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職人の意味のイノベーション

昨日、大阪にて第21期目となる建設業の実務者向けの実践研修「職人起業塾」を開講しました。今回も大工家と倉庫店、現場、施工管理、設計等、建築現場に携わる若手の実務者が集まり、新たな価値を創出する業務改善に向けての取り組みがスタートします。

職人の未来創造と自助論

業務改革コースと銘打たれたこの研修は、文字通りそれぞれの塾生が自らの役割を認識し責任を全うしつつ新たな価値を創出、未来を切り開く人材に成長してもらうための研修です。その入口は当たり前のことをまず、完璧にこなすことからで、第一回目の講義では基礎的な論理的思考をまず身につけることからだと時間をかけて丁寧に説明を行いました。
職人をはじめとする現場実務者が創出する新たな価値とは、ズバリ、未来の売り上げ、利益です。私の持論として、モノづくりの担い手はもっと社会的地位を上げるべきであり、それは担い手自身の自助の精神なくしてあり得ない。即ち、圧倒的な評価と信頼を勝ち取り、付加価値を生み出す人材になることが必須だと考えています。未来の売り上げ、利益の創出とは唯一無二の評価の対象である現場での成果物のアウトプット、また、クライアントの意図を反映させるプロセスの両方を担保するしかありませんし、それが実現できるのは現場に携わる人しかあり得ないのです。

当たり前を積み重ねる論理思考

上述の私の持論は、極めて単純な論理的思考に基づいています。いわば、当たり前のことの積み重ねの上に、当たり前の成果を叩き出し、目指す成果を手にする思考であり、その思考にまっすぐに向き合って愚直に実行する素直さがあれば誰にでも再現可能なロジックです。
今回、開講にあたっての冒頭に三段論法を例にとって、倫理的思考についてのレクチャーを行いました。「A=Bかつ、B=CならばAとBの関係は?」との小学生でもわかる論理的思考を改めて見直し、これが機能していない現実に目を向けてもらいました。数十年の返済と、命を担保に入れて住宅ローンを組むクライアントの気持ちに立って考えると、完璧な理想の家が手に入って当たり前、少しでもかけるとクレームになってしまうのは当然にも関わらず、設計から計画、施工、アフターメンテナンスまでそのクライアントの想いに寄り添い、完璧を求めて日々の業務を行えているか?と問われたら、多くの建築事業に従事する人はそこまで深く考えること無く、日々のタスクに追われてしまっているように感じますし、そのように答える人が少なくないのが現実です。

在り方から始める

モノづくりの担い手の地位向上、生きがいを持って働ける環境づくりを実現するには、論理的思考と共に、何のために事業を、仕事を行っているのか?との問いを持つ、在り方をしっかりと見つめることと、意図を明確にもつことが非常に重要です。儲けるという字はは信じられる者と書くように、「商売は信用と信頼」と昔から言われるように、ビジネスは在り方から生み出されると思っています。
そして、ビジネスモデルを構築するのに最も重要とされる「信頼」とはぼんやりとした曖昧なものではなく、「誠実さ」「力量」「結果」そして「意図」の4つの核が備わって、想いとスキルが最小公約数的に重なった時に生み出されるもの。その中でも私は特に「意図」を重視しています。知識や経験を蓄積しなければ真の信頼は得られません。しかし、誠実な姿勢、仕事を通して誰かの幸せに貢献したい、周りに人に良くなってもらいたいとの想いは誰もが持つことができるし、できる範囲でそのアウトプットをすることで、技術的に未熟な者も信頼を得ることは可能です。

大工の意味のイノベーション

あり方を見つめ直し、目的を明確に定める。普段の生活の中ではなかなかないそんな機会を持つことこそが、研修に参加する意味や意義だと私は考えています。この時間を持ち、丁寧に考えを巡らすことによって生まれるのは、自らの仕事やその役割についての定義の見直しです。
今回の講義の中で若手の大工の塾生に「大工とはどのような役割を担っているのか?」との質問を投げかけました。返ってきたのは「図面に書かれた事を確実に現場で形にする」との答えでした。しかし、何のために現場で作業をするのか?とのあり方を見つめ直す問いを繰り返せば、決められたことを決められた通りに作るのが作業の目的ではなく、その先にある顧客の安心や安全、快適で豊かな暮らしの実現こそが、目指す先であり、そこに真摯に向き合えば図面に表現しきれていない、現場でこそ気づく修正点や改善提案を現場を深く知る職人が行うべきです。図面にすべてのディティールや収まりが書き込まれていない事を建築に携わる人は知っています。この観点が持てるようになると、大工は作業員ではなくなり、ものづくりの成果を左右するプロデューサー的な役割を担うようになります。大工の意味にイノベーションが起こり、今まで見出せなかった大きな付加価値を生み出すことができます。

知るから出来ているへ

私たちが研修の出口として定めているのは、塾生がそれぞれの事業所内で持続可能な循環型のビジネスモデルを構築する人材となることです。なかなかの高いハードルを設定しておりますが、持続可能性とは、結局、圧倒的な顧客の信頼を集めて、自社独自のマーケットやファンコミュニティーを構築することに他なりません。それは、目の前の顧客の満足を提供することからしか実現することができず、その評価は現場実務者にしか生み出すことは不可能です。
また、顧客満足とは期待値と結果との相対関係にあり、期待値の低いものほど達成することをたやすく、また満足を大きく超えて感動してもらえる可能性が高くなります。職人は決まった作業を行うだけの役割だと、世間一般では認識されています。そのような者が顧客の立場に立って物事を考え、図面をさらにブラッシュアップさせる提案を現場で行うことができれば、圧倒的な評価を得ることが可能であり、在り方、意図を見直すことでそれは誰にでもできるようになります。満足を大きく、飛び越して、感動を与え、一生あなたにお願いしたい。と言われる信頼を勝ち取って、未来の売り上げを作ることが可能なのです。
このようなロジック自体は、非常にシンプルで、誰にでも理解できる簡単さです。しかし、知っていることとできること、それが常にできている状態をキープするのは、いくつもの壁を乗り越える必要があります。半年間かけて習慣の力を使えるように、実践を送り返すことでその壁を乗り越えられる人材の育成こそ、私たちが目指す研修の成果です。

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職人の採用と育成の課題解決の提案、マイスター高等学院と職人、起業塾の説明会を東京でも行います。

経営者向けの無料の勉強会もやってます。

第21期職人起業塾、大阪開催の経営者向けオブザーバー参加募集してます。

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