奈良博三昧 〜至高の仏教美術コレクションで感じたこと〜
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奈良博三昧 〜至高の仏教美術コレクションで感じたこと〜

先週末、久しぶりに奈良まで足を運び、至高の仏教美術コレクションなる特別展をを見学してきました。会期終了目前となった奈良国立博物館で奈良博三昧と銘打たれた特別展に合わせて学術委員による公開講座も開かれると言う情報を聞きつけ、お寺参り好きの私としては、あまり詳しくない仏教美術についてのレクチャーを受けられるのかと思い、喜び勇んで申し込みました。素晴らしい作品であるにもかかわらず、ほとんどが作者がわからないとされる仏像や仏教美術の深い部分に少しでも触れられるかと楽しみにしておりました。以下に(もう終わってしまいましたが、)奈良博三昧の感想を書いておきたいと思います。

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素晴らしい展示とくだらない講座

奈良博三昧の特別展に行ってみた感想をシンプルに一言にまとめると、なかなかお目にかかれない貴重な仏像や仏教画、曼荼羅などの展示品の数々は非常に素晴らしかったけど、公開講座ははっきり言って聴くだけ時間の無駄でした。
と言うのも、今回展示されている作品についてのレクチャーが受けられると楽しみにしていた講座は、奈良国立博物館の成り立ちやこれまでの歴史について学術委員が学術委員のために学術委員活動についての話をすると言うなんとも身内ノリの私たちオーディエンスにとってどうでも良い話ばかりだったからで、今時、こんな顧客を蔑ろにした講演をする人がいるのか?と耳を疑いましたが、地元の奈良県人にとってはひょっとしたら地元の誇りである国立博物館を深く知る機会であり、興味深い話だったのかも知れません。
そもそもは、私が公開講座の内容をきっちりと把握していなかったのが問題で、これまでの経験からの講座の内容は展示作品を堪能できるものであるはずとの思い込みにとらわれて、確認しなかったことを大いに反省した次第です。(苦笑)

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体型とあり方の深い関係

そんな公開講座の失敗はさておき、奈良博三昧の特別展は奈良国立博物館の誇る仏教美術に関連する蒐集作品が数多く展示されており、非常に見ごたえのあるものでした。興味深かったのは、6世紀頃に作られた仏像と、7世紀以降のそれとでは体型というかフォルムが大きく変わっており、古い作品は非常にスリムで厳しい修行をくぐり抜けてきた雰囲気をかもしているのに対して、7世紀以降の仏像は顔も体型も少しふくよかで、豊かな暮らしぶりに変化したのが伝わってくるようでした。仏教と言う宗教の成り立ちから次第に一般化し民衆の暮らしの中に溶け込んでいった変遷がそこに少し表れているような印象を受けてなるほどと、勝手に納得してしまいました。

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外来種の侵略

仏教が日本に伝来する前の仏像や絵画から、鎌倉時代、江戸時代までの作品が同時に多く展示されていたのを見て感じたのは、古代インドで発祥し、大陸を渡って海を越え、日本に伝わった仏教はそもそも外来種だと言う事実です。すべてに神が宿り、それら八百万の神との共生を続けてきた日本人にとって仏教の伝来はある意味、侵略であり洗脳だったのは、五大明王の恐ろしい形相と勇ましい武具を身に付けた出立ちに感じ取れました。そのこと自体が良いとか悪いとかではなく、日本の文化の形成は異文化の多様性を広く受け入れながら独自の世界観を作り上げて来たのだと改めて感じさせられたのと共に、それらを含めて独自の文化に取り込んでしまう日本人の貪欲さと懐の深さを感じさせられました。

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奈良博三昧

公開講座はともかく、国宝13件、重文100件にも及ぶ奈良博三昧の展示は非常に素晴らしく、日本仏教黎明期の古代寺院の遺宝、密教や浄土教が生み出した仏像・仏画、神とほとけが織りなす神仏習合の造形など、各時代にわたる名品が時系列で展示されていることで、仏教が日本に深く浸透していく様を感じることができました。奈良博三昧のオフィシャルページによると、「三昧(ざんまい)」とは、一つの対象に心を集中することを意味する仏教由来の言葉で、熱心にほとけの姿をみることを特に「観仏三昧(かんぶつざんまい)」と呼ぶとのこと、まさしく、奈良国立博物館を三昧できる良い機会に恵まれたと思います。

文化の力

先行きが見通せないVUCAの時代、しっかりとした軸を持つことがとても大事だと思っています。その軸とは、思想であり信念、信じる拠り所です。宗教こそその拠り所になるとは言いませんが、悠久の時を経て現代に受け継がれてきた文化には時代の荒波を乗り越える力があるのは間違いありません。モノではなくコト、やり方ではなくあり方、意味や意図が重要視されるこれからの時代に立ち向かうには、私たちがこれまでに培ってきた文化をよく知り、新たな文化を創生する意識が必要だと思いますし、折に触れて日本の伝統文化に学ぶ機会を持つべきだと思います。ちなみに、一昨年に練り込み、昨年からスタートを切った私が代表を務める株式会社四方継が目指す目的は、「ひと、まち、くらし、文化を継ぎ四方良しの世界を実現する」としています。文化がこれからのビジネスにおける大きなテーマになると思っています。

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本業は神戸と台北を拠点に設計デザイン、自社大工による施工を行う建築事業を営んでいます。 自分自身の出自は大工と言う事もあり、職人育成と職人の社会的地位の向上をミッションに掲げ、一般社団法人職人起業塾を立ち上げて日本全国で職人の意識改革、キャリアアップの支援活動を行なっています。