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月はどっちに出ている? 〜マネジメントの真実〜

元大工で今も職人会社を経営している私は4つの法人の代表と4つの会社の顧問、5つの団体の役員を務めています。その全ての事業所で常に行い続けているのは問題解決と問題を根本的に無くする仕組み作りです。実は現在の私の仕事の殆どがそれだと言っても過言ではありません。
問題が発生する度に最善の対処を考え、迅速に対応しつつ、同じ問題が繰り返さない様に予防策を打ちます。善後策が機能すれば理論上、問題は根本解決するはず。なのですが、残念ながらそう簡単に片付いていかないのが人の世の常、時間の経過と共に決めたはずのルール仕組みも蔑ろにされたり、下手すれば忘れ去られたりします。残念。

人の心は変えられない

問題の根本解決を担うのは、結局のところ、ルール仕組みではなく人の心の中にある。長年、経営をしているとその真実に気がつきます。そして、同時に気付かされるのは人の心は変えられない。との事実です。
事業経営する立場の私にとって無力感を覚えるしかない現実に気づいた時、こりゃダメだ。と思いました。しかし、しょーがないと諦めて成り行き任せに放置する訳にもいかないと思い直し、忘れられないように、定着するまでリマインドを繰り返す努力をすることに決めました。自分自身が20年近くコーチングのセッションを受けていることもあり、リマインドの効果性を実感していたからです。

リマインドの効果性

リマインドを繰り返す具体的なアクションというと、会議をマメに行うこととコーチング的な1to1セッションを定期的に行うこと。結局、それが私が担っている実務になってしまいました。今も月に15回、各1〜2時間ほどそんな時間を持っています。
で、根本的問題解決に向かったか?と問い直してみるとその結果は非常に曖昧です。片付いて定着したものもあるし、そうでもないことも少なからずあり、まるでデジャヴを見ているかのように以前と同じ問題が持ち上がっては対処を繰り返すこともいまだにあります。残念。

無意識の無関心

リマインドをかけ続けて、定着→習慣(慣習)になるものとならざるものの間に何があるのか?その答えはやっぱり人の心にあり、会社や団体、コミュニティの中で、「こんな問題が起こるのは二度と嫌だよね、だったらこうしよう」と話し合い、決定したことに対する合意の深さというか、納得感のレベルによるところが大きいように思います。面倒なのは、大して得心していないにも関わらず、「分かりましたー」と調子のいい返事を殆どの人がしてしまうこと。嫌なら嫌、納得していないならそう言えば違う案を考えるなり、もっと実効的な対策を考えるのに、そこをスルーしてしまう、無関心なことに無意識、残念です。

心(感情)に人は支配される

さらに問題なのは、せっかく決めたことに対して薄っぺらいコミットしかしていなくて、ルールや慣習を実行しない人も会議の際にはそれを自身で自覚していない事です。「勝手に決めたらえーやん、オレは知らんけど」って、そんな意地悪なことを考えている人は殆どおらず、その場では一応、自分も対応しようと頭では考えていると思われます。しかし、心からそんな風に思っているわけではないので、行動がついてこなくなるのが実情だと思います。人は理論で動くのではなく、感情で動く動物であり、心に響か無い限り(悪気なく)スカッと忘れてしまうのだと思います。

経営者失格要件

まるで無間地獄かよ、と思ってしまいそうになりますが、これが事業経営の要諦であり、最もエネルギーをかけるべき、もしくはかけるしかない命題だという事だと近年になってやっと気がつきました。要は、人の心が何処にあるのか?との問いを常に持ち、表面的合意ではなく、深層まで理解されているかを測れる力を身につけ無ければ経営者としては失格だという事を知りました。若かりし頃、皆が納得していないのを薄々感じながら、パワーゲームで全てを推し進めていた頃を思い出して赤面してしまいます。未熟でした。

鍛錬するしかない

人の心を汲み取る力、言葉と裏腹に考えていることに気づく力、深く考えていないけど腹落ちしていない、自覚のない人の理解度を感じる力、これらが完全に身につけばヒーラーとかシャーマンも出来そうだと思えるほど高いハードルの困難なタスクですが、経営者に本当に必要な資質はこれではないかと思うのです。
難しいにも程がある、出来るかよ、と思いがちですが、これを鍛錬する場に足繁く通えば少しずつその超能力を習得する事ができる事に最近気が付きました。それは、マラソンランナーが空気の薄い高地でトレーニングするが如く、難しいコミュニティの運営に関わってみる事です。対価を払って集まっている訳ではない経営者が集う団体がそれにあたり、そこでの組織づくりは圧倒的な難しさです。これに取り組んで見れば少しずつかもですが、人の心の在処を感じられる様になります。

空前絶後の困難さ

基本的に人のいう事をきかない人ばかりが集まるのが経営の団体です。そこで単なる参加者で自由気儘に振る舞っているのは気持ちよくて楽チンですが、主体的に組織を作り動かそうとすると空前絶後の困難さです。慣れによる少しの気の緩み、これくらいはまいっか、との妥協、年齢も性別も事業規模もお家柄も関係なく誰もが本来対等なのを忘れて役職やキャリアを傘に着て上から見る、偉そうに振る舞う、こんな誰もがやってしまいそうなこと一つで一瞬にして組織は崩壊します。そもそも合意形成が難しいのに、合意を守らないのも経営者の特色。もはやキリマンジャロばりに空気が薄い高所トレーニングだと言ってしまっても過言ではないとさえ思ってしまいます。

月はどっちに出ている

しかし、人の心は何処にあるのか?との問いは絶対的な組織マネジメントの要諦です。事業やプロジェクトの経営を行うならば取り組ま無ければならない、避けて通れない道だと思うのです。
経営団体での組織運営は簡単には上手くいきません。それは社内や金銭の絡む実業でのプロジェクトでも基本的な構造は同じです。そんな茨の道を進むにあたり、どの様に心持ちをセットすれば良いか?どうすれば心を折らずに済むかについて私はずっと考えて来ました。その結論は満ち潮だと信じること。寄せては引くを繰り返し、水位は一向に変わらないように見える海は月が有れば満ちてくる。月が無ければ引いていく。それと同じ様に、誰もが美しいと思える月(例え見た目が欠けていようとも)が頭の上にあれば上手く行ったり行かなかったりを繰り返しながらも少しずつ満ちていくと信じるしかない様に思います。大事なのは月はどっちに出ているか、それを明確に示す事だと思うのです。頑張りましょう!

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経営者としての在り方を学ぶ場の提供を有償無償様々行なってます。

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