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【感想】朝日のような夕日をつれて2024

プロの芝居を観劇をするのは10年ぶりだ。そして前回観た芝居は「朝日のような夕日をつれて2014」だった。
大学で演劇部員だった時、僕は鴻上尚史や野田秀樹といった小劇場的なハイスピードでアクティブな芝居に憧れていた。
とは言えそんな演技ができるはずもなく、実際に僕がやっていたのは普通の大学の演劇部員がやるような会話劇だった。
当時はキャラメルボックスの芝居をよく見ていた。
2014を観たのは社会人になってからで、当時は時事ネタについていけず消化不良だったが、さすがに今回は時事ネタも多く理解できて前回よりは非常に楽しめたと思う。

時事ネタを中心としたエンタメ

この戯曲は3つの世界を行き来して、初見だとそれがわかりづらい。
が、ほとんどはコントだからあまり気にする必要はない。
ChatGPTやVRといったIT関係のものから、大坂なおみ、水原一平、マジック消しゴムといった芸能の話題、2.5次元や静かな演劇といった演劇ネタまで盛り込まれていた。
特に2.5次元ネタは、キャストの中にも2.5次元舞台に出演している人もあり、引き伸ばされていた。
「引きこもれ自分の部屋」は2014にもあったような気がする。

様々な舞台の仕掛け

本講演はほぼ素舞台で行われるものの、外反母趾の形をした顔出し写真パネルが冒頭で出てきたり、客席から舞台に向かってダーツを投げたり、天井から大量のボールが落ちてきたりと様々な仕掛けが仕込まれていた。
また、ドッジボールをするシーンでは直径2m以上はあろうかという巨大なボールが袖から出現し、客席に投げ込まれる。1階席前列のお客さんへのサービス精神が旺盛だった。

人生と暇

今回、この作品を見て人生というものについて考えさせられた。
芝居の大部分で繰り広げられるコントは登場人物の暇つぶしということか、と。
コロナウイルスが蔓延し始めた2020年、演劇は不要不急のものであると国には判断された。しかし人は必要なものだけでは生きていけない。必要なもの、すなわち食べて寝るだけの生活をするには人生は長すぎるし、1日だって長すぎる。
人には暇つぶしが必要だ。その一方、暇つぶしをするだけでは不満な人生が好転しないことも分かっている。何かを待ち続けるだけでは虚しさという不条理に襲われるだけである。
大体の芝居は1時間から2時間の上演時間がある。
その2時間の間、観客は尻が痛いのを我慢しながら暇つぶしをしている。
そして役者としては観客が2時間暇をつぶせるように全力で演技をしないといけない、そのような感想を抱いた。


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