクイズに答えるための勉強に大量の時間を使っていると思うが、勉強した内容がそう思い通りには出題されないはずで、蓄積した知識、および努力の大半は無に帰すのである。それでも勉強を重ねるという気合いにどうも共感できない。その努力の末に難問を答えられた時、凄まじい快感が全身を包むのだろうか?


・そもそも「クイズに対する熱量が高い状態」があまりしっくり来ないんだろうな。クイズってテレビで流れているもので、ながら見して知ってる問題があったら「これ知ってる〜」となり、なんとなく楽しい。自分にはこれくらいの感覚しかない。



・好きなコンテンツに対するクイズであれば興味が持てる気持ちはわかる。マキシマムザホルモン歌詞クイズやperfumeイントロクイズ、ももクロ衣装クイズがあったら、コンテンツに対する自分の愛情を客観視するためにちょっとやってみたい気持ちはある。

・だが、彼らはあくまでジャンルレスだ。この世に存在する知識を全て我が物にしようとしている。"その一問"に回答するために、彼らは時間を使う事を惜しまないのだ。




・クイズ王同士のぶつかり合いとなると輪をかけて奇妙なことになるだろう。問題文全体を聞けば互いに答えを知っているため、なるべく早く、かつ答えはコレだと確信できるギリギリのタイミングで回答ボタンを押す。

・ピンポーン!


・はいクイズ王早かった!答えは?


・「上越新幹線中山トンネル」


・正解〜!!!


・観客は騒然。回答し損じたアナザークイズ王はやられた、と悔しくもどこか満更ではない様子だ。



・…ここに面白さがあるというのだろうか?


・出題を分析して最速で答えを導き出すという意味だと、百人一首と同じような面白さがあるんだろうか。百人一首も面白くないだろ。


・クイズの魅力、理解している人がいたらぜひ教えてください。




・知識をつけることにマイナスはないものの、直接役に立つのか分からないことに果てしない時間を掛けて取り組むこと。改めて考えてみると、この熱量に自分はついていけないのだろう。クイズに注ぎ込む膨大な時間を、実用的な資格の勉強に充ててみたらいいんじゃないだろうか。



・そんな月並みなことを考えながら、Switchの電源を入れてホーム画面を眺めてみる。




・1,000時間あれば行政書士資格が取れるんだってさ。引き続きよろしく。

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