見出し画像

行けば地球が良くなる旅 in BALI② グリーンキッチンで気付く豊かさ

旅することで世界の課題を知り、視野を広げ、視座を高める。ほんの少しでも社会の課題解決に取り組む意欲を湧かせ、出来れば行動する。そんな行けば少し地球が良くなる旅を企画するNPO法人タビスキ。私はその立ち上げ前から強く共感して関わっていたこともあり、企画されたツアーには基本的に全参加することにしています。
今回は赤道直下の国インドネシアのバリ島でのツアーに参加してきました。そこでのスタディをコンテンツごとに備忘録がてら綴っています。
タビスキの想いを綴ったHPはこちら

Green Kitchen

今回はバリ島の中央部近くに位置する半自給自足で暮らす農村地帯を訪れて、現地の人たちの命の源である食について学ぶ、グリーンキッチンでの気づきや学びについて書いてみます。
この施設では、ヴィラやレストランを経営されながら、地元の食材を使った伝統料理を食べさせるだけではなく、海外から来た観光客に向けてのコアなアクティビティーとして料理教室を行われています。海外に行って食材の収穫から下ごしらえ、調理までを行える機会などなかなかできない体験です。今回は竹のナイフで鶏を絞めるところから調理が始まり、食事そのものが命をいただく厳粛な儀式でもあるのを改めて体感させられました。さすがスタディーツアーと銘打つだけの事はあると感心することしきりでした。

豊かな食生活とは?

滞在していたウブドから車で2時間ほど山に入った現地に到着した後はまず、食材のピッキングを兼ねて広大な畑を案内してもらいました。
広々とした畑は、多種多様な植物が植えられており、食用の野菜だけではなく、バリ島で非常に多くの需要がある花の栽培も盛んに行われていました。肥料は、牛の排泄物を発酵させた堆肥を使っており、農薬は一切使わないと言われていました。ただ、それは決してバリ島のスタンダードではなく、栽培したものを自分たちで食するから、農薬を使わないとのことで、バリ島でも一般的な農業では農薬を使っているとの事でした。その言葉の裏側には市場経済と切り離された自給自足の方が、実は豊かな食生活が営めているとの自負を垣間見ることができました。

命を貰い切る

鶏の喉を竹のナイフで掻き切り、締めるところからスタートした料理教室は、畑でピッキングしてきた野菜やレモングラスなどのハーブを刻み、スパイスをすり潰しココナツを絞ってココナツオイルを作るところから始まります。大勢でワイワイと料理をするのは意外と楽しいもので、参加したツアーメンバーは、それぞれ思い思いの作業を笑顔でこなしておられました。加熱調理の方法は日本で言うかまどで、乾燥させたココナッツの実や葉っぱを燃料にして火を起こしで焼いたり炊いたりします。当然ですが、電子レンジなどの電気機器もガスも一切使いません。これは観光客向けのキッチンスクールだからと言うわけではなく、今でも普通に火をくべて、調理をするのが当たり前のようでした。自然から頂いたものを使い切る自然の恵みに感謝することが刻み込まれた精神性を感じました。

プロセスが生み出す価値

昨日のnoteにも書きましたが、インドネシアでは各家族で暮らすことは稀で、いまだに何世代もの親類が同じ敷地内に暮らしているのがスタンダードで、食事も大勢の人が集まって鶏を潰し、スパイスを擦ってワイワイと調理をするとのことでした。パンデミックで観光事業が止まってしまい、先行きが見えない閉塞感が漂う中でも、大勢が集まってわいわいと調理するのが流行ったとの事でした。
2時間程度の時間をかけて、出来上がった料理は、チキンのココナツカレーをメインにして、畑で採れたゴーヤを塩もみした和え物、ツナを潰したつくねの串、ローストチキン、デザートは黒豆ともち米を炊いたココナッツミルク仕立てなど、どれもとても美味しく、大地の恵みを感じさせられる素敵なランチになりました。それも大勢で手間をかけて作ることで美味しさも増すような付加価値を生み出すのを感じました。早く便利に作る現代の価値観と真逆の価値こそ人に豊かさをもたらすのかも知れません。

伝統を守るのは「場」

スクールの中でしばしばトラディショナルと言う言葉を耳にしました。テクノロジーが圧倒的に進化して、すっかり生活様式が様変わりした今、私たち日本人は命を支える食事の際に、どのくらい伝統を受け継いだり、大事にしているかと考えたら、味噌汁や納豆の発酵食品を口にする程度で、全く伝統から外れ、歴史や文化を重んじることなく日々を過ごしていることに気がつかされました。食事という身近で毎日欠かさず行うことだからこそ、また、口にしたモノで身体が作られているとの事実に向き合えば、食事の質、素材や調理の方法、そして伝統文化にもっと気を配るべきではないかと考えさせられました。
また、コミュニケーションの場としての食事は、ただ食べるだけではなく、作るところから一緒にすることで、より深い交流があるのは自明です。それを守っているからこそ、安心して生きる場がインドネシアにはあるのかもしれません。

グリーンキッチンの教訓

金銭的に裕福になり便利で豪華なモノに囲まれても人は幸せになれるとは限りませんが、圧倒的な心理的安全性が保たれる場が常にあると、人は優しくなれるし、その分幸せを感じられるもの。そんな場がバリ島にはどこにでも当たり前にあるのだと知り、伝統的な調理を続けているのがこの決して裕福ではない島に笑顔が溢れている理由の一つなのかと思った次第です。
私たちは今更、大家族で住まうことも、常態的に親族全員で集まって調理に長い時間を確保してコミュニケーションを取るのも難しいのが現実です。それは致し方ないと受け入れるしかありませんが、違うアプローチでプロセスを大切にする、心理的安全性を保ったいつでも帰れる場を作る、早く便利に手間要らずではなく、しっかりと時間を取って、手間暇かけて物事に向き合うなど、教訓にできることは数多くあると感じました。グリーンキッチン、最高のアクティビティでした。稀有な体験を頂けたタビスキツアーに心から感謝です。

_________________

目に見える価値ではなく、見えないものの大切さを伝える職人育成の学校と塾を運営しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?