日本の名字のしくみ

日本の名字について、仕事上で詳しくなってしまったので半分メモ書き。難しいようなそうでもないような。

①名字とは

 名字や氏、苗字など呼び方は複数ありますが、行政的には「氏」を用います。が、一般的なのは名字な気がするので本記事では名字も使います。
 日本において各個人が名乗るべき名字は、戸籍の筆頭者欄に記載された氏が正しいです。ただし、その名字にも種類があり、状況によっては記載の名字ではない氏を用いることがあります。名字の種類は大きく2種類あり、民法上の氏と呼称上の氏があります。

②民法上の氏とは

 生まれた時の名字である生来の氏、養子縁組により得る養氏、結婚により得る婚氏の3種類あります。
 縁氏と婚氏は、養子離縁や離婚をすることで、原則元の氏に戻る(生来の氏とは限らない)とされています。

③呼称上の氏とは

 実生活上、民法上の氏を名乗ることが不都合な場合、見た目だけ別の氏のようにする制度において名乗る氏のことです。
 民法上の氏は①に挙げた3種類しかないので、これ以外の氏を名乗る場合は全て呼称上の氏です。以下に簡単に例を挙げます。
○離婚後、婚姻中の氏を継続して名乗る場合
○養子離縁後、縁組中の氏を継続して名乗る場合
○外国人と婚姻し、その外国人配偶者の氏を名乗る場合
○実生活上、民法上の氏を名乗ることが不都合であり、氏を変更することを裁判所で認められた場合

④正しい氏はどれなの?

 上記の通り、呼称上の氏がある方は、本来の民法上の氏も定まっています。ただし、あまりこの違いを意識することはなく、また意識する必要もないです。また、呼称上の氏を取得した場合、戸籍にわかりやすくそれが書いてあるわけではなく、パッと見では呼称上の氏であることもその人の民法上の氏が何かもわかりません。そのため基本的には戸籍の筆頭者欄の氏が正しいという認識で問題ないです。

唯一、出会う可能性の高い事例としては、入籍届で子の氏を変更する場合に民法上違う氏でかつ父母婚姻中でないなら家庭裁判所の許可が必要というのがあります。割と多いですし、なんで?ってなることも多いです。興味ある方は詳しく書くのでご覧ください。(本記事はそれで終わりです。)

入籍届で裁判所の許可が必要なめっちゃよくある例
※民法上の氏→民氏、呼称上の氏→呼氏とします。
①夫の氏で婚姻(民氏→佐藤)※妻の婚姻前の民氏は鈴木
②出産(子の民氏→佐藤)
③この親権者を母として父母離婚
 (父と子の民氏→佐藤、母民氏→鈴木)
④母が婚姻中の氏を名乗る届出
 (母民氏→鈴木、呼氏→佐藤)
⑤子の氏を母の氏にする入籍届
 ↑家庭裁判所の許可が必要

 そもそもなぜこの届出をするかというと、夫の氏を名乗る婚姻をして離婚した場合、妻は婚姻前の戸籍に戻るか、新たに自分を筆頭者とする戸籍を作るかのどちらかになります。その際、親権者に関わらず子は夫の戸籍から移動しません。そのため、親権者であり、子と同居している母が婚姻中の氏を名乗る届出をして子どもと同じ名字になったとしても、子どもとは別の戸籍なのでいろいろ不便です。
 そこで母子で同じ戸籍になるようにするのが上記の例なのですが、最初に述べたように氏は戸籍ごとに設定されるものなので、基本、戸籍の移動は氏の変更を伴います。特にこの事例は子の民氏は佐藤、母の民氏は鈴木であるため、戸籍の移動により子の民氏は鈴木になります。そのため、氏の変更の許可を家庭裁判所に求めるのです。
 ちなみに書類上は
子の氏を「佐藤」から「佐藤」に変更する
と書くので余計ややこしいなと思います。

いろいろ書きましたが戸籍の動きについての知識がないとこの辺は分かりにくいですね…

長くなりましたが名字についてでした。
戻る氏のルールやらなんやら実はまだ氏についてのルールはあるのですが一旦締めます。
読んでいただきありがとうございました。

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