贈りもの

「これでほんまに届くんやろか」

オンラインで花を贈るサービスを人生で初めて使った。
相手は祖母だった。

私が大学生時代に貯めたバイト代で贈ったんだ。
バイト代で生活していた私にとって、なけなしのお金だった。

誕生日の日に母からメッセージが届いた。
祖母が花束を持っている写真と共に、「花が届きました」と。

祖母は、笑っていなかった。
認知症があり、理解ができなかったのだと思う。

1番お世話になって、1番迷惑をかけた祖母にうんと恩返しをしよう。
そう、私は心に誓った。

何ができるか分からなかったけど、社会人になったらお花をあげよう。
伝わらなくてもいい。
届ければ、何か感じてくれるだろう、と思っていた。

大学最後の夏。
私は、祖母に胡蝶蘭を直接渡した。

祖母は、笑っていなかった。
棺の中で、花に囲まれて横になっていた。
私は、その胡蝶蘭を棺の真ん中に置いた。

届けても、何も感じてくれない。
渡しても、笑ってくれない。
贈りものは受け取ってくれて、嬉しく感じるものだと、心に沁みた。

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