志とタレンティズムとIkigai
一般社団法人職人起業塾が主催する半年間の建築技術者向けの業務改善研修が昨日大阪でスタートしました。今回の開講は第19期目となり、塾生は全員、卒塾した先輩が在籍する事業所の社員さんばかりで、研修を受講した先輩たちの変化や、研修終了後の大きな活躍を目の当たりにしていることもあり、非常に前のめりな積極的な姿勢で開講に臨まれていました。この研修をスタートさせた7年前の受講生は経営者から「とにかく研修に行ってこい!」と詳しい説明もないまま放り込まれる形で、疑心暗鬼とまでは言いませんが、受け身での受講者が多かったことを考えれば、長年継続してきたことで、私達の提供してきた価値が徐々に蓄積されてきたのだと感じられるとても素晴らしいスタートを切ることができました。
不易流行
研修を行う際に、受講者が聴く体制を作るところから始めるのと、それが既に整った状態でスタートするのでは雲泥の差があり講座の進め方だけではなく伝わり方も全く違います。塾生の理解度も深まるのは当然で、講座終了後に回収したワークシートの回答を見て、私の伝えたかった想いがしっかりと伝わっていることを確認できました。最高のスタートを切れた第19期生の半年後の成長が本当に楽しみです。非常に良い雰囲気の講座になってきたのは受講生の質が変わってきただけではなく、研修の内容を繰り返し見直し、ブラッシュアップしてきた効果も少なからずあると思っています。オブザーバーとして参加していた第8期生の卒塾生で現在は代表取締役に就任している浮村社長もイントロダクションがずいぶんと変わっている。と感想を述べられておりましたが、本質的な部分は変えてはいませんが、当時行っていなかったストロータワーチャレンジのワークや研修の位置付けを示す概念も時代の変遷に合わせた内容に変えたりと様々な工夫を凝らしています。
タレンティズムの時代
開講の際に全体像を示す目的と概観の説明で最も大きく変わっているのは、冒頭に行うようになったタレンティズムとIkigaiの概念の説明です。VUCAと呼ばれる不安定、先行き不透明、複雑、曖昧な世界に変わり、あらゆる価値観が逆転した今、事業モデルも建築業の世界では今も圧倒的に多いトップダウン型のピラミッド形式ではなく、ボトムアップ型の自律分散型組織への変革を求められています。そこで必要になるのがすべての人材の持つ潜在的な才能を開花させ、組織全体のパフォーマンスを上げる組織開発と意識変革です。世界トップの有識者が集まるダボス会議でもグレートリセットと同じレイヤーでタレンティズム(才能主義)への移行が取り沙汰され議論されたことで広く世界に認知を広げました。建築業界に置き換えれば、顧客の体験を作る現場実務者こそ、タレント性を発揮するべき存在で、その能力開発こそ私たちが職人起業塾で創業時から取り組んでいる研修そのものです。塾生には時代背景やビジネスモデルの組み立て方の概要とともに、君たちが主役の時代が来たのだと熱く伝えるようにしています。
Ikigaiの創造
タレンティズム(才能主義)の概念を現場の最前線で働く実務者館に落とし込んでいくと、その先に見えてくるのはこれから世界で注目され、スタンダードな単語として使われると言われているIkigaiの創造です。「生き甲斐」は日本では一般的によく使われている単語ではありますが、世界にはその概念があまりないと言います。ぼんやりしたイメージとなりがちなIkigaiを小割りにして紐解くと4つのファクターによって構成されるとされています。その4つとは、①好きであること、②得意であること、③稼げること、④求められていること。この4つが重なる仕事に従事すると、人は生きがいを感じることができるとされています。
志とタレンティズムとIkigaiが世界を変える
成人してから65歳位まで、人生の1番良い時の時間を大量に投入する仕事が生きがいを感じられるものになるに越した事はありません。なかなか4つすべてのファクターが揃う事は難しいですが、複数の重なりでもそれぞれ意味と意義があり、一足飛びに生きがいを生み出さなくても、ステップを踏んで少しずつ生きがいを感じられる人生に移行することが可能です。例えば、好きで得意なものには情熱を傾けられるし、得意で稼げる事はプロフェッショナルとして認められます。好きで世の中から求められているものは使命となりますし、ニーズがあって稼げる事はビジネスとして成り立ちます。しかし、それらの状態ではどこか物足らなさや虚しさを感じるのが人間の本質であり、その仕事が好きで、才能があり、社会的なニーズもあって、稼げる仕事を求めるというのがIkigaiの概念であり、その4つのファクターを意識しながらキャリアを積んで行ってもらいたいとの説明を講座の冒頭でしています。まずは目的を明確にし、志を立てること、潜在的な能力に気づき才能を開花すること、そして、生きがいを求めて自らの役割を広げ、再設定すること。この3つが職人起業塾の研修での中心であり、タレンティズムの本質であり、持続可能なビジネスモデル構築の礎になると考えています。若者たちが生き生きと働き、子供たちに憧れられるような職種になるように地道な活動を続けていきます。
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