接遇・マナーのベースに根差すもの   ~言葉遣い~

さて、お話することも今回の「言葉遣い」になり、詰めに近づいてきました。
私は堅苦しい、マナー(型)に厳しい人は大のつく苦手ですが、それと同様に人への配慮に欠けるのも
大大大の苦手です。社会生活を送る以上、少しでも自分らしくありたい、また、人もそうであってほし
いと思うと、「マナーは取り締まりでも型にはめようとすることでもない」とますます確信を深めてい
ます。本来はそれぞれのキャラクターがのびのびと個性を発揮しつつ、それでいて皆が心地よい空間を
共有するために必要な最低限のルールがマナーなのです。

接遇・マナーのベースに根差す心遣いとは
・常に相手に敬意を払い、尊重すること
・相手を不快にさせない心遣い、相手に恥をかかせない配慮を行うこと
・時・場所・置かれている立場を十分に考慮して最もふさわしい振る舞いをすること
この3点に他ならないのです。
そして、この心遣いを日常的に実践することこそが接遇・マナーを発揮することに繋がります。

          目次

1「接遇・マナーの5原則」
   ~挨拶・表情・身だしなみ・言葉遣い・立ち居振る舞い
2 日本語は高文脈文化(high-context cultures)


1「接遇・マナーの5原則」
~挨拶・表情・身だしなみ・言葉遣い・立ち居振る舞い~
言葉遣い

私は地上に降りた後、6年間、医療メディエーター(対話促進者)として、病院内で起きる医療過誤や
(意見や事柄が、くいちがって、合わないこと)から派生した患者トラブル、突発的に起こった事象と
もいえる医療事故に遭遇した人への対応を行ってきました。医師、看護師をはじめとする放射線技師、
生理検査技師、数々のコメディカル部門や、事務方の各部門の人達、時には駐車場トラブルなど本当に
院内のありとあらゆる場面でのトラブルに関与しました。そこで紛争解決への糸口を見つけ軟着陸をめ
ざして各方面との対話を繰り返して来ました。
なんでも屋さんと揶揄されたりもしておりました。
医療メディエーターという仕事を平たく言うとトラブルの渦中にある両者の間の認識の溝や誤解を埋め
る中立の対話促進者という役割を担うもの、と理解していただくことができます。一般的なクレーム対

応に特化した役割とは異なります。
私は入職初日から記録しただけで3500件のケース対応に携わりました。
そこで見えたことはトラブルの多くがほんの些細な言葉や言葉に準ずる立ち居振る舞いのような事に端
を発していたということです。
それは何も医療の世界だけではありませんね。生きている限り、どこでもいつでも私達の直ぐ身の回り
に起き得ることです。

先ず、正しく言葉を使えると、人間関係を豊に彩り、円滑に出来るというのは言うまでもありません。
そればかりか、八方ふさがりの危機的状況に直面した場合にも、その局面が一変するほどの影響力を持
つもの、それが言葉でもあります。
そしてそこには心が伴うことが大前提です。
適切で、十分に両者の立場と事実背景に基づいて、双方に恥をかかさないようにどういう言葉を選択し
て対立を和らげていけばいいのか、理解を深めていくのか、このテクニックは何も対人業務だけに求め
られるものでは決してありません。

~とてもシンプルな次のフレーズを列記してみました~
ごく日常的な言葉ですが、丁寧に言い換えてみましょう

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

・わかりますか?
・どうしますか?
・知りません
・ちょっと待ってください
・え?何ですか?(聞き取りにくい場面で)

              ↓
・おわかりでしょうか?
・いかがなさいますか?
・存じ上げません

・少々お時間をいただけません(でしょう)か
・恐れ入りますがもう一度お願いします

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

丁寧な言葉を用いることでより柔らかい印象になることがわかります。
もう一段階、工夫があるとさらに印象は変わります。
・トーン
・ペース
・しぐさ
・ポジショニング
これらにも最大の注意を払って一つの言葉を丁寧に扱うのです。
日本語は適切な言葉を発するだけで成立するような構造にはなっていません。

2   日本語は高文脈文化(high-context cultures)


より高度に、繊細に発達した情緒を表現する日本語は高文脈文化(high-context cultures)なのです。

私達日本人の「自然と自己主張を抑えて、相手と協調することを好む」性質や、「相手に対して配慮し、遠慮することが美徳とされ、相手の気持ちを察する」気持ちが、日本語の構造と深く関係しています
。それが「日本語の美しさ」
上記に説明される通り、豊な表現方法として世界に類を見ない日本語です。言葉の選択にも想いが十分に乗って放たれますし、言葉以外のノンバーバルな部分にも同様に意味合いが乗って伝わるよう複雑な構造をした言語と言えます。
私達日本人は幼いころから、漢字、平仮名、カタカナ、ローマ字を学びます。通常、諸外国の言語を見てもこれほどまでに多数の文字を学ぶところはありません。英語圏においては大文字と小文字が有るくらいです。

では、繊細に発達した情緒を表現する日本語の対話で使える一つのテクニックをご紹介してみます。


【会話の最後を否定形で終わらせない】
例 「~できません」「~られません」


どうしてもネガティブなことをお伝えしなければならない、何かをお断りする場面があったとします。
そのようなときにどのような言葉を選択したら相手に少しでも不快感を与えないでお断りであることを
伝えられるでしょう?
「~できません」という否定形で終わらずに、必ず前向きなオプションを付け加えるイメージで対話を終えてみましょう。
 
例1) 「この書類の受付は明日の12:30までです。

    それ以降は受付られません」        ☓
            ↓
   「この書類の受付は明日の12:30までです。

    それまででしたら受付て  おります」    〇


・言い方(トーン)にも工夫してみましょう
・話すスピードにも留意してみましょう。


少し大げさですが相手を観察して理解の速度に沿って次のフレーズに繋げることが大切です。
相手のぺースに寄り添うのです。相手に敬意を払う、という配慮がここでいきてくるはずです。


・仕草には思いの他、本音が饒舌に表れているものです。自分が無意識にどんな姿勢や癖を持っている
かを客観視すると以外に沢山の気づきがあるものです。
・ポジショニングというのは、文字通り立場のことです。
 意識しないうちに立場上、相手より上からの立ち位置となっていやしないか、ということにも配慮するとコミュニケーションがスムースになるはずです。
 対話する際の立ち位置にも実は力が働きます。追って記載していこうと思います。ここでは割愛です。


今日はこの辺でお終いといたします。
ほんの一部、導入をお伝えしました。
次回は、この続きをお話してまいりますので、どうぞお楽しみに待っていてください。

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