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2つの課題を解決する新しい職人養成学校の胎動④ 〜職人になりたい若者がいない問題〜

このnoteでは今や建築業界だけでなく日本のインフラの安全保証や産業全体の喫緊かつ重大な問題になっている職人不足と、近年社会問題化している学生の不登校、学歴マイノリティーの増加の両方の課題の解決を目指す新しい職人高等教育学校創設のプロジェクトについての構想と進捗を公開すると共に、広くご意見を募る場として設定しています。ご意見、ご感想頂ければ嬉しいです。これまでの記事はこちら、

職人がいなくなった理由

現在すでに問題が顕在化し始めており、あと10年以内に誰も想像しなかったような、日本の産業全体に深刻な影を落とす重大な問題になると言われている建設現場の職人不足問題。その表面的な原因は非常にシンプルで、この30年間、建築現場で働く職人などまっぴら御免だと若者にそっぽ向かれたからに他なりません。確かに建築現場はきつい、汚い、危険の3K職種で、子供たちが将来なりたい職種の第1位がYouTuberになった今の時代にはやらないと言うのはもちろんありますが、30年ほど前までは一定数の若者がこの業界に入職してきていました。それが急激に減少したのは経済成長が止まりデフレスパイラルに陥った日本で職人の単価が下がり続け夢のない職業になった事が大きな原因です。

情報社会への移行と業態の変化

もう一つは情報化社会への大きな変化の中で受注の仕組みが大きく変わったことが挙げられます。インターネットが普及してその傾向は急激に加速しましたが、それ以前から、家を建てたい、改装したいとのニーズを持っているエンドユーザーへのアプローチに宣伝広告が有効であることが認知され、それまでは工事が得意で上手な事業所に仕事が集まっていたのが、宣伝広告が上手でそこに資金を投入する(できる)事業者に注目する様にユーザーの志向が変わったことが挙げられます。新築業界ではハウスメーカーが集まって実際の家が体験できる住宅展示場が全国に作られ、同時にテレビやラジオといったマスメディアを利用した認知拡大が図られました。その影響を受けて注文建築で家を建てるにはまず住宅展示場に行って情報収集するのがスタンダードになりました。リフォームの業界では地域ごとに新聞折り込みのチラシでわかりやすく価格を明示するとともに、サービス業のようなとっつきやすい雰囲気を醸し出したリフォーム業者が新たな市場を作る勢いで全国で急拡大しました。この変化により地域に根ざした工事会社にエンドユーザーが直接工事を依頼する事はなくなり、販売・営業の会社を仲介して工事を注文するのが通常の流れになってしまい、実際に工事を行う事業者や職人は下請けの業者に成り下がってしまいました。

京阪神若手大工育成塾

稼ぎも保証も夢もない職業

以上の流れから建築業界は以前の近所の大工さんや畳屋さんにお願いする顔見知り同士での牧歌的な業態から、宣伝広告やプロモーションを繰り返し、新規顧客を奪い合う弱肉強食の厳しい業態に移り変わり、工事ができるものではなく、集客を得意とする、営業力がある事業者がイニシアチブを取るようになりました。ハウスメーカーの工事発注の方式が工事施工会社である工務店への一括発注から職人単位への分離発注方式に移行したのもこの頃です。職人は日当を稼ぐ程度しか稼ぎを手にすることができなくなり、またその単価も不景気の煽りでどんどん下がってしまいました。私が大工見習いとして職人の世界に飛び込んだ頃は、まだ大工の稼ぎは悪くなく、仕事はキツいし、修行の期間もあるが一般的なサラリーマンよりも稼げる職種だったのですが、上述した様な社会の変化の結果、1人前の大工になっても保険や経費などを差し引いた実質年収が400万円程度になってしまい、職人は自分の子供には絶対に職人になってもらいたくないと思うようになりました。職人は稼ぎも少なく、保証もなく、未来もない夢の無い職業になってしまったのです。

大工育成に取り組む手刻み工務店

豊かに安心して夢がある職業への転換

しかし、モノづくりに従事するのはとても価値のあることであるのに今も昔も変わりはありません。職人がいなくなれば、建物は建たなくなるし、生活のインフラの保全もままなりません。いつ起こるかも分からない、自然災害や戦争被害からの復旧、復興も叶いません。ましてや世界有数の地震大国である日本では災害に備えることも非常に重要な安全保障の要件です。そして、子供たちが木工教室で嬉しそうに工作に励むのを見てもわかる様に、モノを作るのは単純に楽しいです。それが建物となって地図に残る仕事なら尚更で、夏は暑く、冬は寒いなど厳しい部分はありますが、毎日現場に出て汗を流すのは本質的に良いものです。後は、安心して働ける環境と、豊かに暮らせる所得、年齢を重ねて身体的なパフォーマンスが落ちた後に現場で働く以外の次のキャリアが見出せれば、職人は魅力的な職業だと若者の目にも映るようになると考えています。

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四方良しの職人育成事業

私が創設を目指している新しい職人高等教育学校で、上述した職人に対して「正規雇用」「平均よりも高い生涯所得」「キャリアプラン」を担保できる全国の工事事業者さんと一緒に職人育成に取り組めば、若者の職人に対する認識も変わっていくのではないかと思っています。データーが示す通り、今後圧倒的な職人不足が加速すると、工事を行える事業所しか売り上げを上げることは出来なくなります。職人の価値が見直される時代はすぐそこまで来ており、職人育成の必要性と価値が再認識されつつあります。そのニーズに応える為にも、技術だけでは無い社会的基礎能力やコミュニケーション、また明確な目的意識を持って志を掲げる教育を職人育成のカリキュラムに組み込んだ新しい学校の教育が必要であり、これまで実際に職人の意識改革と働き方(役割と責任)を刷新しながら現場人材に対する教育と彼らの活躍を集客に活かして宣伝広告に頼らないビジネスモデルを構築してきた私たちの知見が多くの若者、そして彼らを受け入れる事業者にも役に立つと考えています。若者と建築事業者、私たち、そして日本全体のインフラ保全とリスク回避を叶える四方良しのスキームを目指しています。現在、まだ事業構想を進めている段階ですが、全国で一緒に、本質的な職人育成に取り組む仲間を募っています。少しでもご興味があれば、ご連絡頂ければ幸いです。

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