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包丁屋の料理よもやま

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包丁の事、料理の事を元料理人の包丁屋の店主が綴ります。 便利なチョイ技、得する小ネタを織り交ぜながら、きまぐれにお伝えします。 どうかお付き合いの程を、お願い致します。
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記事一覧

「包丁の使い方」 最大のポイント

今回のテーマは「包丁の使い方」 その最大のポイントについて、解説させて頂きます。 大原則 包丁を使う上での大原則は、 とにかく、この一点。 >>>包丁は押し付けただけでは切れません<<< 「押すか、引いて使う」これが最大のポイントです。 でも、実はこれがなかなかの難題で多くの素人さんや プロであっても、出来ているつもりでも案外、出来ていない。 見る者が見れば、理想とは程遠い使い方になっている時があります。 実際、以前共に仕事をしていた60歳過ぎのベテランと言われ

包丁の使い方(正しい姿勢)

正しい姿勢包丁を持つ姿勢、まな板と包丁の角度、人とまな板の角度。 理想的な角度で仕事をするのが、疲れずに早く綺麗に仕事をする第一歩というのは言うまでもありません。 正しい姿勢が自然に出来るようになるのが、私の修行時代でも最初の関門だったと思います。 とは言え、私たちの若い頃は姿勢について云々、細かい所まで指摘してくれる先輩や親方は、ほぼ皆無に等しかったのが実際の所でして。 親方の包丁の使い方に憧れて、先輩が立つ姿を記憶し真似して、仕事を覚えてきたのが現実でした。

包丁のキレ(サラダ編)

私は実はサラダがあまり好きではありません・・と、カミングアウトしますが、サラダを仕立てるポイントとして大切にしているのが、「包丁のキレ」です。 これは漬物やサラダ、果物に・・・そしてもちろん、刺身にも共通する概念です。 食材と言う物は、金っ気の刃を入れれば入れるほど味わいが落ちると言う考え方があります。 刺身に関しては疑問は残りますが、胡瓜の漬物や葉物のサラダ、果物のリンゴやナシ、モモ等・・・包丁を入れずに丸のまま、かぶりつくのが最も美味だと言う認識が料理人の中にも

アラ煮の仕立て方<手順と行程>

今回はアラ煮の実際の炊き方を、手順を追って書いてみます。 前回のポイント 前回のポイントを、整理すると、・鱗の掃除は完璧に行う ・火が通った瞬間に煮汁が丁度良い濃度になるタイミングで仕上げる ・鍋の大きさ、煮汁と素材の量、火の強さのバランスが大切 ・終始、強火で一気に炊き上げる ・最初のアクは絶対に取り去る ・牛蒡、生姜は有効なオプション ・最後の仕上がりに酒か味醂を加え照りを出す 以上のことを、頭に入れつつ始めてみましょう。 アラの用意 まずは、アラを用意します。

アラ煮の仕立て方(そのポイント)

※まずはポイントを押さえる アラ煮の仕立て方 さて、今回はアラ煮の仕立て方をお伝えいたします。 アラ煮と言う料理は、ご存知の様に決して簡単な一品ではありません。 ですが、魚料理の中では最も基本的な技術を駆使する定番の一品です。 骨付の魚のアラを酒と味醂、砂糖と醤油で短時間にパーッと炊き上げる。 魚から出てきた旨味を煮汁ごと煮詰めて濃厚なソースに仕立ててアラに絡ませる。 ・・と言うのが理想的なアラ煮です。 多くの方が勘違いしやすいのは、じっくりと煮含めて素材の芯

包丁と未来(包丁専門店「食おた」)

包丁と未来 包丁とは、 包丁とは、ただの調理器具、しょせん実用品という認識があります。 確かに一般の方が目にする包丁とは、そう言ったものが多いのが現実です。 雑貨店やホームセンター、100均にまで売られているのを見れば多くの方が、包丁の価値を見誤ってしまうのは無理の無い事です。 しかしながら、日本という国において包丁とは・・ 由緒ある伝統工芸品と言う一面があります。 私は包丁ショップを開店する前には割烹料理の料理人をしていました。 自分でも料理店を経営していた

春俳句

俳句にて一杯 温め酒孫に注がれてどつと老ゆ   北村益夫 人類は進化も出来ず酒温める   田口鷹生 黙しゐて絆深むる古酒の酔   松下米 涙腺のゆるむこのごろ温め酒   佐藤みちえ 夏蕨風の形にこだわりて   矢野のぼる 竹の子と呼べぬ背丈となりにけり   阿部佑介 果実酒の呑みくらべをり春の候   森下靜子 土曜日のちょっといい酒青葉雨  朝日彩湖 食前の梅酒に解けしわだかまり   重盛千種 春惜しむいのちを惜しむ酒惜しむ  結城昌治 白酒に酔って指

