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UX&DXからSXへ、Social transformationの胎動とその必要性と必然性

DX(デジタルトランスフォーメーション)が世界を席巻する、と初めて耳にしたのはかれこれ4年くらい前だったと思います。社内の情報管理クラウドのサービスを提供頂いている会社の社長がアメリカに視察に行ってRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を日本で事業化、サービス提供を始めると言い出された際に世界はDXが始まっていると耳にしたのが確か初めてだったと記憶しています。その時はぼんやりと時代の大きな変化の胎動を感じた程度でしたが、今やすっかりDXは一般化して国の政策の中にも重要施策として組み込まれるまでになりました。短期間の間にすっかりスタンダードになったDXは私たちのビジネスや生活にも深く影響を及ぼすようになり、デジタルにネガティブだった中高年層の人たちを巻き込んで日本人の思考そのものが大きな変化を遂げたと感じています。

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DXとSNS

進化発展と絶望の加速

まるで急流を流されているような時代の流れの速さはどんどん加速度をましており、先進的なテクノロジーやサービスは一瞬で実用化され汎用品となり、ついには無価値化されてしまいます。モノに溢れ、便利さと豊かさを享受している日本での今の私たちの暮らしは中世の貴族の暮らしよりも豊かだと言われます。しかし、その一方で解決されない課題が多く残されていることも事実であり、その深刻さは時代の変化の速さと共に深刻さを増す一面をのぞかせています。世界有数の豊かな国になった日本で未だに貧困に喘ぐ人が多くおり、格差の拡大とともにその人数は増加傾向にあります。女性の半数が50歳を超えて少子化に歯止めがかからない現実と、それが引き金になり、ますます加速する超高齢化社会に対する解決策は何も見出されていないままです。また、この10年間減少傾向にあった国内の自殺者は今も2万人超で推移しており、2020年に過去最多を記録した小中高生の自殺者は昨年460人と記録されています。なお、15~34歳の若い世代で死因の第1位が自殺となっているのは、先進国(G7)では日本のみとのことで非常に深刻な問題として顕在化しています。世の中はこんなに進化発展し続けているにもかかわらず、絶望する人の数が一定数いることを考えれば、DXでは世の中はあまり良くなっていないと考えた方がいいのかもしれません。

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自殺者の若者割合の増加

UXとサスティナブルとSX

平成から令和へと時代が変わる頃から現在にかけて私が熱心に学んでいるのはUXデザイン思考とサスティナビリティーを支える自律分散型社会と組織論、それらを土台にしたSX(ソーシャルトランスフォーメーション)です。UX(ユーザーエクスペリエンス=顧客体験)を観察調査してそこで見出したインサイト(事実)を元に人はどんな時に幸せを感じるのかを考え、サービスや商品をデザイン(開発)する考え方はこれまでのマーケティング(需要を想像し市場を作る)思考から一歩進んだ持続可能で本質的なビジネスモデル構築へとシフトするヒントをもらいました。その学びを実践し、事業モデルとして実装を試みているのが現在の株式会社四方継であり、暮らしを作る建築会社という事業ドメインと、それまで20年間親しんできた社名を捨てて、地域コミュニティー事業部を立ち上げてマーケット(市場)ではなくコミュニティー(共同体)を作り、その活性化を図ることで自社の事業の持続可能性を高める事業モデルへと大きな転換を図りました。持続可能性を高める取り組みは同時に循環型組織、循環型社会への移行でもあり、自社の組織も組織図を解体して個々の持つパフォーマンスを活かせる組織へと改革を進めています。そのような取り組みを進める中で、結局、私達が目指すテーマはみんな(四方八方)の人の幸せであり、それは自分達だけではなく改革、変容を幅広く広げていくことだと繰り返し認識しました。

