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もったいないの一歩先、もったいいね!の世界

日本の建築業界で持続可能な技術、循環型住宅の概念が広まったのは、2007年、それまでの人に対する負荷を全く考えず、安かろう、悪かろうの住宅を大量に作ってきたのを改めて、環境負荷の少ない建築を目指そうとするムーブメントが起こりました。その当時、大工から起業して元請け工務店になって、新築事業に本格的に取り組み始めていた。私は、これから目指すべき方向性は、これだと感じて、持続可能な自立循環型住宅とそれを担う循環型のビジネスモデルを標榜し始めました。

持続可能な世界を次世代に

太陽光や風、雨水の利用など、自然の力を最大限に生かした建物を作るとともに、地元で育った材木を使って、森林の循環をも視野に入れる。また、石油から生成された新建材ではなく、燃やせば土に返る自然素材をできるだけ使って産業廃棄物の発生を抑える努力を15年以上にわたって続けています。現在では、木材の廃材を薪にしてキャンプに行く方に無料配布したり、DIYの材料として寸法を加工してお渡ししたり、自社でもしょっちゅう行うBBQの炭代わりに燃やして熱源にしたりもしています。
建築事業にまつわることだけではなく、とにかく次世代に豊かな環境を残す、循環する地域、世界を形作るのが私たちの大きなミッションです。私のライフワークである職人の育成も、いわばその価値観や世界観から派生している取り組みの一環です。

日本に根付くもったいない思想

そんな環境保護の考え方を、できるだけ生活の一部にわかりやすく取り込む概念というか、合言葉として「もったいない。」と言う言葉があります。昔から日本人はものを大切にし、資源を有効活用する姿勢を持っており、もったいない精神を発揮してきたと言われます。八万の神が生き物だけでなく、あらゆるものに宿る多神教の極みとも言える宗教観を持つ日本人だからこそ、誰にでもごく当たり前に持っている思想だと私は思っています。
また、モノだけではなく、人が持つ才能を発揮できていない状態を表す時も、もったいないと言う言葉をよく使います。それは、せっかく持っている資源を有効に活用することなく、捨て去ってしまっていると言う意味合いを含んだ言い回しであり、残念だ。と言った感情も含まれています。できていない、ダメだ、などの否定の言葉に比べて、ずいぶん優しい言い回しではありますが、一応、ネガティブワードの分類に入っている事は否めません。

人がいる、人に会う、人に聴く

少し話は変わって、先日、私が世話人として熱心に活動に参画している経営実践研究会の枚方メンバーとの食事会に呼ばれて参加してきました。この研究会には現在、志ある経営者が1000人以上集まっており、全国津々浦々、行く先々で非常に面白く、素晴らしいメンバーと出会うことができます。
今回も神戸から少し離れた枚方、交野市を中心に活動するメンバーと一緒に、ゆっくり時間をとって話す機会を持てたことで、今まで顔と名前しか知らなかったメンバーさんの熱い想いや志に触れることができました。
足を運んで人と会い、人の言葉に耳を傾け人と語る。その大切さを改めて痛感しました。

もったいないからもったいいね!

その枚方メンバーの1人、中田良作さんの長めの自己紹介を伺っている中で、もったいないの精神をもう一歩先に進めて、前向きにポジティブな考え方として定着させたいとの言葉がありました。リサイクル業をなりわいとしている彼は最近は空き家の活用までその領域を広げていると言われており、あらゆる資源の再利用について、試行錯誤をする中で、これはいいね!と思えるようなリユースやリサイクルを思いついたり、実践したりして、その大切さを深く感じて「もったいない」という言葉を「もったいいね!」とのポジティブワードに書き換えて広めるのをライフワークにしたいとの志を語られました。もったいない。という言葉が残念、というニュアンスを含んでいるのに何となく気づいていた私は大いに共感した次第です。

世界に広がった『MOTTAINAI』運動

ちなみに、もったいないという言葉を世界に広めたのは環境分野で初めてノーベル平和賞を受賞したケニア出身の環境保護活動家であるワンガリ・マータイ氏。
2004年に京都議定書関連行事のため、毎日新聞社の招聘により日本を訪問。その時、同社編集局長とのインタビューで「もったいない」という言葉を知って「もったいない」は"wasteful"と同じ意味であって、両方の言葉は環境問題を考えるに重要な概念と話したといいます。
日本で触れた「もったいない」という概念に感銘を受けた後、この意思と概念を世界中に広めるため他の言語で該当するような言葉を探したが、「もったいない」のように、自然や物に対する敬意、愛などの意思(リスペクト)が込められているような言葉が他に見つからず、消費削減(リデュース)、使用(リユース)、再生利用(リサイクル)、尊敬(リスペクト)の概念を一語で表せる言葉として『MOTTAINAI』を世界共通の言葉として広める活動を行ない、日本でも全国の自治体でもったいない運動が広がりました。
しかし、あらゆる概念や運動はやがて陳腐化するもの、残念ながら最近は「もったいない」という言葉にすっかり手垢がついてしまった感が否めません。もったいない。

サーキュラーエコノミーのフラッグシップに!

手垢がつき、陳腐化して日常の言葉に埋もれてしまったもったいない運動のムーブメントをもう一度巻き起こすのは難しいと思います。しかし、サーキュラーエコノミーが本格化するのはこれからのタイミングであり、改めて世界に資源の大切さを訴えるのは不可欠。中田さんには「是非、もったいいね!の概念を世界に広めましょう!」とお伝えしましたが、もったいない概念から一歩進んで、前向きに資源の再利用を行うサーキュラーエコノミーの活動をレベルやレイヤーで分類するとか、定義を明確に定めるとか、その活動を積極的に取り組んでいる事業所を認定するとか、多くの会社が、ぼんやり、何となく行っているエコ活動を明確にしてポジティブな取り組みとして表出することで、自律循環型のビジネスモデルの普及が大きく進む可能性があると真面目に思いました。
枚方から世界へ!もったいいね!のムーブメントが巻き起こるように私も微力ながらお手伝いしていと思います。まずは、経営実践研究会のサーキュラーエコノミー研究委員会に繋いでみるところから始めます。

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タレンティズムを起点にした真の民主化運動と共に、自律循環型社会へのシフトを目指して活動しています。


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