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それは、勝手な決めつけだった。(企画メシ2−1)

 「伝統芸能の世界はこんなに広いのか!」と驚きました。歌舞伎、能、狂言、文楽……。私はかつて触れたことのあるものからしか発想が広がらなかったけれど、地域のお祭りや神楽からストリップまで!  九龍ジョーさんの著書「伝統芸能の革命児たち」を読み、たくさんの伝統芸能の「解釈」を目にし、驚きつつもワクワクが止まりませんでした。

「よすが」は自分の中にあった。

 阿部広太郎さんが主宰する「企画でメシを食っていく(企画メシ)2021」。第2回は、編集者・ライターの九龍ジョーさんの「伝統芸能の企画」。「伝統芸能」を調べて、あなたが見つけた魅力を説明してください。というテーマです。

 いま改めて見ると、「伝統芸能」と、カギカッコがついている。ここに自分なりの「解釈」を加えることができたはず。ですが、私は歌舞伎、落語、能、狂言、といったところから離れられませんでした。

 まずは、ヒントに挙げられた九龍ジョーさんの著書「伝統芸能の革命児たち」を読むことから始めました。

 正直、難しい……。触れたことがない分野も多く、知らない言葉も多数出てきて、その度に立ち止まってしまいます。九龍さんの言葉を借りれば、テーマに近づく「よすが」ができたのは、自分自身の体験からでした。

能の人間国宝、梅若玄祥がアテネの演劇とコラボして新作能を作るドキュメンタリーを見たことがある。

 この番組、録画したままだった!と思い出し、番組を見ました。

 てっきり、伝統的な演目が上演されたのだと思っていたのですが、演じられたのは、ギリシャ神話を題材にした叙事詩「オデュッセイア」を基にしたもの。ちなみに、私はギリシャ神話とこの「オデュッセイア」が大好きで、ギリシャを旅し、今度はギリシャという国が大好きになりました。ギリシャの英雄、オデュッセウスが出てくるという時点で、かなり前のめりになりました。

 会場となったギリシャ・エピダウロスの古代劇場には行ったことがないけれど、この能が演じられた「アテネ・エピダウロスフェスティバル」を体験したことがあります。2004年、アテネオリンピックの年に、このフェスティバルの一環として、蜷川幸雄さん演出のギリシャ悲劇『オイディプス王』が上演され、アテネの古代劇場で観劇しました。主演は狂言師の野村萬斎さんと宝塚出身の麻美れいさん。音楽は雅楽師の東儀秀樹さん。

7.3 オイディプス (29)

 狂言、雅楽、宝塚。伝統芸能の要素、てんこ盛りです! ここから考え始めたのですが、「いやいや、演じられたのはギリシャ悲劇だし、伝統芸能から少し外れちゃうな」と思ってしまいました。これ、勝手な決めつけでした。 

グッと近づき、うんと離れる。

 講義では、「編集者である自分とライターである自分は全然違う」というお話がありました。今回の課題を振り返ると、私は自分を二つに分けて、「編集者の目線で見て、ライターとして書く」ということを意識すればよかったと思いました。そうすると、書くべきこと、タイトルにすべきことはギリシャで演劇を見たことだ、と気づけたと思います。

 そしてまた、自分の個人的な体験・興味はテーマから外れてしまうと思ったのですが、これもまた、勝手な決めつけでした。

 九龍さんの講義で印象に残ったのが、「自分というフィルターを通す。自分という演算装置に入れて、出てきた反応を伝える」という言葉。自分の体、五感を使い、自分を通すと他の人にも伝わりやすい。これは、阿部さんの著書「超言葉術」にある「そもそも」「たとえば」「つまり」の「企画の思考フレーム」に通じる!と思いました。

 一度、グッと、自分の中に引き込む。自分の経験を探る。自分の好きに近づける。そこから外へ出すと、また違った企画ができるのだと思います。今回は、企画生の皆さんの企画を見るのがとにかく楽しくて、ワクワクしながら読みました。AppleMusicで落語を聞くことができるのも知らなかったし、九龍さん監修のYouTube「神田伯山ティービィー」で講談というものに初めて触れ、Amazon Prime Videoで、図夢歌舞伎『弥次喜多』を見ました。伝統芸能への扉が、一気にたくさん、バタバタと開きました。

届けるためにゴールを定める。

 コピーを考えるときは、「目的=ゴール」を明確にし、ターゲットを定め、何を言うか、どう言うか、と思考を進めていきます。しかし、今回、どんなゴールを目指すのか、誰に届けたいのか、そういう思考がスッポリと抜け落ちていました。そこを見極めて取り組まれていた企画もあり、そういうものはしっかり記憶に残るものになっていました。

 そしてまた、自身の体験や、自身の心が動いたことを出発点にした企画には、心がひかれました。実際に観に行く、話を聞きに行く、取材する。もっといろんな切り口がありました。

 「1枚で完結」だから1枚で収めようと四苦八苦したけれど、そこからリンクを張って、いろんな場所へ広げることができたし、写真やデザインを取り入れて見せ方の工夫もできた。さらには課題は出して終わりではなく、自分で続きを作ることだってできた。

 自分の視野の狭さに気づき、たくさん視界を広げてもらうことができました。また次への課題がいっぱいできて、ワクワクしています。次はどんな扉が開くのか。今から楽しみです。


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