14歳のわたし
今日は、幼なじみのユキと会ってきた。
ユキはショートカットでバスケットボールに夢中、めんどくさい年頃のこじれた女どもとはちょっと距離をおき、かといって悪口なんて言わないし、颯爽としてとにかくカッコイイ、そんな女の子だった。
親友だけど、文系気質のわたしからしたら、憧れ。小学校、中学校ほぼ同じメンバーしかいない山の中の同級生にそんな存在の子がいたのは、わたしにとって、とてもラッキーな事だったと、今ならわかる。
わたしが本を出して、ユキが「サインが欲しい」と言ってくれた。では、会おう!となった秋の休日。
やはり、結婚して子供を持つと、女って友達と疎遠になる。そんな期間を置いての再会。ややや、25年ぶりくらいではないかい?
しかし、待ち合わせ場所には変わっていない後ろ姿。すぐわかる。
緊急事態宣言が明けての新宿のお昼、どの店もいっぱい。ビルの4階のタイ料理のお店にやっと入る。向かい合って座る。ランチビールで乾杯。変わってないけど、大人になったのだ。変な感じ。
そして、ユキが、大きい封筒を差し出した。
中には見覚えのない青いノート。丸文字の羅列。物語?なんだこれ。ダサい。厨二病?
ギョっとする。記憶が蘇ってくる。「これ。わたしが書いた?」
「そう。書いていた小説を誕生日にくれたの。小説とかエッセイとか書く人になると思ってたんだけど、漫画だったんだね。」とユキ言った。
「全部繋がってる」
ちょっとゾッとした。しかし、字が下手だ。挿絵もダサい。ありえない。
ユキは、「あげる。」と言った。「でも。わたしがもらったものだから、いつか返してくれればいい。読んでみなよ」
そっとカバンにしまって、わたしは読まないかもしれない、と思った。セキララすぎる。しかし
昔から、こんな恥ずかしい事を繰り返しているのだ。もう性懲りも無く開き直った。そして、本を出すことになった。これは、運命と意志の力だ。今ならわかる。わたし、相当しつこいのだ。
そうして積もり積もった世間話。お互いの近況報告。お互いに子供達の手が離れ始めて、今、自分自身の人生を考える地点に身を置いている。そんな世代。
ユキは、何回か、「わたしのやりたい事ってなんだろう」といった。
あの、リーダーで学級委員で、キャプテンで、なんでもできた女の子が?専門学校で資格を取って、子育てしながら、ずっと正社員でバリバリやってきたスーパーヒロインが?
「あの頃は、先生に言われることをできるのが正しいと思っていたから。でも、今はそうじゃない。自分の好きな事、やりたい事って言われると、わからないなあ」
一方わたしは、お絵かき好きの妄想癖あり、夢を追うも大学4年で妊娠して、就職なんか夢のまた夢。やっと受かった遺跡発掘調査の仕事だってアルバイトだし、でも、それをネタにさらに妄想を広げて物語を綴る、行き当たりばったりの人生だ。
そして、我々が育った箱根山の圧倒的な自然の話になる。
「山はいいよね。」「良いというか、あの中にいたからね。遊び場なんか、山しかない。」
圧倒的に人間以外のエネルギーに包まれていた。実は、わたしは、あの自然の中で、神様に出会ったことがある。
その時の話をした。
「どこで?」「ほら、あのミカちゃんちの前のススキの原っぱ。あそこで、急にすごいものに包まれて、ピカピカで眩しくて、幸せで、全部知っているという感覚で、毛穴が総立ちになった。」確か、あれは14歳くらいだから、それから進路とかどうでも良くなったフシがある。
アレ?この話はユキにした事なかったっけ。そう、あんまり個人的な体験なので、何人かにしか話していない。
一緒に山を駆け巡り、川で魚を獲って、自転車で爆走。たくさんの時間を一緒に過ごした。一緒の教室に詰め込まれ、同じ先生の言葉を聞いたけど、別々の人生を進んでいたんだ。
今になって、そんな事がわかるけれど、また、こうやって再会する。
いくつもの現実が層になっていて時々交差するようだ。そしてまた、確信という元気をチャージして、元の生活の場に帰るけど、わたしは少し強くなっている。親友とだけじゃなくて、思いがけずあの頃のわたしに再会してしまって、やっぱり神様はいるんだなんて、ああびっくりしています。
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