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志と未来創造の深い関係とそのリアル

事業の目的は何か?と問われたら、私は「自社の存在意義を形にして持続継続できるように整えること。」だと答えます。存在意義とは、私が代表を務める株式会社四方継の理念としてホームページのトップに掲げてある「四方良しの社会の実現」です。自分たちだけではなく、誰もがこの世をIkigaiの持てる世界だと思える、そんな理想の実現は、どうやら私の代では叶いそうにありませんが、何とか次世代にその想いを繋いで、理想を追い続けてもらいたいと考えています。
少し切り口を変えて企業としてではなく、個人として事業の目的を問われたら「志の具現」だと迷わずに答えます。ちなみに、私の創業時の志は「職人の地位向上」でしたが、20年以上延々と学びを重ねる中で視野と視座が徐々に変化して、現在は「誰もがIkigaiを持って生きられる社会の実現」に変わりました。

事業はそもそも人助け

志の具現は経営者なら誰しもが目指すところ。だと思いきや、実は明確に志を掲げて事業に取り組んでいる人はそんなに多くないのだと様々な経営者と会う中で気が付きました。私はたまたま名前を剛い志とつけられたので、子供の頃からずっと志ってなんだろう?との問いを持たざるを得ませんでしたが、一般的にはそんなことを考える子供が多い訳ありません。
ただ、経営者として長年、経営にまつわる学びを繰り返す中で志の重要性を何度も再確認させられて、その度に親に感謝の念が浮かびました。
そもそも、事業なるものは人が抱える問題や課題、困りごと、苦しみ、悲しみ等のマイナスを取り除き、嬉しい、楽しい、心地よい、美しい等のプラスに転換することで、価値を生み、それが経済的な利益に繋がるものです。自分だけが儲ければ良いと考えた時点で、その原理原則から外れて市場から見放され、破綻への道を歩むと考えれば、世のため、人のためという意義を含む志が経営には何より重要だとなります。

人的資産は金では買えない

また、人は一人ではあまりにも無力です。人類が発展し、地球を制覇して支配者となったのは役割という発見とそれを生み出す共同体の構築が出来たからだと言われます。人と人を繋ぐのは金の切れ目はなんとかと言われるように金銭ではなく、やはり同じ方向性を感じる想いです。そう考えれば想いを言語化し、志を明らかにすることで協力者や協働してくれる人が現れたり、金銭的な価値観と関係なく応援してもらえるようになったりします。人間社会を生きる上では多少のお金を持っているより、多くの理解ある人と繋がり、共に進む方がずっと大きな資産になるのは明らかです。
今の日本は欧米式の強欲資本主義にどっぷり浸かった社会になってしまっておりますが、冷静になって考えると本当に大切なのはお金ではなく人と人が繋がり応援し合う、その根源となる信用や信頼といった見えない資産です。吉田松陰先生が残した言葉で有名な「志を立ててもって万事の源となす」は現代でもそのまま通用する重要な概念だとつくづく思います。

[図表] バリューダイナミクス・フレームワーク詳細

志を喪失した国の行末

とはいえ、忙しい日常を過ごす中で、自分の志は〜と声を張って人に話す機会はそうある訳ではなく、ましてや自分の志は何か?と自問自答する機会もまずありません。私は実はこれが日本の経済を失速させ、閉塞感に包まれさせた原因ではないか?と考えています。日本が世界に開国した後、明治維新の教育では福沢諭吉先生の「学問ノススメ」が教科書として取り上げられ、そこには額に汗して働いて家族を立派に養うくらいで満足するな、人間に生まれて来た以上、目的を達せよ。と厳しい口調で書かれています。その目的とは、先祖から受け継いだ文化や文明をより良いものにして次の世代に引き継ぐのだとも。要は、言葉を変えれば全ての国民は志を立てろと諭吉先生は言われています。そのために問いを学ぶ学問しろと。未だに、日本で読まれた本の中で最も多くの人に読まれたと言われる「学問ノススメ」を明治の殆どの人たちが読んで、それぞれ自分だけが良ければいいのではないと熱い志を持ったからこそ、現在の日本の発展があったのではないかと私は考えています。

志の具現の入り口

今ではそんなことを学校でも教えなくなり、社会にでたら目先の金を稼ぐことにあくせくするばかり、それでは一向に世の中は良くならないし、次の世代に渡す世界はもっと悪くなってしまいます。ただ、こんな当たり前のことに気がついて、大人になってから改めて「なんのために働くのか?」「なんのために事業を行うのか?」との根源的な問いに向き合う人たちも最近は急激に増えてきたと感じています。その一つが一般社団法人経営実践研究会なる経営者のコミュニティーです。
その会では毎週、オンライン上で3人の経営者が自らが行なっている事業と、なぜそれを行うのか、との志をプレゼンテーションします。全国から100名以上の、CSVモデル(=社会課題解決型モデル)を標榜する経営者が集い、その発表を聴いてフィードバックを行ったり、協働しようとの提案を持ちかけたり、同じ想いを持つ人と橋渡しする場になっています。まさに、志が事業の源となる。の体現を目の当たりにすることができます。

志のレイヤーとエンパシー

先日、そのオンラインmtgでは、志を立てて社会を変えようと実践してきた人、志を立てて起業して社会課題解決と持続可能性の両立を見出した人、自分の志を模索しながらとにかく行動に移してみる人と3通りのレイヤーに分かれた方々が登壇されました。その中の一人、子供の自殺をなくしたい、どんな子供でも必ず活躍出来る才能があり、その場を大人が作らねばならないとの志を掲げ、広く伝播したいと熱心に活動されている岡田さえさんには、私は共感どころではなく、全く同じ価値観、社会に対して同じ不条理や蹉跌を感じているのだと魂が共振、共鳴してお互いの事業を相互補完しながら一緒に誰もが自分の価値を認められる社会に変容さすのだと心に刻みこみました。現在、岡田さえさんの薦めで、私は保護司の登録を行っています。
その他の二人の登壇者についても、目指す先が同じなのを強く感じると共に、実業の事業分野が近い事もあり、今後、コラボレーションする機会が必ず出てくるのを確信しました。やっぱり、志を立てるのは万事の源になるのです。

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志の教育を行う職人育成の高校を運営しています。

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