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東京芸術祭ワールドコンペティション

11月2日に上演された3作品を観劇することができました。

■ボノボ『汝、愛せよ』

薄暗い冒頭のシーンが終わって舞台美術の蛍光灯が点いた瞬間、眩しすぎて舞台を直視できませんでした。
また、舞台上の長机が高すぎて、俳優があまり見えませんでした。途中で登場して奥に座った俳優に全く気づかなかったので、彼が話し始めた時に驚きすぎてしまいました。私の席は前から2列目でした。もっと後ろの席から観るべき作品だったのかもしれません。
「事実が少しずつ明らかになる」という、SFと会話劇の基本的な楽しみがある作品でした。人種差別について、自分自身を省みる機会となる台詞がいくつもありました。
(東京芸術劇場シアターウエスト、2019年11月2日14時)

■戴陳連 (ダイ・チェンリエン)『紫気東来−ビッグ・ナッシング』

影絵の映像に合わせて、演出家で出演者の戴陳連が、古いミシンを載せた台を運んできたり、そのミシンを使ってものすごい音をたてたり、他の影絵のシートをプロジェクターの前に当てたり、水が入ったバケツをロープで吊り上げたり、様々な作業をしていました。
影絵は、中国の怪異記事集成『酉陽雑俎(ゆうようざっそ)』の話と、戴陳連の祖母の思い出が混ざっているようでした。
影絵の内容はいまいちわかりませんでした。そして、戴陳連が行う動作の意味もわかりませんでした。(大きな扇風機にマイクを当てたのは、嵐の音の再現らしく思えました。)
『汝、愛せよ』の終演後、ほとんど休憩せずに観劇したことも原因のひとつかもしれません。
あまりのわからなさに、逆にリラックスして、終盤はずっとにやつきながら観ていました。最後に起こったことは、やはり関連性がわからないまま、ものすごく驚きました。
この作品について、知人に話す機会が何度かありました。上演を観た時はほとんど楽しく思わなかったにも関わらず、いつ誰に話しても、不思議と楽しいです。
(東京芸術劇場シアターイースト、2019年11月2日15時30分)

■dracom『ソコナイ図』

プレイハウスにははじめて行きましたが、照明や音響が素晴らしく、とても美しい舞台でした。
『ソコナイ図』は何度か拝見していますが、今回は、初演の年越し公演のことばかり思い出されました。俳優も劇場も違うけれど、その時と同じ問いが心に浮かびました。
もし私が、『ソコナイ図』と同じように、ゆっくりと死に向かっていくことになったとして、何を思うだろうか?この作品を観たことを、少しでも思い出すだろうか?この姉妹のように、身近な人の幸せについて考えることができるだろうか?
『ソコナイ図』の初演は、私が20代の一番最後に観た演劇でした。
私は日々、ゆっくりと死に向かっているのだと、30代の今はそう思います。
(東京芸術劇場プレイハウス、2019年11月2日19時30分)

おしまい

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