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超訳 未来予測のアップデート 〜SINIC理論研究会#3〜

私が世話人として参画している経営実践研究会ではいくつかの専門的な分科会を立ち上げています。その一つがオムロンの創業者、立石一真氏が50年前に未来学会で発表し、その精度の高さが単なる予想や預言の域を超えていると近年大きく注目されている、SINIC理論の研究会です。
その未来予想に示された、実際に現在起こっている時代の大転換が生み出す最適化社会から自律社会へのシフト、これから起ろうとしている社会の変容を民間の実業を行っている経営者が集まって、シンクタンクとなり社会実装のための思考や概念、そして行動への指針を探る取り組みです。

未来予測のアップデート

オムロンのシンクタンクであるヒューマンルネッサンスの中間氏がオープンソース化を標榜して上梓され、昨年出版及び公開されたSINIC理論の書籍の第3章には、半世紀前に示された未来予測を、現在の世界の情勢変化に合わせたチューニング、アップデートをする必要であることを示されていました。
未来への期待や意志を含めた人間の発展・成長の根本的な部分は変わらずとも、この50年間に起こった社会、科学、技術の進化発展とそれに伴う社会の変化はこれからの未来を読み解くにあたり、考慮しなければならないのはごく自然なことだと思います。
今回はSINIC理論をアップデートする、その内容を要約し、誰にでもその意図がわかる様に概念化して書き残しておきたいと思います。私自身はこの第3章を読み込んで、以下の概念でのアップデートが2025年に始まるとされている自律社会への扉を開くと感じましたし、今現在起こっている時代の大転換とピッタリ符号が合っていると思いました。
SINIC理論の理論的特徴のアップデートは以下の通りで、それぞれを超訳、概念化することでとっつきにくい理論を咀嚼する一助になれば幸いです。

1.科学・技術・社会の円環的相互作用のアップデート

・科学と社会の相互作用 ー可能性・夢・倫理ー

1970年代以降の社会発展、情報革命により、一人ひとりの社会参画能力が向上して、科学は専門家だけが考えることではなくなってきた。
科学の民主化とルネッサンス
また、AIによるシンギュラリティが取り沙汰されているように、科学が社会へ恩恵をもたらすことに対し、全幅の信頼が置けなくなってきたのは半世紀前には予想されていなかった未来であり、科学に対し批判的な眼差しをもって参画するという、科学の行き過ぎを防ぐための要素が組み込まれた。
→夢と道徳の再考

・科学と技術と社会の相互作用の原動力 ー進歩思考から共生思考へー

SINIC理論が構築された際には、人間の「進歩志向意欲」が科学・技術・社会への影響を与える原動力であり、「量的な成長と拡大」=「一人当たりGNPの増大」が目標だった。しかし、情報化社会以降は、次第に成長の加速度が小さくなり、人類だけの発展ではなく、地球全体の持続可能性を確保する動きが次々にスタートしてSDGsを国連で批准するまで広まった。この流れを受けて、「共生」こそが、豊かさの実現につながる社会へと向かっており、生態系の構築を考える機運が高まっている。
今後のより良い未来を手繰り寄せていく原動力は「共生志向意欲」への転換が必要になった。
→エコシステム/エシカル思考

・人間の志向性と社会の関係 ー社会への適応から「参画」へー

SINIC理論が構築された際には、科学と技術に向けられた行動は、主体性のある行動であり、社会に向けられた行動は、人間が社会進歩に追従するための受動的な行動として定義されていた。情報革命、グローバル化とその脆弱性の露見、BRICsの台頭による世界の枠組みの変化等、予測不能な非連続な未来に向かう最適化社会となり、社会に向けられた行動を、人間が新しい未来社会を創りたぐり寄せるためには、能動的で多様な適応を可能とする「参画」という主体的な行動に修正が必要になった。要するに人が主体となり、未来を切り開く、これまで幻想のように扱われ、実現されてこなかった民主主義の重要性を再認識する必要性を説かれています。
→民主化の社会実装

