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SUNTOサードパーティーと最高の時計店

私は実は若い頃、大の時計付きで、腕時計を5つくらい持っています。その中でもSUNTO COREという山登り用の古いスポーツウオッチが特にお気に入りで、結局、殆どそれしか腕に巻く事がないくらい、TPOにも関係なく愛用しています。スポーツウオッチなのでベルトがラバー製で、ベルト通しが定期的に摩耗して切れてしまいます。その度に買い直すのですが、マニアックな部品はリアル店舗では取り扱っているところも少なく、なかなか見つけられないのでネットでベルトを探すようになりました。多分、2年に一度くらいの頻度でベルト交換をしており、その度に時代の変化を感じる何かしらの発見や気づきがあり、期せずしていい定点観測になっています。

サードパーティーの台頭

このSUNTOなるメーカーの腕時計は私のような根強いファンが多いようです。時計本体はタフで何年経っても壊れることもなく、長年持ち続けられるのに対し、ラバーベルトは完全な消耗品で定期的にリピート注文が続き、しかもそこそこいいお値段。LTVを見据えたメーカーとしての販売システムは素晴らしいと昔から思っていましたし、何度も繰り返しHPから交換部品の注文をしてきました。それが、いつからかは定かではありませんが、インターネット上でSUNTOのベルトを検索すると、正規品と同時に「サードパーティー」と呼ばれる海賊版?的なSUNTOの時計に合わせて違うメーカーがベルトを販売サイトがヒットするようになり、当初は正規品と全く同じ模造品が半額くらいの価格で売り出されるようになりました。

SUNTOのベルトはメイドインジャパン

模造品が販売され始めた当初はSUNTOファンからすると、これって如何なものか、と訝しがっておりましたが、所詮はラバー製の時計のベルトなので、耐久性に少し差があるかも知れませんが単なる消耗品。大した変わりもないかと試してみるようになりました。そして、今では純正品よりも幅広く様々なデザインのサードパーティーのベルトがラインナップされるようになり、とにかくネットで叩くとトップに上がってくるのはSUNTOではなくAmazonのサイトな訳で、そこにはよく切れるベルト通しのラバーが単体で販売もされており、痒いところに手が届く商品が並びます。また、何度もベルトを交換していると、違うデザインのベルトで雰囲気を変えてみようかと思う様にもなります。今回新しく見つけて購入してみたのはステンレス製のシンプルなデザインのもので、純正のラバー製よりも安く耐久性もありそうなメイドインジャパンの商品です。

ユーザー利便性とデザインの無価値化

SUNTOというフィンランドが誇る世界的な大ヒットメーカーのデザインが一人歩きして、メーカーさえも対応しない細やかなユーザーのニーズや課題、エクスペリエンスを拾いあげることで新しいビジネスが成り立っている、インターネットの普及による情報革命がもたらした便利さと無価値化が一体になった顕著な例だと改めて感じました。AppleのiPhoneのカバーや画面の保護フィルム等も純正品よりも圧倒的にサードパーティーの製品が売られているのと同じですが、この傾向がどんどん進化しているのを感じました。そして、結局、収益を寡占するのはインターネット上で圧倒的な影響力を持つAmazonやGoogle等の巨大企業で、中小企業では太刀打ちできない現実と、販売チャネルを握られることであらゆる企業は収益を巨大企業に吸い上げられる構図が出来上がったのだと感じさせられました。

UXの本質は困りごとの解決

ただ、地域に根差す中小企業が淘汰されて消えいくのみとは思っていません。私達が生業にしている建築業の様にインターネットでの販売とは関係のない、リアルな技術系のサービスにはまだまだ可能性が残されていると考えています。そこにこそ、真のユーザーエクスペリエンスが存在するし、テキストや画像での情報ではなく、本物の体験があるからです。
ちなみに、上述のステンレス製の時計バンドが手元に届いたら少し長くて調整が必要でした。時計専用の精密工具がなければベルトを縮める作業は出来ないため、通りかかりの大阪の時計店で調整をお願いしたところ、ほんの5分でサクッと作業をしてくれました。困りごとを一瞬で解決してくれて嬉しかったし、勢いでついでに何か違う商品も購入しようかと思ったくらいです。インターネットがいくら普及しようとも暮らしに関わる専門技術を提供するサービスは絶対に無くならないし、無くなってはならないと感じた次第です。

最高の時計店

あと、余談ですが、その時計店では時計のベルトを縮める作業費は330円に決まっているとのことでした。別にいいのですが、少し勿体無いように感じたというか、違和感がありました。作業時間の合間についでに購入しかけたカルティエの時計のベルトは合うものが売っておらず、購入を諦めましたが、ベルト調整費が無料だと言われたら、多分、正規店から取り寄せて貰ってでもそのお店で購入したと思うし、それもダメなら違うもの(時計)を何か買っていたと思います。作業賃、330円を無料にしたら、Google map上でも最高の評価がバズるでしょうし、ネットに頼らなくても私が熱を込めて「ここの時計屋さんは最高だ!」とあちこちで吹聴します。絶対に330円以上の費用対効果があると思うのですが、昔ながらの時計屋さんはそんなことを考えないのかも知れません。たった5分、時間も費用もかけずに人に喜ばれる技術を持っているにもかかわらず、そのリソースを最大限に活用すべきだと強く感じました。本当に勿体無いことです。ま、私からそんな提案は出来る立場ではありませんでしたが、もう一歩踏み込んで、「知り合いに宣伝するから330円まけてえな、」と言ってあげた方が良かったかも知れません。(笑)
参考までに、その時計屋さんはこちらです。時計の修理の際は是非行ってみてください!

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