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Perfumeのライブで提示された「今を生きるヒント」(Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA" さいたまスーパーアリーナ公演レポート)

Perfumeのメンバー、スタッフ、ファンにとっては悪夢の2020年2月26日。「Perfume 8th Tour in DOME "P Cubed"」東京ドーム2日目、ツアー千秋楽公演は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から政府が開催自粛を要請し、公演中止となった。これまで日常のすぐ側にあったはずのライブはいとも簡単に奪われた。あれから2年半、Perfumeはようやく全国ツアー開催にこぎつけたが、ツアー皮切りとなる2022年8月、有明アリーナ公演までの2年半の間、あの頃の日常を取り戻すべく、チームPerfumeはどれだけ耐え忍び、苦悩を重ねたか、想像に難くない。

2022年10月30日に開催されたPerfume 9th Tour 2022 "PLASMA"さいたまスーパーアリーナ公演2日目は、新型コロナウイルスの終息を目指すべく変化を余儀なくされた世界への対応を求められ、新しい日常の中で迷い戸惑う者たちへの優しくも力強いメッセージが込められたライブであった。

「固体・液体・気体に次ぐ物質の第4の状態である」と言われている "PLASMA"。この第4形態に入ったPerfumeが、次々と形を不思議に変える音楽体験をお届けする本作をどうぞお楽しみに!

「2022年7月27日(水) オリジナル New Album 「PLASMA」発売決定!」
(Perfumeオフィシャルサイト)
https://www.perfume-web.jp/news/detail.php?id=3810&lcid=2

新アルバム「PLASMA」を携えて全国9都市を回る全18公演のツアー。ハイテクとの親和性の高さは以前から評価されてきたPerfumeであるから、今ツアーも当然最先端技術を全面に押し出した演出で楽しませてくれるのだろうと思っていた。しかし実際のところは、要所でハイテクを駆使しつつも、ステージ周囲でスタッフが人力でセット、ステージを転換させるハイブリッドな演出。3人のフィジカルが際立っていた。


「まもなく開演いたします」
それまで公演に関する諸注意を事務的にアナウンスしていた影アナの声のトーンが1段上がった。それに呼応するかのように観客の手拍子も一段と大きくなった。

Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA" さいたまスーパーアリーナ公演2日目、開演である。

場内は暗転し、SEが流れ始める。
エフェクトが施された呼吸音、息を吸って、吐く。それに合わせて場内の証明も明るくなったり、暗くなったり。「フッ」っと息を吐くと再度場内暗転。

01.Plasma

アルバム「PLASMA」のタイトルトラック。Perfumeが解釈した「プラズマ」がこれから130分かけて提示される。ゴンドラに乗ったPerfumeの3人が上方から登場し、ステージへ降り立つ。3人とも緊張の面持ちだが自信に満ち溢れた様子が伺えた。シルバーの衣装がきらびやか。

02.Flow

今年リリースされた曲で、ドラマ「ファイトソング」主題歌。コロナ禍で閉塞感や先の見えない不安に包まれた世界、ネガティブな事など吹き飛ばしたくもなる。しかしこの曲にはそんな不安や心配事もすべて包み込み、私たちが寄り添います、Perfumeと一緒に前へ進みましょう、という包容力をも備えていると感じる。PLASMAツアーのオープニングに相応しい楽曲。

03.ポリゴンウェイヴ

昨年リリースの楽曲。昨年と今年にぴあアリーナMMで開催されたライブ[polygon wave]ではELEVENPLAYとの共演も話題になったが、今ツアーはELEVENPLAYの帯同はなし。360度ぐるっと客入れのたまアリのセンターステージ、3人だけでも客席全方位へ圧倒的な存在感を放つ。

04.再生

2019年に配信先行でリリースされた楽曲、映画「屍人荘の殺人」主題歌。
頭サビ明け「皆さんこんばんはPerfumeでーす!」とあ〜ちゃん。いつも通りのトーン高めの第一声だ。

