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職人で生きるか。経営者の覚悟を決めるか。

関西大工会と言う団体があります。大阪の南部からならあたりまでの大工あがりの若手経営者が集まって毎月熱心な学びの機会を持たれています。ようやくコロナも落ち着いてきた先月、私も講師として招かれて参加した流れで今月は弊社までお越しになられることになりました。1月前の私の提言を受けて彼らがどのように考え、どのように実践したかを話し合う場は非常に有意義で楽しい時間になりました。そこで出た大きなテーマは「職人として生きるか、経営者の覚悟を決めるか」で、私自身が若かりし頃思い悩む悩んだのと全く同じでした。

若手経営者への5つの提言

1月前の関西大工会の勉強会で私が提言したのは非常にシンプルな理論です。
①目先の売り上げを上げる事は非常に大事ですが、未来を見据えた取り組みをしなければずっと同じことの繰り返し。
②宣伝広告やプロモーションで新規顧客を獲得するのは外部環境に左右されやすい上に、最終的には大企業と同じ土俵で勝つのは難しい。
③工務店は地域密着ビジネスであり、顧客の圧倒的な評価を得て地域で関係資本と評判資本を築いて自然に仕事が舞い込む状態を作り上げるべき。
④顧客からの評価は現場にしかなく、現場での工事品質、コミニケーションを高めるためには人材育成が欠かせない。
⑤若い職人を採用、育成するには人事制度やキャリアプランなどを整えて他業種に比しても見劣りしないまっとうな体制を整えるべし。
以上の5つの組み立てを2時間ほどの時間をかけて丁寧に説明したところ、全員が腹落ちし、何とか取り組みたいと前向きな言葉を発してくれていました。

見える景色が変わった

今回、そのフォローアップの意味合いで弊社に集まってもらい、その後にやってみたこと、考えたことを語り合ってもらいました。1人のリフォームを中心にされている経営者は、お客さんとのコミュニケーションにおいて、職人を前面に出して直接やりとりをさせたところ、顧客満足が大いに上がった、違う景色が見えたと口にされました。違う経営者は、職人との意識の違いが鮮明になり、同じ方向を向いて従業員の大工が働けていないことに対してどうするべきかと思い悩んでおられました。私からは、事業の目的は明確になっているのか?それを伝える機会はあるのか?を質し、誰もが必ず人に喜んでもらえることに自分自身も喜びを感じる良心を持っており、それを引き出すのが経営者の仕事だと厳しめのアドバイスをしておきました。

孤独な自信は排他につながる

関西大工会に集められているメンバーは、皆さんまだ若く、いわゆるバリバリの職人で、私も昔はそうでしたが、いつでも自分が現場に戻ればそれなりの稼ぎを叩き出す自信を持っておられます。なので、人を使うこと、育てることの難しさに直面した時、自分1人でもやっていけるとの強さが前に出てしまいがちです。それはすなわち、従業員に対して「いてもいなくてもどちらでもええねんぞ」と(口にするかしないかは別として、)高圧的な態度に出てしまうことになります。結果的に従業員の職人は目的の共有などするはずもなく、利己的、自己中心的な考え方に陥ってしまいます。それは一匹狼のパラダイムから抜け出せない孤独で強い経営者自らが招いているのです。

1人でも雇えば既に経営者

自分が現場に出て働けば稼げる。と言う考え方は一匹狼的な職人の思考です。しかし、1馬力でできる事は所詮知れており、元請けとなって顧客から仕事を依頼されるようになってもすぐに断らざるを得なくなります。現場で働いた分しか所得がない職人にとって、仕事を断るのは大きなストレスです。それを回避するには一緒に働いてくれる仲間が必要で、1人でも雇用した時点で、その人の人生や家族に対して責任を負わねばならないことを考えると、規模の大きさにかかわらず、もう職人ではなく経営者として覚悟を固めなければなりません。私は職人です。と言い切った人も、既に弟子を抱えている以上、経営者として覚悟を決めて学ばなければならないと少し厳しめにお伝えしました。

覚悟と責任を決めるフェーズ

私自身、他の選択肢があまりない中、建築業に飛び込んで大工として働き出しました。その時の動機は誰に何を言われることなく、勝手気ままに自由に働けるように手に職をつけたい。といった非常に利己的な考え方で、高い志があった訳でも、非常に高額な商品を扱う責任感も、その先にある住まい手の人生や喜びさえも眼中にありませんでした。そんな私でも、ニュースを重ね、スタッフが増えると彼らとその家族に対する責任を感じるようになり、顧客に向き合うために、自分の仕事の意味や意義を考えるようになりました。経営者としての様々な学びはそういうところからスタートしており、今回集まられた若い経営者たちもこれから覚悟を決めるフェーズにはいられるのだと感じました。職業人としての本質に向き合えば、職人として生きるのも、経営者として家族を決めるのも結局は同じところに行き着くのだときっと近いうちに気づかれることだと思います。顧客、従業員、取引先や協力される職人さんなど、人を大切にする建築会社の経営者が1人でも多くなり、業界としての信用や信頼が高まる事で職人の地位向上が果たされるのだと思います。関西大工会のメンバーに大いに期待しているし、私も出来る限りのサポートをしたいと改めて思った次第です。

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