2.社会発展指標と発展プロセス理論のアップデート

経済単一指標から、多様な価値基準による多元的指標へ

SINIC理論が構築された時代では、経済指標(GNP/GNI)で社会発展の尺度を設定せざるをえなかったが、有効だった。しかしながら、経済成長を政策目標として設定し、成長を目指してきたことにより、解決すべき負の遺産として、命を脅かすレベルの社会課題が顕在化してきた。
SINIC理論のシナリオの最終段階の自律社会から自然社会へと進むには、社会発展尺度を経済単一指標で測定することへの違和感が顕在化してきており、「一人ひとりの価値基準に基づく、一人ひとりの豊かさと満足の社会総和」という概念としてとらえることにした。
→well-beingの実現

多様な価値観を包含した基準の指標化の検討

また、時代の変遷とともに、これまでの経済、社会システムのエラーが表面化し、深刻な社会課題が顕在化してきたこと、個人主義が進み、価値観の多様化が進み、多様性を認める機運が高まったこと、モノが溢れる先進国の幸福度が低いことの研究から、物から心へと重視する価値観がシフトしてきている。これ等を鑑みて、一人ひとりの価値観の個別性が大事になり、一つの塊として取り扱うことができなくなってきたため、一人ひとりの個人の多様な基準で測った結果の総和というような考え方でとらえられるべきものになってきたことを踏まえた指標化の検討も進めて行く必要がある。
→インクルーシブへのシフト

3.社会進化と価値観に関するアップデート

心⇔物の二元論から、心⇔物・集団⇔個の座標平面上の社会変化へ

SINIC理論が構築された当初は、「心」と「集団」をセットにした「心中心の価値観」=「東洋的価値観」と「物」と「個」をセットにした「物中心の価値観」=「西洋的価値観」という二元的価値観がベースにあった。
それぞれは常にセットになっているわけではないが、「心」か「物」か「集団」か「個」かという対抗軸は引き続き意味を持ち、社会の方向性を決めるにあたっては重要であるため、それぞれを表す2軸により構成される座標平面を社会発展の進路を表す構造として設定し直す必要を示している。
フラットで相互に関係し合う位置付けにすることで、柔軟性を持たせ、新たな価値観を生み出し、不安定で不透明、複雑で曖昧な大きな時代の転換に適応できる人の本質的な価値に回帰する二項動態の価値観へのアップデートの必要性を示唆している。
→セカンド・ルネッサンス

まとめ

この第3章では時代の変化、人類の進化成長に合わせて、これからの未来予測には50年前に発表されたSINIC理論をさらに確度を高める為のアップデートの方向性を示されていました。その内容は結局、当初から根底に流れている基礎的な概念は変わらず、今の社会で重要視されていること、本質的に望まれている人の幸せを実現するために重要な要素を加味されていると言っても過言ではありません。3つのアップデートとは、

  1. 理想とする世界のアップデート

  2. 成長の意味と意義のアップデート

  3. 人が生み出す価値のアップデート

であり、そこに必要な概念を抜き出して超訳、列記すると以下の通り。

  • 科学の民主化とルネッサンス

  • 夢と道徳の再考

  • エコシステム/エシカル思考

  • 民主化の社会実装

  • well-beingの実現

  • インクルーシブへのシフト

  • セカンド・ルネッサンス

これらの概念は、まさに今、私たちが事業そのもので社会課題を解決すべく取り組む中で、重要視したり、目指している概念がずらりと並べられていると気付かされます。もちろん、要約や概念化には私たちの解釈も含まれているので、これがそのままSINIC理論のこれからの指標とは言いませんが、それでも価値観や方向性が非常に近いのは間違いないと感じます。
今後は、この研究の成果として、未来への指標を見定めて、上記のアップデートを踏まえ、新たな商品、サービス、ビジネスモデル、もしくはプロジェクトを立ち上げるアウトプットに繋げたいと考えています。

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社会課題解決型モデルへのシフトを目指す企業のサポートも行っています。
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