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経済とは経世済民 〜ソーシャルカンパニー2022in東京 企業が変わると社会が変わる〜

ソーシャルカンパニフォーラム2022in東京に参加してきました。全国から200名を超えるCSV(共通価値創造=社会課題解決型モデル)経営に取り組まれている経営者が集まり、企業のソーシャルシフトが進んだ先の未来のイメージを共有しました。基調講演は3000億を超える運用をされているさわかみ投信株式会社澤上龍社長に登壇頂き一見、投資信託とは真逆と思われる社会的な投資が生み出す経済価値についてお話があり、世の中にとって良いことをすれば周り回って経済的価値が帰ってくる、二宮尊徳先生が提唱された「たらいの法則」が実体経済の中にあることを大きなスケール感で聴かせて頂きました。その他の会員によるプレゼンテーションやパネルディスカッションでも心が震えるような体験が繰り返され、まさに社会の変革の胎動を感じさせられる素晴らしい1日でした。準備から運営までご尽力頂いた経営実践研究会 東京のメンバーには心から御礼を申し上げます。

パーパスの番人

今回のフォーラムで特に心に残ったワードが2つありました。自分自身への備忘録を兼ねて、記しておきたいと思います。一つ目は澤上社長の講話の中で話されたpatagoniaの創業者イヴォン・シュイナード氏の選択について。同氏が環境問題への貢献を継続する為に所有権を環境団体に寄付したとの、つい2ヶ月ほど前の記事は大きな話題になり記憶に新しいですが、澤上社長はこの例を取り上げて、経営を所有するオーナーのあるべき姿を再定義されました。私たちのような規模の小さな地域企業では経営者=企業オーナーであることが殆どですが株主資本主義社会ではそうとは限りません。事業規模がスケールして株式を公開すると経営権も売買されますし、社歴が長くなると創業家が経営者を続けることが難しくなり、オーナーでは無い人が経営者となって事業を進めるのは珍しいことではありません。そんな現状を踏まえて澤上社長はオーナーの所有の責任と役割を理念(パーパス)の番人であるべきだと言われました。それでこそ事業の存在価値が維持されると。4年後の事業承継に向けた取り組みを進めている私にはずっしりと重い言葉で、継承者達とのパーパスの共有こそが事業承継の本質であると気付かされました。どのように継ぐかよりも何を継ぐかを今一度、明確にしなければと思った次第です。

パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードとその家族は、49年の歴史を持つ同社の所有権を非営利団体らに譲渡し、パタゴニアの将来の利益を気候変動対策に充てると9月14日に宣言した。

パタゴニアが保有するすべての無議決権株式(全株式の98%)は、新たに設立された非営利団体の「ホールドファスト・コレクティブ(Holdfast Collective)」に移管され、その資金は自然や生物多様性の支援と「環境危機との戦い」に充てられるという。

同社の議決権付き株式は現在、パタゴニアのパーパスとバリューを明確にし、「資本主義が地球に貢献できることを営利事業で実証するための新たな組織」とされる「パタゴニア・パーパス・トラスト」が保有している。パタゴニアは、業績に応じてホールドファスト・コレクティブに年間約1億ドルを支払う予定だが、この資金の具体的な用途は明かされていない。

シュイナードは公開書簡で、会社を売却してその収益を寄付することや株式の公開も考えたが、従業員の雇用とパタゴニアの価値観を維持するために所有権を手放したと述べている。同社のCEOのライアン・ゲラートは今後もそのポジションに留まり、シュイナードの一族は引き続きパタゴニアの役員会メンバーで居続けるという。

出典:https://forbesjapan.com/articles/detail/50430

社会は地域コミュニティーの集積

2つ目は豪華かつ個性的な登壇者によって彩られたパネルディスカッションで考えさせられたこと。株式会社オウケイウェイブ 創業者 兼元謙任氏、株式会社あなたの幸せが私の幸せ 代表取締役CHO 栗原志功氏、非営利株式会社eumo 代表取締役CJO 武井浩三氏、株式会社ペライチ 創業者 山下翔一氏と、今の日本で新たなビジネスモデル及び新しい形態の組織を生み出してきた、コミュニティー創造、地方創生の分野でのトップランナーが集ってのパネルディスカッションは非常に刺激的で福井世話人の絶妙なモデレートで地方企業の今後の在り方、進むべき方向性について議論を深めてもらいました。そこで出てきたのは社会とは結局、地域のコミュニティーの集積であり、貨幣経済とは別の経済が地域にはあり、コミュニティーが成り立っていれば助け合い、相互扶助することで経済は循環し、存続することが出来るとの人間社会の原始的とも言える原点回帰でした。そして、非常に頻繁に経営実践研究会のイベントに参加いただいている武井浩三さんから出てきた言葉は「そもそも経済って経世済民ですし。」とのシンプルなインサイトでした。

経世済民
經世濟民は、中国古典に登場する語で、文字通りには、「世よを經め、民を濟ふ」の意。「経国済民」もほぼ同義である。
略して「經濟」(けいざい / 経済)とも言うが、主として英語の「Economy」の訳語として使われている今日の「経済」とは異なり、本来はより広く政治統治行政全般を指す語であった。以下「經世濟民」および「經濟」の本来の用法と、その変遷について扱う。

典拠
中国・東晋葛洪の著作『抱朴子』内篇(地眞篇)には「經世濟俗」という語が現れ、經世濟民とほぼ同義で用いられている。時代がやや下り、隋代王通文中子』礼楽篇には、「皆有經濟之道、謂經世濟民」とあって、「經濟」が經世濟民の略語として用いられていたことがわかる。さらに後代の『晋書殷浩伝()、『宋史王安石伝論()などにも「經濟」が現れるが、以上はもちろん政治・統治・行政一般を意味する用法である。清末、戊戌の政変後、従来のような儒教的教養によらず学識ある在野の有為な人材を登用するために新設された科挙の新科目「経済特科」も、この用法によるものである。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

経世済民とパーパス

今年7月に山梨でスタートしたソーシャルカンパニーフォーラムを主催しているのは経営実践研究会の各地のメンバーです。この研究会を一言で表すとCSV経営(共通価値創造)へのシフトを行い、本業で社会課題を解決することを目指した地域企業の経営者、経営幹部が集まっている団体です。そこで最も良く語られるのはどのような志を持って事業に取り組んでいるかです。
志とは自己実現の為の夢とは少し意味合いが違い、それは社会性があるか否かです。地域に根ざした事業を行う経営者が志を持って取り組めば、そこに社会性があるが故、地域社会が良くなる方向に押し進められます。そして地域経済とは地域企業の活動の集積に他ならず、それらが一致団結することによって地方政治への影響力を高め、地域社会という世を經め、地域に住まう民を濟ふ、本来の経済の在り方を取り戻すことになります。決して規模が大きくない地域企業が1社で出来ることはたかが知れています。しかし、世の中をもっと良くして次世代に継ぎたいとの志を同じくする経営者、事業所が集まれば大きなムーブメントを起こせる可能性がある。複雑と混迷を深める今の世相を跳ね返す原動力を感じる、そんなフォーラムでした。来月は九州での開催、私も登壇させてもらうことになっています。志で世界を変えられる可能性を伝えたいと思います。

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新しい世界へ一歩を踏み出す体験が得られます。


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