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包丁屋の料理よもやま

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包丁の事、料理の事を元料理人の包丁屋の店主が綴ります。 便利なチョイ技、得する小ネタを織り交ぜながら、きまぐれにお伝えします。 どうかお付き合いの程を、お願い致します。
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#包丁技

包丁のキレ(サラダ編)

私は実はサラダがあまり好きではありません・・と、カミングアウトしますが、サラダを仕立てるポイントとして大切にしているのが、「包丁のキレ」です。 これは漬物やサラダ、果物に・・・そしてもちろん、刺身にも共通する概念です。 食材と言う物は、金っ気の刃を入れれば入れるほど味わいが落ちると言う考え方があります。 刺身に関しては疑問は残りますが、胡瓜の漬物や葉物のサラダ、果物のリンゴやナシ、モモ等・・・包丁を入れずに丸のまま、かぶりつくのが最も美味だと言う認識が料理人の中にも

蕗の早煮

早煮とは? 聞き慣れない言葉かとは思いますが、和食の世界では意外と、ポピュラーな名称です。 じっくりと煮含めて煮汁と素材内部の水分を同化させる、そういった煮物が含め煮だとすれば、早煮は対局です。 素材自体の味わいと、周囲に絡む煮汁の味わいとのバランスで成り立っている煮物で、読んで字のごとく仕上がりの早い煮物です。 例えば「アラ煮」も早煮の一種です。 中は真っ白な身で、周囲に濃厚な煮汁が絡む事によってバランスが取れて料理として完成します。 また、青菜を淡口醤油の出汁

山独活の味噌漬け

意外と身近な所で見かける山菜、野山に自生する山独活(やまうど)を使った漬物を紹介します。 「山独活の味噌漬け」です。 長期保存が利きますが、手法としては実に簡単な漬物です。 ただし、本漬け・熟成まで進むとかなり塩分の高い漬物ですから茶漬けのお供や、刻んで、ご飯に混ぜておにぎりにするなど、古漬けの感覚でお楽しみ頂く漬物です。 途中段階の浅漬けで召し上がるのも趣があって良いものです、漬けてしまえば楽しみ方は自分流でけっこう、自由にお楽しみください。 さて、山独活は2~3

筍の木の芽焼

醤油の焦げる匂い、山椒の芳香が実に食欲を誘う、春らしい一品です。 筍の木の芽焼、ぜひぜひ、楽しんで頂きたい一品です。 今回は「筍の木の芽焼」についてお伝えいたします。 まずは筍ですが、生の物を茹でて使います。 もちろん茹でた筍を買ってきて、仕立てても問題ありません。 むしろ産地で取りたての状態から、間を置かずに茹でた水煮は非常に品質の高いものがあります。 中国産の生の筍だったら、国産の水煮筍の方が数段優れているでしょう。 さて生の筍は、まずは束子でざっと泥を落と

白身魚の冷やし汁

この一品は、鱧(ハモ)を使って仕立てたら最高の一品となりますが、一般的に手に入る刺身用の白身魚、鯛や平目、鱸(すずき)で仕立ててみましょう。 夏の暑い夜、こんな一品で晩酌を始めたら、さらに酒が旨くなる、そんな一品です。 刺身用の白身魚は、養殖の鯛が扱いやすいですね。 刺身用のサクを買ってきたら皮目を下にして、身の方から皮に達するくらいの切込みを入れます。 鱧の骨切、あの感覚です。 切り離さない様に皮1枚を残しつつ、身側から1~2mm間隔で包丁を入れる。 鱧を使う時

魚の使い方

本日は魚の使い方のお話です。 一尾の魚をいかに使いきるか、それも無駄なく適材適所に振り分けながら使い切る事を楽しめるかというノウハウをお伝えいたします。 1尾の魚、廃棄率で言えば45%位が一般的な認識です。 その廃棄率を下げるのが良い料理人の仕事・・・と言うのが私の仕事を覚えてきた頃からの教えであります。 使える部位を無駄なく使う。 そんな事を日々心掛けながら魚を扱ってきました。 まずは鱗(うろこ)を落として、内臓と鰓(えら)を抜いて水洗い。 三枚に卸して腹骨を

包丁のお話 (包丁を研ぐ)

包丁を研ぐにあたって、慣れない人が陥るのは刃先だけを砥石に当ててしまい、研ぎしろが崩れピタッとあてた時に刃先が砥石に当たらなくなる研ぎ方です。 平面では無く、研いだ面が弧になるので丸っ刃と呼びます。 この研ぎ方をすると、研いだ瞬間は刃がつき、いかにも切れる感覚を感じますが、すぐに刃が落ちて切れなくなる。 そして、また刃をつけようとすると刃先だけを研がなくてはいけないので、より丸っ刃が進む。 悪循環に陥り、最後には研いでも研いでも切れない包丁になる。 包丁を研ぐと言う

タラの芽のお話

知名度でしょうか、それとも日本人が好む素材なのでしょうか? いずれにしても、タラの芽天ぷらのご注文数は、他の山菜料理、季節料理に比べてもダントツです。 ではタラの芽とは? 落葉低木、ウコギ科タラノキ属のタラノキの新芽です。 日本全土の山野に群生していて、葉や茎には鋭いトゲがあるのが特徴。 葉が開く前の10㎝に満たない新芽を摘み取って食用とします。 その歴史は、非常に古く・・奈良時代から高級品として扱われてきました。 植物性油脂とタンパク質を豊富に含

包丁使いの視点

今日は包丁を使うときの視点のお話です。 きちんと物を見るって、ちょっとしたコツが必要です。 知り合いのビリヤードの先生、習って非常に納得した物の見方です。 正確な位置を見る、正確な方向に道具を使うという意味ではビリヤードと包丁使いに、大いに共通点があります。 人間の目には利き目というのがあります。 人差し指を立てて、右目だけ、左目だけで見ると同じ位置には見えません。 両目で見たときと同じ位置に見える目が、利き目です。 私は右目が利き目で、正確に包丁を入れようとす

柴漬けのお話

本日は「柴漬け」についてお伝えしましょう。 大昔・・山口美江さんでしたっけ。 バイリンガルの女優さんのCMで、 「柴漬け、食べたい・・・。」って呟くのがありましたが、時々・・無性に食べたくなる漬物のひとつです。 ポリポリとした食感が心地良くて、梅酢の酸味と塩分が茄子や茗荷、胡瓜の味わいに加えて、また紫蘇の風味が良く合います。 ただし、私の修行時代は、あの食感が固い・・・。 銀座にある高級店舗でしたから、ご利用になるお客様も、それなりにお年を召した方が多かった。