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不動産サバイバル時代の土地取得 #常識が違う世界

令和3年4月23日 晴れ

新型コロナの変異株の快進撃?は止まる事を知らない勢いで感染拡大が続いており、とうとう神戸も緊急事態宣言が発出することが決まりました。確か昨年は、コロナも風邪の一種なので春になり、暖かくなったら自然と感染は収まるだろうと楽観的な意見が多く囁かれていましたが、そうはならなかったのはウイルスが変異、進化を遂げたからなのでしょうか?とにかく、5月に予定していたイベントごとは一旦全て見直すことになりました。
今回の緊急事態宣言では人流を止めるのに主眼を置いた措置を講じると言われているようで、それは当然、「良い子は家の中に引きこもっていなさい。」となります。そんな影響でしょうか、昨年秋口から増え続けている新築工事の相談はまだまだ増加傾向にある様に感じています。それと同時に、不動産売買も活発になり、神戸でも地価は上がるし、売りに出た物件はすぐに売れてしまい過当競争になっている感が否めません。家を建てたくても土地が無ければ計画は進みません。今日はそんな不動産サバイバルの時代の様相を呈してきた昨今の土地探しについて書いて見たいと思います。

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業界の常識は世間の非常識

長年、建築畑に身をおく私は不動産の取引にも多く関わってきました。建築業界もかなり閉鎖的な特異な業界だと思っていますが、私から見れば不動産業界はもっと特殊というか、一般の常識では計れない業界だと思っています。ただ、これは私が不動産業を事業として取り組んでいないからそう感じるだけで、その世界に身を投じたらあっという間に馴染んでしまいそうな気もしています。実際、建築と不動産をワンストップで行われている事業所も多くありますが、どうしても不動産業界の特殊な常識に合わせる形になっているように見受けられます、情報商売と言われる横の繋がりが大事な業界なのでしょうがないですが。。別に、不動産業が悪いと言っているわけではなくて、業界内での常識が特異なだけだと認識はしていますが、とにかく、売買の取引仲介が終われば後は買主とは一切関係がなくなるのは事実としてあり、取引が成立することを最重要にして業務を行っているところがほとんどです。注文建築の土地取得を目指される方の目的が土地の取得ではなく、その後に自分達の理想とするライフスタイルを叶えることだと考えれば、目指す先に大きな齟齬が生じるのは否めませんし、その世界の常識に流されてしまうと目指していた先と違うゴールを迎えてしまう可能性があると思うのです。

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高額な買い物も即断即決

わかりやすい例を挙げると、土地取得を考えておられる人は、一緒に何度もない高額な買い物だけに、慎重に考えて判断したいと考えます。しかし、不動産会社の担当者は毎日の業務が土地の売買であり、殆どの会社では一月あたりの取引量の目標(ノルマ?)が設定されていたり、その取扱高によって給与にインセンティブが付加される仕組みになっています。とにかくチンタラ考えている暇はなく、常にさっさと取引に進みたいのです。なので、ウェブサイトで気になる土地を見つけて、アクセスすると、すぐに現地に案内してくれます。そしてその場で、気に入りましたか?と質問されて、気に入ったそぶりを見せると、「とりあえず物件を他の人に買われないように押さえておきますか?」と聞かれます。ちなみに、殆どの物件では他にも問い合わせが来ているので、押さえなければ売れると思ってください、と付け加えられます。じっくり考えたいと思う買主としてはとりあえず押さえてもらうのはタダの様だしと、お願いすると、翌日には連絡が入り、物件を押さえたら一週間くらいで契約するのが常識です。と、契約日の設定を迫られます。そこでもう少し待ってほしいというと、「では一旦、押さえている物件はリリースして他の問い合わせの人に案内します。」となり、それが嫌ならそのまま契約、手付金の支払い、後日、住宅ローンの審査を通して決済日の設定と、まるでエスカレーターに乗ってしまったかのようにとんとん拍子で物事が進んでいきます。これは決して不動産業者が悪いのではなく、あくまで業界の常識がそうなっているということです。何千万円という高額の買い物も躊躇することなく即断即決で決めるのが不動産の世界なのです。

