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職業選択の自由を忘れてないか? 〜若手職人離職問題〜

新型コロナの蔓延が始まって以降、企業や団体からの講演依頼がめっきり減りました。私は別段、講演家ではないので別に構いませんが、建築会社の協力業者総会や建設関連団体での集まりに呼ばれるたびに、「現場価値とそれを生み出す現場実務者、その育成こそが我々の事業の本質だ!」と職人さん相手に熱く語る機会が減ったのは少し寂しく感じています。ところが、新規感染者数が最高を記録し続けているここ最近になって、やたら講演等の問い合わせが増えてきました。皆さん対外的な活動が制限される中、考えるところがいろいろあるのかもしれません。

若手大工の離職が止まらない

本日も全国で大工育成を行っている、とある財団法人の運営の方々から問い合わせを受けてオンラインでのミーティングを行いました。はじめに、私にお声掛けをいただくことになった経緯について説明していただくと、伝統工法の継承を目指して若手大工の育成のサポートをしているが、参加されている工務店の経営者から「大工見習いの離職率が高いまま、若者たちのモチベーションも上がらない、コミニケーションをどうとっていいかさえわからなくなってきた。」との声が多く聞かれることから、何か良いコンテンツを提供してくれる先がないかと探していて、私の古くからの知り合いの団体役員に「社長さんと若い大工さん向けに大工としての誇りや心構えを説くような講師がいないか?」と相談されたらしく私に声がかかったとの事でした。

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職業選択の自由を忘れるな

それらの課題は、私が自社(株式会社四方継)で長年取り組んできて、一般社団法人職人起業塾では全国の研修事業への参画企業に広く啓蒙活動を行っている「ど真ん中」で、課題解決のために行うべきは、まず初めに労働法規遵守の人事制度整備と運用、職人の将来にわたるキャリアプランの構築、そして技術以外の志や目的意識、そして価値を生み出す理論の教育です。私が強い口調でその財団の方々に問うたのは、若者のモチベーションが上がらず、離職が止まらないと嘆かれる工務店は、大工を正規雇用しているのか?キャリアプランを作って提示しているのか?法令遵守の運営をしているのか?の3点でした。
我々建築業界の経営者が絶対に忘れてはならないのは、若者には「職業選択の自由」があるということです。建築業界で長年の慣習になってしまっている職人を外注扱いにする、社会保険に加入しない、技術以外の教育を一切しない、年老いた先のことを考えない。といった悪習を当たり前に受け入れてしまっているままでは、若者は当然、異業種に逃げていってしまいます。若手の離職を嘆く前に、まずそこの意識改革が何よりも重要だと思うのです。

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分かっているけど出来ない現実。

30分以上にもわたって私が熱く語るのをじっと聞いてくださった財団の方々の反応はと言うと、斬新で新しい概念に触れた。と言う感じではなく、そんな事はとうに分かっている、しかしできていないのが現実だ。という風情でした。当たり前すぎるくらい当たり前のことを熱を込めて語る私も若干の照れくささがありますが、残念ながらそれを声を大にして語らなければならないのが建築業界の現状です。知っていると、できているの間にはいくつかの高い壁があり、その壁を乗り越えて課題を解決するには壁を超える方法論を具体的に指し示し、伝える必要があります。それが進まない理由は団体の運営をされる方や、研修やセミナーの講師が実業を行っていないからだと私は思っています。いくら正しいことを伝えても「原則論なんか分かってる、でも実際には色んな障壁があって大変なんや、出来るんやったらお前が実際にやってみろよ」と聴き手が思った時点で何を言っても意味を成しません。

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現場に全ての答えがある。

私が、一般社団法人職人起業塾で開催する経営者向けのワークショップで伝える事は非常にシンプルです。ものづくりの業界では現場で出来上がったものにしか顧客の評価は得られない、それは経営者ではなく、現場で実務を担う実務者にしか担えない、精魂込めて顧客に感謝されるレベルのものづくりを行うには、何のために現場で作業するのか?との目的意識を明確に持つ必要がある。そのためには今だけ、金だけ、自分だけ思考に陥らないように安心して働ける安定した労働環境を整える必要があり、技術だけではない人間性にアプローチする教育が必要だ。これらの状態を整えて顧客から圧倒的な信頼を得られるようになれば、信頼関係に基づいた質の高い集客が循環するようになり、適正利益を確保しつつ職人の育成が出来る持続可能なビジネスモデルを構築することができる。と、結局当たり前のことの積み重ねだけです。

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実践こそが強み

私がセミナー講師やコンサルタントの先生方と違うのは、上述の当たり前だけど、実現するのは簡単じゃない理論を実際に20年間にわたって実業で実践し、10年以上宣伝広告を一切行わずに事業を継続し、完全適法の人事制度、賃金規定、キャリアプランを運用して職人育成を行い続けている所です。私のような中学校もろくに通っていない、中卒の大工上がりの工務店経営者でも、当たり前のことを1つずつ積み重ねれば、後めたい気持ちになる事なく胸を張って、陽の当たる場所で工務店の経営ができることを示すことで、多くの方に勇気と前向きなモチベーションを与えることができるのではないかと思っています。新型コロナの感染拡大で集合研修的な集まりは当分難しいとは思いますが、そんな私の当たり前の話でよければどこにでも足を運びますので、ご興味を持っていただいた方にはお気軽にお声掛けいただければと思います。現場価値、職人の価値について熱く語りますよ!

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職員採用、育成、人事制度改革、キャリアプランの構築、助成金の活用等々あらゆる課題にワンストップでお答えしています。


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