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LTVと共感資本主義の深い関係

現在、実質、次の日本のリーダーとなる政権政党のトップを決定する自民党総裁選挙が行われています。立候補した4名の先生方の演説を聞いてみると、新自由主義からの脱却、新しい資本主義へと移行する取り組みを推し進めます。との言葉が散見しました。新しい資本主義とはどのようなもので、具体的にどのように進めていくかと言う核心の部分については各候補とも詳しく言及されずにぼやけておりましたが、金融資本主義と呼ばれる実体経済と乖離した今のシステムに行き詰まりを感じていると言うのはどうやら共通した認識のようです。

持続可能な循環型モデルの共感資本主義へ

日本の次期総理大臣候補の先生方が新しい資本主義の形をどのように作っていくと思われているのかは定かではありませんが、広いジャンルから世界のリーダーが集まるダボス会議で話し合われたグレートリセットの考え方が一般的にも広まってきて、カネを価値の中心にした強欲で弱肉強食、ゼロサムゲームの金融資本主義のシステムを逆のパラダイムに転換させて、格差を是正して全ての人に幸せをもたらし、環境に配慮した持続可能な循環型モデルを構築する共感資本主義へと向かうべきだと言われます。その考え方を具現化する方法論も実際のビジネスのシーンで行われ始めていますし、ESG投資やソーシャルバンクなど、良き意図に共感して資本が集まる仕組みもヨーロッパを中心にして世界中で広がりを見せ始めています。以前にもこのnoteに書きましたが、共感が経営資源として認められつつあると感じています。

共感資本主義社会への入り口はLTV

共感資本主義へのシフトを進めるには、日本の全事業所の97%を占めると言われる中小企業が地域の人々から共感を集める循環型のビジネスモデル構築に踏み出す必要があると私は思っています。その入り口はLTV(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)を中心にした売り上げ、利益を上げる仕組みづくりだと思っていて、この価値観を深く理解できないままではいつまでたっても成熟した社会には移行できないのではないかと思っています。LTVの概念とその実践は私が毎月主催している自立循環型ビジネスモデル構築のための無料勉強会「継塾」でも中心的なテーマの1つとして毎年取り上げており、今月もそれについて深掘りし、ブラッシュアップする機会を持ちました。その概要と要点について改めて書いておきたいと思います。

LTVとは独自市場の構築

そもそも、持続可能な自立循環型ビジネスモデルというのは、一切の売り込みを排しても、持続的に売り上げ、利益が上がる状態(自社独自の市場)を整えることを指します。何年も先まで顧客の予定購買を積み上げることが出来て、共感を得た顧客やステークホルダーから定期的に新規顧客を紹介されるようになれば、売り込みも宣伝広告もプロモーションも必要なくなります。現在、建築業でも売り上げの2%〜3%を新規顧客獲得のための宣伝広告費に費やすのが一般的になっておりますが、そんな費用をかける必要がなくなり、更なるサービスの充実で顧客満足度の向上や、働き方改革を推し進めて社員満足度を高めることが出来るようになります。難しそうに聞こえる持続可能な循環型モデルの構築とは、外部環境に左右されない独自市場の創造であり、それは継続して取引してくれる生涯顧客の創造と、事業成長分、もしくは顧客の自然減を賄う程度の新規顧客を獲得することに他なりません。

損得勘定ではなく、共感

未来の売り上げのベースとなる生涯顧客創造こそ、顧客との信頼関係構築であり、LTVの集積に他なりません。一度取引した顧客にずっと購買し続けてもらうには、顧客満足を叶えるバリューの提供はもちろんですが、それだけでは薄く、単なるメリットとデメリットの比較検討だけではない共感を得ることが必要になります。逆に、圧倒的な共感を得ることができれば未来の売り上げ、利益を心配しなくても良くなるということでもあります。
その共感が必要だという部分は新規顧客の創造でも同じで、損得勘定に囚われた金銭的なメリットだけでは無く、同業他社が行っていない社会課題解決を行うこと(イノベーション)で、信頼と共感を集め、新規顧客が生涯顧客へと変わっていくことになり、LTVを引き受けることが出来るようになります。ちなみに、先日、新築工事をご依頼頂いたお客様に物件の引き渡しに行きました。「あなた達に出会えて本当に良かった」と言ってもらい、私からはこれからが本当にお付き合いの始まりです。と末永い関係性の継続をお願いすると共に、今後一切の住宅にまつわる困りごとを引き受けますとコミットメントしてきました。LTVを引き受けるのはごく自然なことだと思うのです。

