見出し画像

志を固める草莽崛起の旅@萩

草莽崛起とは吉田松陰先生が佐久間象山の甥、北山安世に宛てた書簡の中に書いてある「今の幕府も諸侯も最早酔人なれば扶持の術し。草莽崛起の人を望む外ほか頼みなし。」と当時の江戸幕府に見切りをつけて在野の志ある者が立ち上がり世を変えるしかない。と激しい言葉で憤激の念をぶちまけ、政権を転覆させるべく行動を喚起した文にある言葉です。
私が主宰している勉強会「継塾」では毎回、冒頭に松陰先生の「志を以って万事の源となす」の言葉を引用しており、参加メンバーにいつも志こそが事業の根幹だと言い続けています。先日第100回目を迎えたそんな継塾の懇親会の席でひょんな流れから香園さんが口火を切って松陰神社への参拝と松陰先生の墓参りに行こうとの話になりました。この度、有志のメンバーと年末押し迫った晦日ではありますが、何とかスケジュールを調整して神戸から萩まで弾丸ツアーで行ってきました。

未曾有の国難

現在、アメリカを始めとする諸外国ではまたもやコロナによる新規感染者数が爆発的に増えており、1日あたりの新規感染者数の記録が塗り替えられているとの事、なかなか収束の兆しが見えない新型コロナによるパンデミックは多方面に深刻な影響を及ぼし、非常に先行きが不透明、不安定な状況を呈しています。また数年前から多くの識者が警鐘を鳴らしている行き過ぎた欧米型グローバル資本主義は世界中で益々格差と断絶を広げて多くの深刻な社会課題を生み出しており、気候変動による自然災害の頻発も相まって、スタグフレーション(経済活動の停滞(不況)と物価の持続的な上昇が併存する状態)が起こり始めて物流も経済も混乱を極めています。底が見えないほどの複雑さ、不透明感を深めているこの混迷の世の中を私たちは生き抜かねばならず、それは国や自治体に頼ったところで何ら解決の道筋が見えることはありません。まるで江戸時代末期から明治維新、結局戦争に敗れてアメリカの植民地になってしまった昭和初期にかけて次々と日本に襲いかかってきた国難さながらの状況だと言っても過言ではないと思っています。まさに今、私たち草莽が崛起しなければならない時だと思うのです。

志を見つめ直す機会

様々なメディアや書籍などで情報を集め世の中の動きを見ていると、このVUCA(不安定、不透明、複雑、曖昧)な混迷の世の中を何とか生き抜くだけではなく、少しでもより良い世の中になるように、地域の小さな事業者である私たちも今までの延長線上を踏襲するだけではなく、新しい時代に適応した新たな行動を起こすべき時なのは間違いないと思ってしまいます。新しい行動、コトを起こすに当たって何よりも大事なのは目的であり、まず初めに向かうべき方向性を定める必要があります。それは吉田松陰先生が言った通り、やはり志が全ての源になるということなのだと思うのです。今回、コロナの蔓延から3年目の新年を迎える直前のタイミングで改めて「志はなにか?」と自問自答する機会として仲間と共に遠路はるばる萩の松陰神社に足を運び、松陰先生の墓前で線香をあげて手を合わすことが出来たのは、とても意味のある貴重な機会になりました。

オレの志

大工だった私の創業の志は、自分自身の非常に不安定で先行きが見えず、刹那的な思考に陥っていた情けなく厳しい原体験を元に掲げた「職人の社会的地位の向上」です。私のように学歴社会からドロップアウトした者でも学校での勉強とは違う才能を生かすことが出来る、誇りとやりがいを持って、安心して働ける世の中にしたいと考えて株式会社四方継では職人を正規雇用、熱心に教育し、職人の力をマーケティングに生かして無広告、無宣伝で必要な売り上げ利益を作り出せられる事業所を作ってきました。また、自社で20年間実践してきた職人育成と組織づくり、マーケティングを一体にした理論と実証した経験則を公開して、一般社団法人職人起業塾で全国の職人会社、施工会社への支援事業を行っています。それらの私が行ってきた事業は全て創業の志に沿った行動です。