最大限界生きたいわ
宇宙全体が手品いやい
正真正銘未来以来
偶然性さえ運命さ
コンピューターでも解けないわ
果てしない光線の海
全身全霊で向かうわ
再生 再生 再生成

Perfume「再生」 作詞:中田ヤスタカ

コロナ禍の今、この歌詞の内容が妙に響くのは私だけではないだろう。
今ツアーでこの楽曲をこの位置に置いたのは、2020年2月26日以降、瀕死に陥ったエンターテインメント業界を文字通り「再生」させようとするチームPerfumeの決意のあらわれとも受け取れる。

アウトロの余韻を残しつつ長い拍手で3人の挨拶を待つ。


MC1

「皆さん、こんばんは〜!」3人の声が場内に響く。それに応える場内の拍手。

以下、MC要旨。

あ~ちゃん
会いに来てくれて本当にありがとうございます。
久々のライブツアー、私達もみんなをより近くに感じたいということで、360度見渡せるステージにしました。みんながこれまで聴いてきてくれてどんなイメージをこの楽曲たちに持ってくれているのか、そして私達がどんな風に想像していったのか、MIKIKO先生の振り付けや演出も一緒に、ノリノリで爆音で楽しめる、私たちだけの会場ですから、今日は最後まで楽しんでいきましょう〜

のっち
最初からみんなの拍手が、魂のこもった拍手が心に身体に響いて、とても嬉しい気持ちです。アルバム「PLASMA」収録楽曲からは今の世の中どう生きていくべきか、どう立ち向かっていくべきか、教えられてる気がします。全国を回って、みんなの「PLASMA」を共有できることを嬉しく思ってます。

かしゆか
ライブ制作にあたってMIKIKO先生と話し合っていたときに、あ〜ちゃんが「空を飛びたい!」って。そうしたら先生が上から登場する演出にしてくれたの。最高なライブになるよう皆さんで一緒に助け合いながら、寄り添いながら、ライブを作っていけたらいいなと思っています。PLASMAのアルバムのように、肩の力を抜いて、身体を揺らして。隣の人には迷惑をかけないように楽しんでいきましょう。

3人(ほぼあ~ちゃん)
昨日はファンクラブ率87%、みんなに相談したんですよ。インスタグラム始めるのどう?って。そしたらみんながいいんじゃない、って言ってくれたので始めました。今の時代変化してるから昔のやり方じゃなくて変わらにゃいけんと感じていました。人生今が一番楽しい。インスタでメンバー個人にも興味を持ってもらえればなと思います。IDはa-chan、kashiyuka、NOCCHi全部使われていて、みんな名前譲って!って言ったんだけどダメで。インスタは更新したりしなかったり。さっきメンション機能を教わったんよ。でも最初うまくいかなくて、妹のちゃあぽんが教えてくれました。まあボチボチやっていきます。

続いてコール&レスポンスの練習。
男子、女子、そうでない人、眼鏡、コンタクト、裸眼、Tシャツ、パフュームT、マイメンT。
途中、あ~ちゃんの「さっき食べた中華まんが上がってきたよ~!」に場内爆笑。

さらに続いて恒例の場内グループ分け。
かしゆか側「マイ」
のっち側「メン」
あ~ちゃん側「だーい!」
今ツアーのグッズ「マイメンT」をフィーチャー。


05. Drive'n The Rain

ステージ上には椅子が登場。周りを回ったり、座ったり、座面に足をかけたり。艶っぽい振り付けが楽曲の世界観をより深める。これぞMIKIKOワールド。

06.ハテナビト

ファンの間でも人気の曲に手拍子が一段と大きくなる。センターステージ端の花道途中にあるミニステージまで3人が拡がって、ステージ空間を大きく使う演出。楽曲の壮大さが際立つ。

07.ナチュラルに恋して

10年以上も前の懐かしい楽曲。ライブでは久しく披露されてない楽曲。若干季節外れ感のあるこの楽曲をなぜこのツアーで?という素朴な疑問はあったが、懐かしさが勝った。蛇行気味の細い花道を後ろ向きでステップを踏んでいくシーンもあり、落ちやしないかとヒヤヒヤもした。

