太陽と月とロッキー山脈と
「今日が最後の日」
僕はそう決めて、今日を迎えた。
大学で家を出て上京した。
お金をためて、ロッキー山脈にひとりで勉強をしに旅立った。
大自然の中でひたすら働きながら独学をしていた。
知り合いは、有名な海外の大学に留学。
実際、うらやましかった。
大学では同年代との差をかなり感じた。
留学した人からは、「働いていたのは留学ではない」と見下され、
留学していない人からは、「海外に行ったから私たちとは違う」と避けられた。
僕の居場所はなかった。
それ以前に、誰として僕を人として見ていなかった。
だから、だから。。。
僕なんて、いなくなればいいやと思った。
その時だった。大学の賞をいただく報告をもらった。
大学で1番大きなホールの壇上に上がって、数千人の前で授賞式が催される。
「この日まで生きよう。そうしたら、死んでもいいや」
そう思って、1週間ほどをやり過ごした。
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受賞式当日。授賞式が終われば、私の人生も終えようと思っていた。
式典の最後に、創立者からの伝言があった。
創立者がアメリカに行った時に、昼に太陽と月が見えたという話から、彼はこう締めた。
「太陽は燦然と輝いています。月もまた、皆さま方に輝いています。太陽は情熱。月は知性です。ロッキー山脈は厳たる信念で皆さま方を見守っています。」
私がロッキー山脈に行っていたということは大学に伝えていないので、知るはずもない。しかし、創立者ははっきりとロッキー山脈に触れて話をされた。
やっと僕を受け止めてくれた人がいた気がして、嬉しくて、涙が止まらなかった。
そして、生きろと言っているように聞こえた。
それから、死ぬことは忘れて、生きることを考えるようになった。
昼に月を見つけるたびに、創立者の言葉が心にこだまする。
「ロッキー山脈は皆さま方を見守っています。」
その言葉だけで、今日を生きていこうと思えた。
だから、僕は、昼の月が大好きなのだ。
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