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誰もが物件検索ができる時代のリスク

そんな前提条件をよく理解した上で、供給量が少なくなり物件取得を躊躇するうちにどんどん取引が成立して購入候補の物件がなくなっていく最近の情勢を鑑みて、土地の取得を考えてみたいと思います。現在、ウェブサイトの発達により不動産業者専門の情報サイト「レインズ」と一般の人が見れる不動産サイトに登録されている物件の数はほぼ同数になっています。それどころか、レインズに登録する前の段階で一般のサイトに物件が公開されることが多くなり、新しい物件を探すにはレインズよりもSUUMOやアットホームなどのサイトの方が適している状況になっています。物件情報自体は、不動産業を営んでなくても誰にでも気軽に入手できる状況になりました。これは非常にいい事だと思っていますが、その背景には「囲い込み」と言われる不動産業者が売り手と買い手の両方の仲介をしたいとの思惑があり、国交相や不動産協会が推奨している買主の双方に代理人である仲介者が入る公平な取引にならない可能性もあります。特に気をつけたいのは、物件価格を低めに設定してある建築条件付き物件を建築条件無しとして一般の不動産サイトに公開していることが増えており、ウェブサイトから気軽に個人情報を入力して問い合わせをした後に、実は建築条件付きだと明かされる案件が増えていることです。普通に考えれば、そんな騙し手口に引っ掛かり、土地の利益を上乗せされた建売仕様の住宅を購入する人などいないように思いそうですが、実際に土地を見に行って気に入ってしまうと、そのまま建物を含めて契約をしてしまったりする人も少なくないのが現状の様で、これでは嘘の物件情報を公開した業者の思う壺です。

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バックキャストのアプローチ

上述の様なことにならない為には、不動産業法で定められている通り、買主側にも宅地取引の仲介者を立てて、アプローチするのが定石です。買主の立場に立って考えてくれる不動産会社も希少ではありますが、いない訳では無いので信頼できる仲介担当者を見つけることをお勧めしています。とはいえ、冒頭に書いたように不動産の世界はそもそも一般ユーザーとは常識が違います。その枠組みの中にいるからこそ、生業が成立していることを考えると、買主の価値観を理解して代理人になってくれる人を見つけるのは簡単ではありません。そこで、もう少しそのハードルを下げる方法が、土地を探す前に建物の計画を進めてみることです。建築会社で建物の計画を相談して、理想の住まいを手に入れる為の家づくりのサポートを依頼すれば、結構な割合で土地探しを手伝ってくれますし、建築会社で不動産取引の免許を取得している会社も少なくありません。家を建てる為の土地を探すなら、どんな家を建てるのかを先に明確にして、土地の購入価格と合わせて資金計画を組む方が間違いなく理想の暮らしを手に入れるには近道だと思いますし、バックキャスト(逆算)のアプローチの方が失敗も少なくなります。注文住宅で家を建てる場合にまず先行して建築会社の選定をすべきだと言われる所以です。
ちなみに、建築会社、もしくはその提携の不動産会社から問い合わせをすれば、物件の詳細情報も手に入りますし、現地を見に行くことも出来ます。ウェブサイトに掲載されてある物件情報は買主から直接問い合わせをもらう意図を汲んで地図は掲載していても細かな住所や所在地を明らかにしていないことが多いですが、建築業者を代理に立てて問い合わせるとすぐに正確な資料を手に入れることが出来ます。この手順を踏むと、買主側の仲介代理人を建てることになりますし、上述のようなリスクも回避することができます。

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違う世界との取引の難しさ。

土地の取引は高額な買い物だけに慎重に、できるだけリスクを避けて行われるに越したことはありません。なんでもウェブで検索出来て、情報を取得できるようになった現代は非常に便利にはなりましたが、その分思わぬ落とし穴があったりします。高額な取引なのですから、インターネットで取得した情報に対して脊髄反射的に反応するのではなく、信頼のおける代理人、仲介者を通してアプローチするべきだと、ここまで国交相も推奨している売主、買主双方に仲介者を立てる方法論を書いてきましたが、そのまま正論が通らないのが特殊と言われる不動産業界です。非常に残念なことですが、真っ当な手順で進めようとしたら、気に入った物件を手に入れることが出来ないという事例は日常茶飯事で、その元凶がいわゆる両手商売をするための抱え込み体質です。ちなみに、現在、リノベーションの相談を受けた物件の情報を売主側の仲介の専任契約をされている大手不動産会社に問い合わせている案件では、物件をウェブサイトにもレインズにも公開しているにもかかわらず、担当者不在と電話を切ったまま、数日間全く音沙汰がありません。多分、今頃、両手商売をしようと買い手との折衝をしているのでしょうが、このパターンは催促の電話がつながった時にはその物件は契約されました、と断られるのだと思います。その大手不動産チェーンではそのような抱え込みが常態化しており、あまりの酷さに協会に訴えて出ても、協会の役員が「抱え込みなど多すぎてクレームにもならん」と一蹴されてしまいます。この様な場合、どうしても物件を取得したい場合は買主に直接売主側の仲介担当者に問い合わせてもらい、両手商売になる条件で話を進めるしかないのですが、義理も人情もなく、自分の利益を最優先している様なところに直接どうぞ、と言うのも正直躊躇います。常識が違う世界とのやりとりは簡単ではないのです。。これから土地購入をお考えの皆様はくれぐれもお気をつけてください。

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