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志の具現

今年6月に行われた経営実践研究会の最大のイベント、ナショナルフォーラム2022で登壇の機会を頂き、建築業界と教育業界の課題をぶつけて新たな価値を生み出したい。と職人育成の高等学校設立構想のプレゼンテーションをさせてもらいました。それから約半年、今年最後の大きなイベント、ソーシャルカンパニーフォーラムin福岡で再び登壇の機会をいただき、その志を具現化する道を見出したと熱く語らせてもらいました。多くの人から賛同いただいたこともあり、改めてここでもその趣旨を書いておきたいと思います。

目的とは志の実現

最も多く日本人が読んだ書籍「学問のすすめ」の中で福沢諭吉先生はこのように書かれています。

「額に汗して一生懸命働いて、家族を養い、家を守り、将来のために蓄えを残す。そんなことで満足してはいかん。その程度の事はありんこでもやっている。万物の霊長たる人間に生まれたならば、目的を果たせればならぬ。」

意訳:高橋剛志

その目的とは何か? 20数年前に大工道具と軽トラックだけで起業した私がずっと抱き続けた問いです。そして、志を具現化することこそ、その問いの答えだと考えるに至りました。私の志は、「誰もが生きがいを持って生きられる世界の実現」であり、学歴社会からこぼれ落ちた若者に志と技能を学ぶ教育インフラを構築し、自信と誇り、生きがいを持って生きられる社会にする事です。この志が私が行う事業の全ての根源になっています。

原風景

このような志を持つに至った私の原風景とは、少年時代に世間様に迷惑をかけ続けた悪行三昧のどうしようもない暮らしであり、自分の存在自体を社会のクズだと認める自己の存在否定です。そんな私が大工として建築業界に拾われたことから学歴に関係なく活躍できる場が存在し、こんな自分でも人の役に立てる、人に喜んでもらえるのだと気づいたことに始まります。たとえ学校に馴染めなくても、テストで良い成績が修められなくても、ものづくりの世界では誰もが持つ才能、良知と呼ばれる善き心をそのまま行動に移す習慣を持つだけでそれを開花して、信頼を集め、豊かに生きがいを持って働けることを知りました。

単なるマスターベーション

自分は建築の世界に入ることで真人間に生まれ変わることができました。そして次に考えたのは自分だけが良ければそれでいいわけじゃないと言うことです。20年以上にわたり職人の正規雇用、技術面だけではない志や目的を明確に持たせる教育を行ってきました。7年前からは一般社団法人職人起業塾を立ち上げて全国の職人、職人を雇用する事業所のサポートを行ってきました。全国各地を駆けずり回り、これまで200人以上の卒塾生を輩出し、職人が生きがいを持てる業界へと変革を試みてきました。コロナの蔓延で研修事業が行えなくなった機会にふと振り返ってみると、建築業界全体では1ミリたりとも変わっていませんでした。私が行ってきた事は業界の改革どころか単なるマスターベーションに他ならないと気づいたのです。

一人で出来る事は高が知れている

そんな無力感に苛まされている際に経営実践研究会にご縁をいただき、社会課題解決型モデルの事業を力強く推し進める数多くの経営者に出会うことができました。そこで気づかされたのは1人の力はたかが知れているが、共感でつながり、志を同じくする同士が集まれば世界を変える可能性を見出せる。志の具現は多くの同志を募ることによってできる可能性があるとの事でした。そこで思いついたのが私が長年行ってきた志の教育を公開し、全国の事業所単体で職人育成が出来るようにする職人育成に特化した通信制高校の設立です。

SECIモデルの螺旋的成長

本業で社会課題を解決する。そんな高い志を持った経営者ばかりが集まる経営実践研究会のメンバーに向けて私の志をぶつけることで、多くの方から賛同をいただき、教育業界を牽引してきた方々から応援をいただけるようになりました。現在、10社以上の事業者と共に一般社団法人マイスター育成協会の法人立ち上げを行っており、来春には全国で初めてとなる職人育成に特化した高等学校を開講します。私1人では到底成し遂げることができなかった、建築業界のスタンダードを変革する試みが確実に前に進んでいます。志の具現は内に秘めた強い想い(暗黙知)を言葉にして表出し、共感してくれる人を集めて連結し、そこに集ったそれぞれがスキーム(形式知)を組み立てて実践に踏み込み再び暗黙知を形成する、このSECIモデルのプロセスを繰り返し、螺旋状に成長することで実現する可能性が高まることを知らされました。

一期一会の心

人とのご縁は人生の宝と言われます。私自身、これまでの人生の転機には必ず人との出会いがありました。そんな運命的な出会いも自ら積極的に掴みにいかなければきっと目の前を通り過ぎてしまいます。もしくは、この一瞬の出会いが人生を大きく変える可能性があると常に思って人と接する慣習を身につけている必要があると思うのです。志の具現も結局、茶の湯の世界で中心的な概念として扱われる「一期一会」とのコミュニケーションの在り方に集約されると最近特に感じさせられています。私一人の力は微弱に過ぎますが、共に人間としての目的を果たそうと言ってくれる同志がいる事で志を具現化することができるかも知れません。そんな人達とのご縁に心から感謝するばかりです。ありがとうございます。

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魂の共鳴がここにはあります。

来週は枚方で登壇します!


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