08.Time Warp(V1.1)

カラフルな照明がMV同様の世界観を醸し出す。観客も手拍子にメリハリをつけて応える。8月に有明アリーナで観たときはこんなメリハリなかったぞ?と思いつつも、ツアーで全国回るうちにここまで観客も仕上がるのか、と驚きを隠せなかった。

09.∞ループ

中央の円形ステージが上まで円筒形の紗幕ですっぽりと覆われる。曲は始まったが3人の姿はない。すると場内四方からプロジェクターで紗幕に映像が投影され始めた。アルバム「PLASMA」のキービジュアルをモチーフにした映像だ。この間、3人は衣装替えの真っ只中。曲の終わり頃にかけてようやく3人が登場。もちろんオリエンタルテイストの赤いあの衣装だ。

10.Spinning World

3人は現れたものの紗幕はそのまま。映像が投じられる紗幕の内側で3人が舞う。映像と振り付けの相乗効果はオリエンタルテイストをより際立たせる。アウトロはフェードアウトするも場内は手拍子が響く。

11.アンドロイド&

紗幕も畳まれ、暗転中に衣装早替え。緑系のビビッドな衣装。花道上空に細長いスクリーンが4枚垂れ下がる。レーザーとプロジェクターでアンドロイドがスクリーンに描き出される。アイデアとしてはなかなか秀逸だと思うが、客席によっては死角だらけでステージ上のメンバーが隠れる、見えないメンバーを映すはずのモニターも隠れる、というちょっと不満の残る演出。

12.マワルカガミ

メンバーをミラーボール、ファンをそのミラーボールを照らす明かりに喩えた歌詞がなんとも泣ける楽曲。ミラーボールを模したLEDで発光する球状ののオブジェが3体、センターステージ上空に。


P.T.Aのコーナー

このコーナーが楽しみで何度もライブに行くファンもいれば、このコーナーが苦痛でライブに行かなくなるファンもいるらしい。確かにこのコーナー、間延び感は否めないのだが、メンバーの素の部分が露わになることも多く、個人的には毎回楽しみなコーナーだ。かぼちゃ、ススキ、銀杏、栗拾い。P.T.A.のコーナーで季節を感じるのも悪くないだろう(笑)


13.Party Maker

Perfumeのライブでは最高に盛り上がるアゲアゲ楽曲。この日はスタンド席で観覧。曲に合わせてスタンド全体が本当に、物理的に揺れた。関係者席でノリノリの「なっぴ」こと近藤春菜(ハリセンボン)も確認。その姿は芸人ではなくただのPerfumeファン。
ところでこれは余談も余談だが、裏拍なはずのイントロとアウトロ、観客の手拍子は表拍で押し切ろうとする風潮が強くて残念。「Party Makerのイントロ&アウトロは本来、裏拍だ」と強く言いたい。過去のライブDVDではステージ上の3人、明らかに裏拍だし。

14.エレクトロ・ワールド

2011年の東日本大震災以降、歌詞の内容に鑑みればしばらくはライブで披露されないであろう、と思っていた楽曲を、2012年のJPNツアーで、ここ、さいたまスーパーアリーナで聴けたときの感激は今でも忘れていない。あの日は「爆音姐さん」の異名をもつ音響スタッフ、佐々ふみ氏がスタジアムモードの会場を凶暴な重低音で攻めまくっていた。そして今日も、あの日の佐々氏のオペレーション同様に怒濤の重低音がアリーナモードの会場に轟いていた。10年前のライブを思い出させてくれた楽曲。しかし今日は声出し厳禁。間奏の声出しパートは拳を突き上げるだけ。声は出せなくても、気持ちを拳に込める。ファンはその術を知っている。細かい部分は覚えてない故書きようがないのだが、最初のMCでレクチャーされているのだ。

