食べものとクスリは同じ穴のムジナか
食育総研がブレインフードを広めようと以前からやっきになっているのは、皆さんもお気づきと思いますが、今回はそのブレインフードの話。
食薬区分
「薬食同源」という言葉があります。
もともとは漢方の言葉で
「食べることには、薬を飲むことと同様に健康を左右する力がある」
といった意味。
なのですが、
「食べものと薬は、区別するのが難しい」
という意味に使われることもあります。
おおざっぱにいえば、
食べもの:
食事として口にするもの
短期的に目立つ効能効果はあまりない
そのかわり副作用も少ない
薬:
食事として口にするものではない
効能効果が分かりやすい
多くは副作用がある
といった違いがあるとは思います。
しかしそれでも、正確な線引きをするのは容易ではありません。
境目のところの区分けが難しいのです。
正確な線引きをするのは難しいながらも、薬と食べものをあえて区別する必要が人間社会にはありました。
なので法整備の整った国であればどこでも、薬と食べものは区別されています。
日本ではこれを「食薬区分」といいます。
「食薬区分」はあくまで人工的な線引きです。
「薬か食べものか」という区別は、人間が考えたものであり、自然界にはもともとそんな区別はありません。
実際、薬と食べものの中間みたいなものが世の中にはいろいろありますし、新たに作られてもいます。
そこを区別するため、
トクホ(特定保健用食品)
機能性表示食品
の制度ができているのですが、ややこしさが解消された気はしませんね。
スマートドラッグ
似たような話に
「スマートドラッグとブレインフードはどう違うのか」
というものもあります。
「スマートドラッグ」とは、知力・集中力・記憶力を高めるとされる薬品や物質の総称。
「ヌートロピック」とも呼ばれます。
雑ないいかたをすれば、
「飲んだらすぐに頭が冴えるクスリ」
といったイメージです。
それを飲んで試験を受けると、点数がよくなる。
ドーピングみたいなもの。
スマートドラッグには、サプリメントから処方薬までさまざまな種類があります。
サプリメントでいえば
ビタミンB群や葉酸などのビタミン類
オメガ3脂肪酸などの機能性成分
など私たちにもなじみのあるもののほか、精神科で処方してもらうようなものも数多くあります。
なかには法的に微妙なものもあります。
数年前の話ですが、
「アメリカの学生の約2割が、試験でよい点を取るために病院でスマートドラッグを処方してもらい、乱用している」
という報告がありました。
現在は、スマートドラッグの乱用を規制するルールができつつあります。
そのうち、
よーし、では今から数学の試験を始めるぞ。その前におまえらみんな、尿検査を受けろよ。
みたいな時代になる可能性もあります。
ブレインフード
ではブレインフードはどうでしょうか。
あ、そもそもブレインフードって何?という人はこちらを先にお読みください。
話を戻すと、一般的な食べものの中にも、スマートドラッグ的な成分を含み、知力・集中力・記憶力を高める働きが期待できるものは少なくありません。
もともと、そうした食べものをブレインフードと呼んでいます。
ブレインフードとして昔から有名なのは、魚、ナッツ、チョコレートですが、ほかにもいろいろあります。
いずれにせよ、成分的にはスマートドラッグと共通する部分があります。
そういう意味では、
スマートドラッグ
ブレインフード
両者の区別はあいまいです。
境目のところの区分けが難しいのです。
スマートドラッグには「劇的な効果」「薬物」「副作用」というイメージがある。
ブレインフードには「日常の食事」「平和」「ゆっくり、弱く、長く効く」みたいなイメージがある。
といった大雑把な違いはありますが、その境目を厳密に定義することはかなり難しいでしょう。
スマートドラッグは成分を抽出して濃くしたものを粉末や液体にしています。
つまり「薬」的な形状です。
これに対し、ブレインフードはあくまで「食べものの見た目」をしています(食べものですから)。
なので、両者の形状がそもそも違う、ということは言えるかもしれません。
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