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計画なくして実行できるのは左甚五郎だけ 〜自立循環型組織への入り口〜

私は神戸で小さな建築会社を営みながら、一般社団法人職人起業塾なる団体で全国の建築事業所向けに現場実務者教育や人事制度の改革、キャリアプランの作成などのサポートも行っています。その流れでいくつかの企業の現場改革顧問として事業所に入り込んで品質向上や現場を起点にしたマーケティング構築のお手伝いもしています。自社を含め数多くの職人や現場監督とやりとりをする中で私が最も重要視しているのは詳細なスケジュールを立てることと、スケジュール通りに工事を進めることです。何かをする時、計画を立てて実行するのが大切だ。なんて事は、子供でも知っていることですが、これが一筋縄ではいかないのが現実です。

人はそもそも計画が苦手

20年以上も企業を経営してきて「事業経営の肝ってこれだな、」と、私がたどり着いたのは、事業は全て計画と実行に集約されると言うシンプルな原則です。当たり前すぎて全くインパクトのない言葉ですが、誰でも知っている単純で簡単な理論だからと言って、できるとは限りません。知っていると、できると、できている。の間には大きな壁があり、それを乗り越えて目標を達成するのは、(簡単そうな理論であればあるほど)強く意識しなければできません。多分、当たり前すぎてナメてしまうからだと思いますが、数多くの事業所の実務者と一緒に詳細な計画を立ててそれを実行、その後に検証する取り組みを行う中で、計画通りに進まない、そもそも計画が曖昧、大雑把な事があまりにも多すぎて、そもそも人は皆、石器時代の狩猟生活のDNAが残っていて、風の吹くまま気の向くままに暮らしたい願望があり、自分の行動を細かく計画するのが苦手な生き物ではないか?と最近思うようになりました。それぐらい高いハードルを感じるのです。

習慣とは計画と実行

計画の重要性、そして計画を実行したときに得る成果の大きさは誰もが知るところです。小さな例を出すと、私は毎週日曜日の午前中に1時間程度のランニングをしてサウナに入るのを年間計画に落としています。たったそれだけを実行するだけで長年患っていた内臓の疾患は一年ほどで消えてなくなりましたし、毎晩のように外食を続けていくら飲んで食べてもブクブクと太る事はありません。少し前にコロナに感染して発熱もないまま隔離生活を送ることになってしまいましたが、それ以外ではこの20年間、熱も出ることなく体調を崩して予定を変更した覚えがありません。若いときには、子供の頃は全く勉強に縁のなかった私が資格取得の必要性を感じて、1年間ビールを断って毎日1時間程度の資格勉強をしたら建築士の試験に合格しました。それらはコツコツ積み重ねる習慣の力とも言いますが、間違いなく計画と実行の成果です。

所詮計画、されど計画

非常にわかりやすく、簡単な理論ですが、計画の規模が大きくなるとその量に人は負けて計画するのを諦めてしまいがちです。いつも新築や大規模リノベーションを計画される方に資金計画を細かく立てることをお勧めする中で、ライフプランシミュレーションを行ってみるようにアドバイスをします。いわゆるキャッシュフローから見る人生計画ですが、今後、数十年先までの自分の身の上に起こることを予想してそれらを全て羅列して計画するのは、不確定要素も多くあり、机の上で紙に書いた計画通り人生が進むとは誰しもリアリティーや実感を持たれないと思います。それでも子供たちは必ず学校に進学するし多分結婚もするでしょう。その際にかかる費用を予想するのはそんなに難しくなく不確定要素があるにしてもある程度確定的なシミュレーションはできない事はありません。所詮計画は計画で、その通りに実行できるかは分かりませんが、計画を阻害する要因が出てくるたびに計画を修正すれば、最終的には計画通りに物事は進むものです。

計画なしは既に天才的手腕

先日参加した経営実践研究会の全国リーダーミーティングでプロジェクトを遂行するための組織作りの詳細な計画を立てる機会がありました。藤岡会長が「建物を建てるのに設計図を書かないなんて事はありえない。もし図面なしで工事を始めたらロクなものが出来上がらない。」との例えを出して、「事業において綿密な計画を立てずに経営できているならそれは天才だ。」と言われていました。そこには100人近くの経営者が集まっていましたが、中長期、短期の詳細な計画を立てて経営を行っていると言う人はごく少数で、毎年事業計画を立てることさえしない方もおられるようでした。それでも、そこそこ会社が回っていると言う事は既に天才肌で、大きなセンスがあるわけで、それにプラスして綿密な計画を立てて実行後の検証と計画修正を行えばさらに大きなパフォーマンスを発揮するんだろうと思った次第です。

組織のボトムアップは計画から

そんな観点から見ると、中小企業が持つ唯一無二のリソースである人材の力を最大限発揮するには、事業所に所属する個々がそれぞれ自分の役割と責任を全う出来る様に綿密な計画を立て、実行と検証、修正を繰り返すことこそ、全体のパフォーマンスを大きく向上させる最も効果的な方法だと気付かされます。まず、ぼんやり、曖昧、成り行き任せで仕事を進めるのをやめて、まずは自分の守備範囲だけでいいので詳細で精密な計画の立案と実行に全員が取り組むことにより、自立循環型の組織への移行のスタートを切れるのではないかと思います。事業承継真っ只中の弊社でも昨年からとにかく細かな計画を立ててその進捗を確認することを主眼に置いて、その共有をmtgの中心にしています。ボトムアップは主体的な計画から。誰もが知っている計画の重要さ、改めて見直してみるべきだと思うのです。

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アクションプラン(=行動計画)の立案、実践を主体にした研修を行っています。




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