顧客接点の強化と関係の継続

売り上げの方程式とは(当該期間内の)顧客数×単価×購買頻度であり、これは全ての業種業態にかかわらず同じだと言われてきました。企業を存続させるのに不可欠な「売り上げ」を上げるには3つのファクターの組み合わせであり、単に新規顧客を集めることではなく、全体のデザインです。なので、目先の利益だけに囚われることなく、単価設定には関係継続してLTVを引き受ける、未来への投資を包括させる必要があります。事業所の売り上げを安定させるLTVこそ未来の売り上げの基盤であり、共感資本主義への入り口として企業はとにかく目の前の顧客に如何に満足してもらえるか、感動してもらえるかを考えるべきです。私たちはそれを最長で最大の顧客接点である現場で実践すべく、一般社団法人職人起業塾で全国の若い現場実務者を集めてLTVの重要性を繰り返し解き続けています。

利益が必要なくなる

江戸時代から続いている京都の街の漬物屋が創業100年でもまだひよっこだと言われる例を見れば明らかなように、一定量必要なLTVを引き受けることが出来れば、際限のない成長拡大とは無縁ですが、事業は何百年と継続することができます。極端に考えれば、LTVの蓄積が出来れば、企業は毎年、利益を出す必要がなくなり、収益は全て分配しても良くなります。企業にとって税金を払うことも大事ですが、地域に根差す中小企業にとっては、それよりも目の前の顧客や従業員、地域の人々に幸せになってもらうことの方が優先順位は高くあるべきだと思うし、全国の事業者がそのような利益を還元して社会課題を解決する経営にシフトすれば、税金という名の富の再分配の役割は大きく減少すると思うのです。

まとめと問いかけ

上述の売り上げの方程式からLTVを再定義するならば、その式は

(共感)顧客数×適正単価×予定購買×取引継続期間

となります。この方程式を成り立たせるようにするには、売り上げを短期間ではなく中長期の時間軸でデザインすること、顧客の持つ「選択の自由」を超える取引継続の仕組みを作りあげること、関係継続のための顧客との接点回数強化と購買頻度を高めるサービス開発で関係構築を図ること、事業を行う意図を明確に示し共感を得られるタイミングを作ることが必要になり、それは誰からも支持される「良き意図」を事業所が持ち、従業員をはじめとする全てのステークホルダーからの共感があってこそです。全国津々浦々に存在する中小企業が、金銭的なメリットだけではなく、事業所の存在意義を認められ、可処分所得の余力を使ってもらえるようなサービスにシフトすることから共感型資本主義へのシフトは始まると思うのです。

私たちが繰り返し考え続けるべきは、「顧客に生涯に渡って価値を感じてもらうサービスとは何か?」であり、「誰に共感されたいのか?」「何を共感されたいのか?」「どのように共感されたいのか?」「提供する価値は何か?」との問いを螺旋状にブラッシュアップし続けることです。継続的に喜ばれる商品、サービスを提供し続けられることが出来れば、共感の数だけLTVは手に入るのです。そして、あくまでLTVとは顧客が感じるものであり、売り上げの指標ではありません。パラダイムが逆転してしまった今の時代、顧客の立場に立って、商品、サービスの本質を整理して見直してみることが必要だと思うのです。新しい世界に一歩を踏み出そうと思われているならば以下の問いに答えて見られてはいかがでしょうか。

Q:あなたが、一生涯顧客に提供できる価値は何ですか?

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持続可能な循環型ビジネスモデルを担う実務者の研修を行っています!

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