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なぜ、10年以上にわたり誰も職人不足問題の解決を見出せなかったのか?

この度、リフォーム業界最大手メディアのリフォーム産業新聞社から取材を受けました。取材内容は現在私たちが推し進めている職人育成の新しい高校創設のスキームについてです。私が事業内容を説明すると、「確かに高橋さんが言われる通り職人不足問題の根本的解決策になるかもしれませんね」と大いに共感して頂いたと共に、「これまで10年以上に渡って職人不足問題は喫緊かつ重要な問題だと言われ続けていたにもかかわらずどうして誰も解決策を見出すことができなかったのでしょうか?」との疑問を投げかけられました。その問いに対する答えは非常にシンプルで、誰も本気になって職人不足の問題を解決しようと思わなかったから。に尽きます。付け足すなら誰も本気で減少を続ける職人の気持ちになって考えなかった事ぐらいでしょうか。
取材を受けたこれまでに無かった全く新しい職人育成の高校の詳細については以下のマガジンをご確認ください。

モノづくり企業の消滅

あと5年で建築業界の多くの事業所はいくら仕事を受注しても工事が着手できない、もしくは職人が集まらず工期通りに工事を終われない状態になります。建設・建築の会社は工事が終わって初めて売り上げが計上できる事業です。工事の遅延はそのまま売り上げを直撃し工期が倍に延びれば売り上げは半分になります。職人の減少が今のまま続けば職人不足により経営が立ち行かなくなる事業者が続出するのは火を見るよりも明らかです。モノづくりを生業にする事業者がその担い手を育成しないなど、そもそも言語道断なのですが、失われた20年の間、経営の効率化の大号令に乗っかって、必要な時だけ職人を雇用して現場が空く時はさっぱり手放す、職人を一切、内製化せずに外注職人による施工が規模の大小に拘らず建築事業者のスタンダードになってしまいました。建築事業者はモノづくりの会社だと思われているかも知れませんが、その実は販売会社、もしくはブローカーへと化してしまったのです。先行投資を行ってど素人の若者を雇い入れ、職人に育成するなんてバカがやることだとばかりに、受注に合わせて職人をかき集める事業所ばかりになってしまいました。

出典:国土交通省 

職人不足が加速した3つの理由

上に示した国交相の現場実務者の就労人口推移のグラフの通り、このまま減少傾向に歯止めが掛からなければ2030年には職人は絶滅してしまいます。大工としてある程度(プレカットの新築の施工程度)使える職人に育てるまでに5年程度かかることを考えれば、今すぐに対策を取らなければ手遅れになる状態です。既に現在も職人不足は顕在化しており、流石に建築業界全体の共通認識になってきました。なぜ、ここまでひどい状態になってしまったのか?その理由は大きく3つあり、それを同時に解決出来なければ職人不足問題は一切改善することはありません。3つの課題に同時に取り組む事の困難さが、これまでの10年以上、誰も解決策を見出せなかった原因になっているのです。

リフォーム産業フェアでの出展

職人が若者に不人気問題
まず1つ目は職人として現場で働きたい若者がいない。子供たちに将来なりたい職業を訊くとYouTuberが一番人気になる時代に肉体労働で汗を流して働くというのはいかにも時代にそぐいません。これはIT化が急激に進んだ隣の中国でも問題になっていて、若者の職人離れに頭を悩ませている様です。ただ、これは単なる時代の流れだけではなく、例えばドイツや北欧、アメリカ等でマイスターとして活躍する職人は一般の作業員の5倍〜10倍もの所得を得られる高い地位を確保しており、一定の人気を誇っているとの事を考えれば職人の教育やキャリアプランの構築がなされて来なかった事に問題の本質はあります。

職人として就職する先がない問題
2つ目は若者が職人を目指そうとした時に就職する先がない事実です。職人不足に危機感を感じている筈なのに正規雇用の社員として迎え入れる事業所は皆無で、せいぜい個人事業主の一人親方に弟子入りするくらいなのですが、就労規定も社会保険も無い日雇い労働者の様な扱いです。それも職人の細かな分業化が進んでしまった今では職人は働いた日数分の日当程度しか収入は無く、弟子を育てる経済的な体力はありません。衝撃的な事実ですが構造的に職人は絶対に増え様が無いのです。職人を増やすには先ず受け入れ先として名乗りを上げる事業者を数多く作る事が必要ですが、外注の職人を必要な時だけ雇用することに比べて、職人の内製化、育成には一人あたり1000万円以上の先行投資が必要です。また、社会保険や厚生年金、有給休暇の付加などの福利厚生にも莫大な費用がかかります。今まで通りの収益構造ではこの費用を拠出することが難しく、ビジネモデルやマーケティングの見直しを同時に行わなければ簡単に職人育成に踏み込むことはできません。

育成ができない問題
3つ目の問題はよしんば若者を職人として受け入れたところで教育するノウハウやスキームを持っている会社が皆無であるということです。上述のとおり、職人の正規雇用、育成には、すっかり一般的になっている外注の職人を道具のように使い捨てするのに比べ、企業は大きな費用負担を求められます。正社員として雇用した職人が外注の職人と同じ役割、同じ働き方、同じ生産性では同業他社に比して競争力を失ってしまいます。正社員職人ならではの付加価値を生み出せるように教育を行い、これまでと違う新しい職人の働き方にシフトさせ、現場作業だけでないキャリアプランを構築する必要があるのですが、この方法論を理解、実践している事業所は皆無です。その結果、職人の給与を低く設定しなければならなくなり、結果、せっかく社員職人として働いていても離職してしまいます。

若手大工育成塾

答えは建築業界に無かった

以上の課題を同時に克服しなければ絶対に職人問題は解決しないのですが、これは制度(キャリアプラン・教育)を構築し、収益構造(マネタイズ・マーケティング)を刷新し、価値創造(マネジメント)を改革しなければ実現することはありません。それらはモノづくりに特化した建築会社が得意としている分野とはかけ離れていて、建築業界内の狭い世界でいくら悩み、考えたところで答えは見出せることはありません。もっと幅白い見地での学びや情報収集を行ってきた者にしか解決の糸口さえも見えることはないのです。10年以上前から職人不足が喫緊で重要な問題だと建築業界内で言われ続けてきたにもかかわらず、的外れな施策ばかりで一向に効果を発揮しなかった、もしくは思考停止に陥って単に問題を先送りし続けてきた背景にはビジネスモデルを考え直すべきとの小手先の対処ではなく、事業モデル全体の根本的解決への思考が必要です。

若手大工育成塾in京都

3つの課題を同時に解決するスキーム

建築業界の有志と共にプロジェクトを進めている新しい職人高校の取り組みでは、職人育成のカリキュラムの提供だけではなく、受け入れ事業所の人事制度やキャリアプラン等のガバナンスの整備、また未来創造企業認証を取得することで、共感型ビジネスへのシフトを促すことを同時に推し進めています。当然、それは事業所の収益構造の見直しにもつながる取り組みです。3つの問題に対して同時にアプローチするスキームにしているからこそ、これまで誰も見出せなかった職人不足の唯一無二の根本的解決のスキームだと自負している次第です。
この取り組みに今すぐに取り組めば、5年後にはある程度の戦力になる職人を内製化することができる様になり、継続的に職人の雇用、育成を進めてモノづくりの本質であるモノづくりの担い手を育てられる事業所へと進化・変容することができます。毎週月曜日にオンラインで事業説明会を行っておりますので、少しでも興味がある方は以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。

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