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小さな工務店が取り組む理想の組織への挑戦 ① 〜存在価値とマーケティング〜

令和3年4月7日 晴れ

昨日は京都、紫野にある大徳寺の側の顧問先に出社、mtgに参加した後、社員大工のリーダーと一緒に新建ハウジング主催のLIVE配信のウェビナーに出演して、「職人起業塾からの提言」と称して職人不足解消への根本的アプローチについて短い時間でしたが熱く語りました。ご視聴頂いた方、ありがとうございました。

ここ数日、本業の建築会社の経営者としての立場から、住宅業界の悪習というか闇の部分を注意喚起として書きました。家づくりをお考えの方だけではなく、金融や不動産、保険などの関連事業に関わられている方にも安易な選択が人の人生を不幸に陥れることを認識頂ければ幸いです。今日は、住まい手と同じ目的意識を持ってまともな家づくりをする為にはまともな人が関わるべきで、それはまともな組織があって叶う事である大前提に立って、モノづくりの担い手を育てる組織論の続きに戻りたいと思います。

理想の組織5つの条件

先日のnoteで私が持論として掲げる理想の組織の条件をまとめて見ました。以下がその5つの条件ですが、その条件を叶える様になるには状態を整える仕組みが必要です。今日からはそのそれぞれについて具体的に紐解いて見ることにします。難しくて、到底解決できない様なややこしい問題は分解して考えるのが基本原則です。一つずつの課題を順番に明らかにする事で、「理想の組織」というとてつもなく遠くに感じる大目標も少しは身近に感じられる様になるし、時間をかけて解決する道筋も立つというものです。私自身もリアルに小さな建築会社を20年間経営してきましたが未だ道半ば。決して理想の組織を作り上げて後進に道を譲った訳ではなく、今も試行錯誤を繰り返しながら理想を追い求めて奮闘しています。そんな私が思う、5つの条件が整った状態とは、関わる人が皆、幸せを感じられる四方良しの世界を実現できる組織であり、人が集まり、売り上げ利益が自然発生的に生み出され、事業が持続継続できる様になる様を指しています。言い方を変えれば事業の目的そのものと言っても過言ではない重要なタスクであり、目を背ける訳には行かないことばかりです。自分自身への戒めの意味も込めて記事をまとめて見たいと思います。まずは以下に5つの条件を転載します。

理想の組織5つの条件①組織の存在価値が認められ、自社独自の市場(マーケット)を持ち外部環境に左右されずに経営が持続できる
②組織に在籍しているメンバーがやりがいと満足を感じそこで働くことが自己実現の場になっている。
③組織の存在目的がメンバー間で共有され、その実現のために全員一丸となって事業を行っている。
④管理命令型の属人的なリーダーシップで組織が成り立つのではなく、メンバー間での合意形成で組織が運営されていく。
⑤メンバーの成長と新陳代謝が滞りなく起こり世代を超えて事業が継続されていく。

存在価値の3つの視点

今日はまず①の「組織の存在価値が認められ、自社独自の市場(マーケット)を持っており外部環境に左右されずに経営が持続できる。」から紐解きます。組織が持続、継続するには「存在価値」がある、そしてそれが認められる事が不可欠なのは自明の理です。ではその価値とは何かを考える時、3つの視点から見るべきだと思います。まずは組織内部の人から見ての存在意義、次にサービスを受ける顧客からの視点、そして、事業に関連する製品やサービスの供給側、ステークホルダーからの視点です。一見、利益相反の関係に見えるそれぞれの立場の人から必要な存在だと認められるのはそんなに簡単な事ではありません。いわゆる、三方良しのビジネスモデルになってこそ、真の意味で存在価値を認めてもらえる状態になると思うのですが、そこに大きく関係するのはその組織が生み出す付加価値です。
組織が生み出す付加価値が小さければ、そこで働くスタッフを満足させることは出来ませんし、協力業者や職人にも適正な価格での発注が難しくなります。不満だらけのスタッフや職人が集まって工事をしたところで絶対に顧客満足はありません。資本主義経済の中で私たちは厳しい競合との戦いに晒されており、同じ物を購入するなら安い方が良いのは誰しもが思う普通の判断です。理想の組織論を語る前にはまず価格競争から抜け出して大きな付加価値を生み出す必要があり、本来は理念や目的をまず初めに掲げるべきだと思いながらも、存在価値を認められる強さを持つこと、いわゆマーケティングと言われる独自マーケットの構築を一番初めの条件に選びました。

独自マーケット構築

卵が先か鶏が先か論のようになりますが、付加価値の創出にはまず、顧客からの圧倒的な信頼を得られる(価格も大事ですが)価格だけではない価値を生む出す力が必要です。私たち建築会社にとってはその創出の場とは現場であり、私たちが作った住宅や店舗でのクライアントの「その後」の暮らしです。見せかけだけではなく、その場しのぎでもなく、長いお付き合いの中で私たちのものづくりの本当の価値を見出してもらえた先だけが、価格だけでは無い価値を感じて、私たちが誠意を持って提示する付加価値を含めた価格で購入してくれる様になります。自社独自のマーケットを作るとは結局、現場での真摯なものづくり、そしてその後のアフターメンテナンスでの評価の積み重ねであり、それらは全て職人、設計などの建築の専門家としての現場実務者が作り上げるものです。ものづくり企業のマーケティングとは、現場実務者が誠心誠意、真心を込めて、クライアントの立場に立って判断する事が全ての源泉になるというのが私の持論で、この部分にこだわって20年間、大工と設計士の内製化と育成に取り組んできました。
20年前の創業時、私たちはたった三人の大工職人だけで工務店を立ち上げました。抜きん出た技術があるわけでもなく、豊富な知識も才能あふれるデザインも、人並みの営業力も無い職人集団にあったのは、唯一、真面目にきっちりと正直に、そして熱心に仕事をする姿勢だけでした。正直、今になって当時を振り返ると、よくもそんな頼りない会社に仕事を出してくれるお客さんがいたものだと思ってしまいますが、その当時のお客さんは未だに私のケータイ電話に家のメンテナンスや工事の依頼をしてくださいます。それは、その当時、自分が携わった現場、お客様に対して一生責任を取り続けると心に刻んでいたのが伝わったからだと思っていて、マーケティングの入り口は在り方だと私が言い続けるのはそのような原体験があるからです。

次は人材採用と育成

上述のような一人ひとりのクライアントに丁寧に、確実に信頼を勝ち取る事、それを延々と積み重ねる事が理想の組織を作る5つの条件の第一条、「組織の存在価値が認められ、自社独自の市場(マーケット)を持ち外部環境に左右されずに経営が持続できる。」につながると思っています。私が起業した際もこれがまずはスタートでした。この条件を維持しながら、さらにクライアントからの信頼の数を加速度的に増やすために人員を増やす必要が生まれます。ここからが本格的に組織づくりのステップに入るのですが、それは次回に譲りたいと思います。続けて書くか、気が向いた時なのかは分かりませんが、これまでの20年間、私が考え、実践し、これからの事業承継に向けて標榜している理想の組織論をコツコツと書き記していきたいと思います。お付き合い頂ければ幸いです。

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◆四方良しの世界を作る株式会社四方継のHP:


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