軸とスケール

今年、私は新たに経営実践研究会なる団体に入会し、本業による社会課題解決を実現するとの高い志を掲げた経営者達にまみれて改めて勉強をさせてもらっています。そこに集う経営者達は明確な志を掲げ、その実現に向けて事業計画を立て、実践されています。そんな多くの方々の熱い気持ちに触れ、大いに啓発されて自分自身の志について見つめ直すことが多くありました。今回の萩行はここ最近で感じたり、思いついたことをまとめる意味もあり、新年を迎えるに当たってもう一歩踏み込んだ志を明らかにしようと「オレは本当は何を為したいのか?」と自問自答繰り返す旅でもありました。松陰神社に再現された松下村塾、松陰先生の墓前を再び訪問して見えてきたのは、自分軸ではなく社会軸での目線、自己実現ではなく国難に対する憂いに至誠を持って向き合った松陰先生の思考のスケールの大きさです。改めて私が掲げてきた志の小ささに気付かされたと共に志を叶えるにはスケール感のある計画が必要であるということに気付かされました。

誇りとチャンス

私が本当に実現したいのは、誰もが誇りを持って生きられるチャンスを与えられる世界です。私は子供の頃に学歴社会からドロップアウトしてしまい、17歳と非常に若くして社会に飛び出ましたが、生きる糧を得る場所(=就職する先)はあまり選択肢がありませんでした。まず初めに学生時代にアルバイトしていた流れで就職した飲食業(ラーメン店の店長)からスタートしましたが、あまりの低賃金、長時間労働、やりがいの無さに嫌気が差してすぐに退職、その後、全国を放浪しながら様々な職を転々としましたが、結局、体をすり減らして働く運送業、体力勝負で何の保証もない建設業しかまともに稼げる様になる選択肢はありませんでした。今の社会では一度レールを踏み外すと、将来に不安を抱えずに安心して暮らすことさえ困難なのが現実です。

見出した才能は体力と気力

どん底の暮らしを味わい、生きていることの意味も価値も見出せ無かった私が、再び誇りを取り戻し、未来に希望を持って生きられるようになったきっかけは建築業界に拾われて職人として技術と経験を身につけたお陰です。学歴社会では何の才能も価値もなかった私ですが、厳しい現場作業をこなせる体力と気力を備えていること自体が才能であり、自分にも大きな価値を生み出せると気づいたのでした。そして建設業、建築の職人は地域の、ひいては国の生活インフラを守る非常に重要な役割を担っており、500万人が働く国の基幹産業でもあります。その中でも自らの手でモノを生み出す職人は本来、中心的な役割を担う重要な存在ですが、この20年間、全く若者から支持さなくなり加速度的に高齢化が進んでいてこのままの状態が続くとあと10年で業界全体が壊滅的なダメージを受ける程、圧倒的な職人不足に陥りかけています。これは建築業界に止まらない大きな社会課題です。

選択肢がある世界

私はこれまでの自分自身の経験を活かして、職人という生き方を誇りを持てる職業にする事で学歴社会からはみ出す若者達だけではなく、多様な選択が出来る社会になるように機能させたいと考えています。学業の成績が年収に直結するようなおかしな世界を変えて、誰もが経験を積めば技能を磨けるモノづくり事業にセーフティーネット的な役割を持たせながら、全ての若者が未来に希望とやりがいを持って、活き活きと生きられる選択肢を提供出来る様にしたいと思っています。そして、その実現の為には職人を守り育てる機関を全国津々浦々に作らねばなりません。私が一般社団法人職人起業塾でこれまで行って来た工務店を中心にした事業所向けに研修事業や人事制度改革のサポート、顧問としてのアドバイスを行うだけではなく、広く同じ志を持つ経営者を募り、情報共有と相互扶助が叶う組織づくりに取り組む必要があります。今一度、志を叶えるために必要なスケールをよく確認した上でコンテンツの整理、コミュニケーションの方法論を組み立て直してみようと思います。来年は一般社団法人職人起業塾のリスタートの年と定め、新しい枠組みを作りたいと考えています。高い志を掲げる仲間を集め、私も「草莽崛起の人」の一人になります。

______________

設計士と大工だけの職人会社はおかげさまで21期目を迎えます。

職人の採用・育成・制度設計のワンストップサービスに進みます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?