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影響力の本質 #竜とそばかすの姫

7月の4連休を終えると子供達が夏休みに入ることもあってか、一気に夏真っ盛りな感じがします。毎年私はあまり大型連休とは関係なく過ごしておりますが、今回は久しぶりに映画館に足を運び、今話題沸騰中の竜とそばかすの姫を鑑賞して束の間の休日気分を味わいました。とてもいい映画だったので、ここにも感想を書き残しておきたいと思います。(※一部ネタバレもありますのでまだ観られてない方はご注意ください。)

世界を変えた少女の正体

この物語の主人公は高知県の片田舎に住む、人前でカラオケを歌うことさえ出来ない内気な女子高生です。その彼女が身体認証のデバイスを身につけてスマフォのアプリからバーチャル世界に飛び込んで、そこで歌姫として世界を変えると言われるほどの影響力を発現するようになります。舞台背景は同じ細田守監督の『サマーウォーズ』とほぼ同じ設定ですが、今回の作品はどこにでもいるような名もなき女の子が世界を変える力を持っている、世界を変える可能性を秘めているという、コロナ以後の逆転の世界へのパラダイム転換に対応したタレンティズ(才能主義)がそのメタファーとして描かれているように感じました。ストーリーは美女と野獣をモチーフにしたシンプルで子供にもわかりやすく楽しめるのはもちろんのこと、音楽も圧巻のクオリティーでオープニングから大人もぐいぐい細田監督の世界に引き込まれます。しかし、単なるバーチャル世界を描いたファンタジー映画というだけではなく、多くの示唆を与えられました。

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世界を変えたのは正義感と優しさとスキル

世界を変える何の変哲もない女子高生である主人公のすずは幼い頃に母親を亡くします。大雨による増水で川州に取り残された子供を助けに川に入り子供を助けますが、力尽きて母親自身は濁流に飲み込まれる悲しい事故になり、すずは見ず知らずの子供を助けるために自分を残して逝ってしまった母親に対して憤りを抱きながらも命の危険を顧みず人に尽くす正義感の強さを引き継いだような優しい子供に育ちます。その事故を機に自分の殻に閉じこもって父親と会話することも拒むようになり、人前でカラオケを歌うことも出来ないトラウマを抱えるようになりますが、母親との楽しかった想い出を糧に、母親から教わった音楽を続けて一人ひっそりとオリジナルの曲を作ったりと音楽的な能力を培います。ネット上のバーチャル世界に飛び込んで、もう一人の自分を生きていいのだと誘われた時、封印を解くかのように心の中の感情を歌に込めて表現し、多くの人の心を強く揺さぶり、瞬く間にYOUというバーチャル社会のスターダムに上り詰めることになります。


才能とは、良き意図×習慣×情熱

すずが世界を変えたのは彼女が持つ才能の開花と発現です。その源は母親から引き継いだ人を思いやる優しい気持ちと深く切ない感情の発出であり、それが小さな頃から長年ひっそり、しかしコツコツと制作活動を続け、蓄えてきた音楽の能力にかけ合わさった時、人の感情を強く揺さぶり、大きな感動を与えたのです。このように考えると、才能とは誰しもが持っている良き心と人への思いやり、そして自分が好きでやりたいことを熱心に続けてスキルを磨くことで開花させることが出来て、それが表面に現れた時に人の心を動かすものなのだと気付かされます。
私が住まう建築の世界でも、目の前の人の幸せを願い、一生懸命にモノづくりに励む職人は施主から圧倒的な信頼を得て、家に関する用事がある度にずっと声がかかるようになります。これは、程度の差はあれ、主人公のすずと同じ才能の発現です。誰しもが、かけがえのない存在であり、類まれな才能を持っていて、世界を変える影響力を持っているのです。この映画を観て、これからの不安定、不透明、複雑、曖昧な世界を良きものに変えていくには、誰もが持つ才能を遺憾無く発揮できる環境を整えることが最も大切で、大きな効果があるのだと改めて感じました。竜とそばかすの姫、とてもいい映画でした。強くお勧めします。

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才能を花開かせるきっかけを提供しています。





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