15.Puppy love

「上下上上」の腕の上げ下げが楽しい楽曲。2008年、自分がちょうどPerfumeのファンになった頃の楽曲。2008年のGAMEツアー映像を見ながら「上下上上楽しそう」って思ってた自分が今では「上下上上楽しいぞ」ってレポートを書いてるのだから隔世の感すらある。この日は観客のファンクラブ率は75%、練習なし一発本番でも上下上上が見事に揃う。

16.STAR TRAIN

I don't want anything
いつだって今が
Wow 常にスタートライン
Music is everything
遙かなユニバース
Wow 走れ Star Train

Perfume「STAR TRAIN」作詞:中田ヤスタカ

何故このツアーでこの曲を?と思ったりもしたのだが、よくよく考えてみればこの曲もFlow同様、ドラマ「ファイトソング」と関連があった。ドラマに登場するバンド「PARKS」のヒット曲「スタートライン」は、Perfumeのこの楽曲が元になっていたのだ。これまでPerfumeのことをあまり知らなかった層にもPerfumeの魅力が届くのでは、と当時大いに期待してた。「今でも初心は忘れてない」というPerfumeからのメッセージとも受け取れる。


MC2

あ~ちゃん
私たちが想像したPLASMAはデジタル寄りなのではなく、テクノロジーと人の温かみ、両方がある有機的なものでした。皆さんが想像したPLASMAと共感できればいいな、と思います。

かしゆか
アルバムはリリースしたら完成、ではなく、ライブでみんなで作り上げていくものだと、ツアーを通じて感じています。「再生」のイントロのあ~ちゃんの短い挨拶、私にも言ってくれてる気がして嬉しくなりました。やっぱりライブが大好きです。皆さんとPerfumeとの距離感はいろいろあると思いますが、私たちPerfumeはいつでも皆さんを待ってます。そして、寄り添う気持ちでずっと音楽を届けられたらなと思っています。

のっち
みんなにも私たちにもこれからどんな試練があるのかわかりませんが、ポジティブにいい方向に乗り越えていける方法がPLASMAなのだと思います。今日ライブを作ってくれた皆さん、明日からもきっと楽しく過ごせると思います。

再びあ~ちゃん
私たちはずっとPerfumeでいられたらなと思っています。Perfumeと一緒に生きていって頂けたら幸いです。変わりゆく新時代を、みんなで一緒に、楽しく、生きていたいです。

そして今日最後の曲の紹介。セットリストは「この曲を最後に」というところから決まった感があるとのこと。


あ~ちゃん
ワクワクする瞬間を知っている私たちとみんな。
未来はきっと明るいと信じています。


17.さよならプラスティックワールド

(前略)
幾千のレビューを見て体験しないより
たぶんもっとワクワクする瞬間があるでしょ
無尽蔵に次から次へと来るオススメ
迷い込んだ迷宮の森 感覚を信じて
(中略)
こわいほど最適化された中毒性
たぶんいつか考えることすら忘れちゃう
違うもっと別のことに気がつかなきゃと
ほらそう 想像して本来のハーモニー
(後略)

Perfume「さよならプラスティックワールド」 作詞:中田ヤスタカ

今年4月、NHK「みんなのうた」で初めて聴いたときの印象は「我らが神、中田ヤスタカ作詞にしては批評性が強すぎやしないか?」であった。しかし今、あ~ちゃんの曲振りと併せて、PLASMAツアー公演の最後の曲として聴くと「なるほどな」と思う部分もある。正直な話、先の未来が本当に明るいかどうかなんて誰にも分からない。でもヤスタカが詞にして、あ~ちゃんが熱く語るなら、未来を信じる方に賭けてもいいかな、と思える。

18.Plasma

Perfumeが「未来へと帰る(かしゆか談)」瞬間が来た。オープニングでステージに降り立ったゴンドラに乗り込み、観客の大きな拍手と共に見送られながら"See you at the next stage."とメッセージを残してステージの上へと消えていった。

3人はきっと明るい未来で待っていてくれてるはずだ。
近い未来、またライブで会えるだろう。
その日が来るまで生きるヒントは3人から確かに受け取った。

See you at the next stage!

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