蕗の早煮

早煮とは? 聞き慣れない言葉かとは思いますが、和食の世界では意外と、ポピュラーな名称です。 じっくりと煮含めて煮汁と素材内部の水分を同化させる、そういった煮物が含め煮だとすれば、早煮は対局です。 素材自体の味わいと、周囲に絡む煮汁の味わいとのバランスで成り立っている煮物で、読んで字のごとく仕上がりの早い煮物です。 例えば「アラ煮」も早煮の一種です。 中は真っ白な身で、周囲に濃厚な煮汁が絡む事によってバランスが取れて料理として完成します。 また、青菜を淡口醤油の出汁

山独活の味噌漬け

意外と身近な所で見かける山菜、野山に自生する山独活(やまうど)を使った漬物を紹介します。 「山独活の味噌漬け」です。 長期保存が利きますが、手法としては実に簡単な漬物です。 ただし、本漬け・熟成まで進むとかなり塩分の高い漬物ですから茶漬けのお供や、刻んで、ご飯に混ぜておにぎりにするなど、古漬けの感覚でお楽しみ頂く漬物です。 途中段階の浅漬けで召し上がるのも趣があって良いものです、漬けてしまえば楽しみ方は自分流でけっこう、自由にお楽しみください。 さて、山独活は2~3

筍の木の芽焼

醤油の焦げる匂い、山椒の芳香が実に食欲を誘う、春らしい一品です。 筍の木の芽焼、ぜひぜひ、楽しんで頂きたい一品です。 今回は「筍の木の芽焼」についてお伝えいたします。 まずは筍ですが、生の物を茹でて使います。 もちろん茹でた筍を買ってきて、仕立てても問題ありません。 むしろ産地で取りたての状態から、間を置かずに茹でた水煮は非常に品質の高いものがあります。 中国産の生の筍だったら、国産の水煮筍の方が数段優れているでしょう。 さて生の筍は、まずは束子でざっと泥を落と

白身魚の冷やし汁

この一品は、鱧(ハモ)を使って仕立てたら最高の一品となりますが、一般的に手に入る刺身用の白身魚、鯛や平目、鱸(すずき)で仕立ててみましょう。 夏の暑い夜、こんな一品で晩酌を始めたら、さらに酒が旨くなる、そんな一品です。 刺身用の白身魚は、養殖の鯛が扱いやすいですね。 刺身用のサクを買ってきたら皮目を下にして、身の方から皮に達するくらいの切込みを入れます。 鱧の骨切、あの感覚です。 切り離さない様に皮1枚を残しつつ、身側から1~2mm間隔で包丁を入れる。 鱧を使う時

魚の使い方

本日は魚の使い方のお話です。 一尾の魚をいかに使いきるか、それも無駄なく適材適所に振り分けながら使い切る事を楽しめるかというノウハウをお伝えいたします。 1尾の魚、廃棄率で言えば45%位が一般的な認識です。 その廃棄率を下げるのが良い料理人の仕事・・・と言うのが私の仕事を覚えてきた頃からの教えであります。 使える部位を無駄なく使う。 そんな事を日々心掛けながら魚を扱ってきました。 まずは鱗(うろこ)を落として、内臓と鰓(えら)を抜いて水洗い。 三枚に卸して腹骨を

包丁のお話 (包丁を研ぐ)

包丁を研ぐにあたって、慣れない人が陥るのは刃先だけを砥石に当ててしまい、研ぎしろが崩れピタッとあてた時に刃先が砥石に当たらなくなる研ぎ方です。 平面では無く、研いだ面が弧になるので丸っ刃と呼びます。 この研ぎ方をすると、研いだ瞬間は刃がつき、いかにも切れる感覚を感じますが、すぐに刃が落ちて切れなくなる。 そして、また刃をつけようとすると刃先だけを研がなくてはいけないので、より丸っ刃が進む。 悪循環に陥り、最後には研いでも研いでも切れない包丁になる。 包丁を研ぐと言う

タラの芽のお話

知名度でしょうか、それとも日本人が好む素材なのでしょうか? いずれにしても、タラの芽天ぷらのご注文数は、他の山菜料理、季節料理に比べてもダントツです。 ではタラの芽とは? 落葉低木、ウコギ科タラノキ属のタラノキの新芽です。 日本全土の山野に群生していて、葉や茎には鋭いトゲがあるのが特徴。 葉が開く前の10㎝に満たない新芽を摘み取って食用とします。 その歴史は、非常に古く・・奈良時代から高級品として扱われてきました。 植物性油脂とタンパク質を豊富に含