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2023年の夏休み

 2023年はインスタを更新するぞーと気合をいれてはや8ヶ月。
 前回インスタを書いたのははてさていつだったでしょうかというていたらくですがみなさまいかがお過ごしでしょうか。
 
 ただいまものもらいの手術後があんまりよくなく安静にしようね月間、SNSをがんばりたいところです。
 スマホやパソコンの画面を見るのは大丈夫なんです。
 問題は、埃。
 という古本稼業らしからぬ。
 あとすこしで落ちつきそうなのでここが踏ん張りどころです。

 
 今回は、7月末に湯田温泉・津和野の旅にいきましたよーという備忘録。
 最初はインスタに投稿しようとしていたのですが長くなりすぎてはじかれたのでnoteにうつしました。
 なので冒頭がインスタの話になっています。
 それもまた味わいということでおひとつ。

 ということで湯田温泉・津和野の旅。
 おともだちと一緒の一泊二日、楽しかったです。
 うまれも育ちも大阪のはずれのわたしですが、そもそものルーツは東京と大分。
 さらには母方の祖母はずっと山口のひと、ということで、祖母はわたしがうまれてすぐに亡くなっているので山口のことはほとんど知らないながら母祖の地にいってまいりました。

 山口行きは2回目です。
 まえは松谷みよ子『ふたりのイーダ』聖地である岩国や、萩、湯田温泉を駆け足で巡りました。
 今回は湯田温泉をゆっくり楽しみました。
 中原中也文学館やカフェ狐の足あと、井上馨顕彰の公園などなど、あちこちに幕末や維新の気風を感じました。
 山口で長く続き、政財界のお歴々の歓談の場ともなった料亭菜香亭(いまは観光施設になっている)もいきました。
 「きみたちはどう生きるか」を観たあとだったので、映画の舞台になったお屋敷のつくりをおもいだしたりしていました。
 政治に関わる人々の揮毫もあって、字は体をあらわすとはよくいうけれど、明治大正昭和のお歴々の息遣いが聞こえるようだとおもいました。
 菜香亭の名物女将だった方の展示もあって、山口高女出身とあったのでアラ祖母の先輩だわ、会った記憶のない祖母の気配を感じられるようと嬉しくなって案内のかたに言ってみたりしちゃったんですけどあとで母に確認したら祖母は下関高女でした。うそをついてしまった…。ちなみに高女時代の祖母のご自慢は香月泰男先生に絵を習ったとからしいです。山口すごいね。

 湯田温泉駅前の「ポラーノ文庫」さんが、山口の郷土資料がたくさんあって楽しかったです。
 わたしはどうも、修業させていただいた古本屋さんが地域資料に強かったせいか、そのあたりに馴染みがあるというか、いまでも郷土独自の出版物がすきだなとおもいます。
 その土地に根づくもの、その土地ではたらくひと、つくられる本、そういうものに興味があります。
 今回の、というかこの一年どこにいくにも、居心地のいい場所とは、自分のすきな本とはということを考えています。
 ポラーノ文庫さんで本を見て、買って、それをすこし自分のなかでかたちにできたようにおもいます。
 ポラーノ文庫さんではマルクス関連のラジオ…ポッドキャスト?がずっとかかっていて、さらにはポラーノ文庫さん主催のマルクスの読書会もされているようで、ポラーノでマルクス、という妙味を感じてこっそりニヤリとしてしまいました。
 以前いしいしんじさんの講演会に行ったとき、「賢治はファシストですよ」とおっしゃっていたことをちょっとおもいだしました。
 思想とか主義とかはよくわかっていないし、わたし自身とくに賢治に思い入れはないタイプということもあるのでしょうが、中原中也のお膝元でのことなのもおもしろいなと、ちょっとにこにこしていました。
 ポラーノ文庫さんでは、赤江瀑ほか山口の作家たちが先達の郷土の作家について書いた山口郷土作家研究会編『甦る郷土の作家たち』(四季出版)を購入。
 勉強になりました。

 翌日は津和野にいき森鴎外記念館へ。
 こちらは森茉莉展をおめあてに。
 津和野、はじめていきました。
 津和野カトリック教会がとても良かったです。
 教会の、畳敷きの信者席にステンドグラスの光がさしているのが綺麗でした。
 教会でひざまづいてお祈りをされていた方が、もうすこしすると光の加減でステンドグラスがきらきらしてもっと綺麗になりますよとおっしゃっていて、信仰を捧げられる場所が身近にあるということ、その場所を愛しているということはきっとすてきなことなのだろうなと思いました。
 教会のとなりには乙女峠の資料室があって、わりと当時の資料がそのまま置かれていたり、いかにキリシタンが弾圧を受けたかの克明な説明や模型があったり、教会で祈りを捧げられていたかたとお話した直後だっただけに、なかなか胸に迫るものがありました。
 わたしはとくにキリスト教者というわけでもないのですが、キリシタン弾圧についてはむかしから、なんでだかいつもすこし気にかかっています。
 帰ったあと、仕事で明治末期に書かれたキリシタン弾圧覚書(弾圧されたひとの人数やプロフィールや処刑日や経過が詳細に記されている)を読む機会があって、なんとなく胸に迫りました。
 90歳を超える元大友宗麟家臣の伝道者、というひとの記録があって、信仰とか忠義とか、たぶんわたしには体感としてはわからないことがこのひとにはあったのかもしれないと、そんなことを考えました。

 それから安野光雅美術館にもいきました。
 とても良かったです。
 津和野からはやまぐち号に乗って2時間のんびり汽車の旅。
 おともだちが「まさに夏休みという概念」と言うくらい、青空と山々の緑、線路は続くよどこまでも、といった感じでとてもよかったです。
 やまぐち号から見える沿線の景色が、安野光雅の世界にそっくりで、おともだちと似てるね似てるねと言いあっていました。
 旅をして、実際にその場所に行き、見る、聞く、感じるってこういうことなんだなと思いました。
 その場にいき見聞きし感じるというのは世界じゅうのだれしもに開かれているわけではないし、状況や事情によっていろいろだけれども、わたしはわたしのできる範囲で、旅をしてみるのはいいことかもしれないなと思いました。

 新山口でおともだちとお別れして、大阪に帰りました。
 とってもたのしい夏の思い出ができました。
 そんな旅の備忘録。
 2023年の夏休みのお話でした。

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