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株式会社四方継とスローガン

DXはSXを支えるためのツール

事業は社会の中で行われる以上、社会にとって必要なものでなければなりません。昔、私達が子供の頃、大人から良く言われたのは「世のため、人のためになることができる大人になりなさい」ということでしたが、まさにそれは事業を営む上で最も重要な概念だったのではないかと思うのです。それが社会ニーズの本質だとすれば、この世界に必要なのは圧倒的に効率を高めるDX(デジタルトランスフォーメーション)ではなく、社会的意義の高い事業へのシフトであるSX(ソーシャルトランスフォーメーション)であり、DXはSXを支えるためのツールとして扱うべきではないかと思うのです。そしてそれは、2019年のUSビジネスラウンドテーブルにおける株主第一主義の廃止表明、2020年1月のダボス会議でのステークホルダー資本主義の提唱等、経済界からも企業の社会的価値創出の重要性が表明されたことでも明らかで、PwCコンサルティング合同会社のサイトによると、2019年に世界の消費者を対象に実施した調査で回答者の37%が環境にやさしいパッケージの製品を探し、42%が食品以外でも持続可能な方法で生産された製品があれば値段が高くても買うと回答している。との統計が示されています。また、クロス・マーケティング社が2020年に実施した調査によるとSDGsに積極的に取り組んでいる企業や団体への就職・転職意向は社会人で29.9%、学生で48.7%との回答が得られた。とのことです。市場も含めて社会全体の意識とニーズも大きな転換期を迎えているのは間違いないと思われます。

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地域活性化サポート事業「つない堂」

SXした社会課題解決型モデルの企業

昨年、沖縄で知り合い、最近は私がお手伝いしている企業の顧問に入って頂くなど、とても懇意にして頂いている琉球アスティーダの早川社長は卓球のプロリーグであるTリーグに参戦して3年でタイトルを獲得すると同時に株式上場を果たされました。弱い者に光が当たる社会の実現を志に掲げて、沖縄の貧困問題の解決、子供達が夢を持てる環境作りに取り組まれ、多くの企業を巻き込みながらスポーツを軸にした事業を次々に立ち上げて世界を見据えた戦略を実行されています。大リーグの大谷翔平選手と共に昨年のForbesの日本人100人に選ばれた早川社長は自分達のビジネスモデルを明確に「社会課題解決型モデル」だと言われます。また、今年、日本で一番大切にしたい会社の大賞に選出された福岡のカムラック社の賀村社長はIT分野での強みを生かしたA型、 B型の障害者就労支援施設を運営されておりますが、自社は地域活性化の為の課題解決型事業だと自社の事業ドメインを紹介されます。両者のお話を伺って感じた共通点はDXを利用、活用してSX(ソーシャルトランスフォーメーション)を実現する事業モデルを構築されていることです。SXこそが今後のVUCAな世界での中心的モデルになるとの確信も同時に得ることができました。

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人中心のポートフォリオマネジメント

SXの学びと実践のススメ

上述のお二人とご縁を頂いたきっかけは私がSXを学び実践する場として昨年から所属して、熱心に活動を続けている経営実践研究会です。この団体に所属されている経営者は全員が「本業を通して社会課題を解決する」ことにコミットメントした方ばかりで、現在日本全国に600社超まで広がりを見せています。そこでの活動はマラソンランナーが高地トレーニングをするが如く、高い意識と具体的な事例を持った経営者で溢れ、研修やイベントに参加する度に多くの気づきや学び、深い示唆を受け取っています。私が長年取り組んできて、なかなか成果が上がらなかった建築業界の課題である職人をはじめとする現場実務者の圧倒的な人材不足。それを解決する職人の正規雇用と育成から繋がる職人の社会的地位の向上への取り組みも、この会のメンバーと協働することで大きくスケールする可能性を見出すことができました。これまではいくら全国でセミナーや講演を行っても共感を得る人数が少なく、理解者だけを集めて研修事業などの地道な活動を行ってきましたが、同じ志を持つメンバーに出会えたことによって、私の手を離れて大きな展開が生まれつつあります。これがSX(ソーシャルトランスフォーメーション)の力なのだと実感することしきりです。この思考こそが先行き不透明、不安定で複雑、曖昧なこの世界を生き抜く力になると感じています。
そんなSXを体感できるイベントがオンラインも含めて多数あります。以下にご案内しておきますのでご興味あればお気軽にご参加ください。時代の変化に適応出来るモデルを一緒に創りませんか?

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経営実践研究会のHPはこちら

本質的なコミュニケーションの研修も行っています。

建築業界発の社会課題解決に向けてのプロジェクト立ち上げました。

人を生かし、地域に存在感を示す企業経営者に学ぶイベントも企画してます。

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