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高山市にて、住職と会う

突然のことだ。野生の住職さんと出会った。その人はあだ名が住職で、住職書房という古本屋でありカフェを飛騨高山で営んでいる。さらにはその場所はゲストハウスの運営もしていて、泊まることができる。私がこの文章を書いているのは、まさにそのゲストハウスの布団の中だ。

この住職さんの名前はまだ知らない。むしろ聞かずに住職さんと呼び続けようと思う。住職さんが住職という名前を名乗り始めたのは、彼が北海道を旅していた時のことで、仏教の話を他の方々にしていたら「なんか、住職っぽいね」と言われ、その場で丸刈りにされたらしい。その日から、野生の住職が誕生した。彼はお寺出身ではなく、僧籍も持たないが、住職である。

ご縁の始まりはTwitterに連絡してみたことだった。住職書房に泊まってみたいと思い、「ゲストハウス、本日泊まれますか?」とメッセージを送る。「泊まれますよ」と返事が返ってきた。夕方になり、住職さんと対面する。頭は坊主で、髭が生えている。柔和な感じで安心だ。

「今日は何するんですか?」と聞かれた。それに対して、「何もすることはありません」と答える。とはいえ私はカラアゲを贈ることが多い人間なので、「もしよかったらカラアゲを食べませんか?」と聞くと、「いいですね、お願いします」と返事がきた。

お会いして5分くらいのこと。空揚げをすることが決定した。住職は思いのほか、柔軟らしい。何で突然やってきた人間のからあげを受け入れることにしたのか聞いてみた。すると、旅人にはいろいろいて、慣れているとのことだ。たしかに旅人には、いろんなタイプがいる。私も想像の域を超える何者かになりたいところである。

夜、からあげを作った。私はからあげしか作らない。どうしようもない人間だ。からあげ以外の料理はことごとく伸びず、作るのが億劫で、からあげだけを作り続けている。今回は、住職の奥さんとゲストハウスに併設しているシェアハウスに住んでいる住人とが、夜ご飯にやってきた。住人からキャベツを、奥さんからポテトサラダを頂き、栄養バランスは調った。

「いいですよ」「喜んで」とノリで答えていたら、Podcastに出演することになった。そのPodcastはヘンコな人たち(変わった個性的な人たち)から、価値観や物の見方を学ぶというコンセプトでやっているらしい。自分はただ真っ当に生きているだけなので、別に「変わっている」とも思わないのだけど、ヘンコフィルターにひっかかってしまった。大学生の時にはユニークになりたいとこじらせてしまったこともあったが、その話はまた今度にする。ユニークになりたい、個性的になりたいと思っていた時は、そういう言葉をそれほどかけていただくことがなかったのだけど、今の空揚げをどんどんやっていくやり方になった途端に、よく言われるようになった。逆に、私の内面では、ユニークになりたいという変身願望がひと段落してしまった。

Podcastの録音では、さまざまなトピックが出てきた。なかなか面白い人物だ。住職というあだ名を使い続けて、さらには住職書房という名前まで使っているのだから、住職さんもまたヘンコなのかもしれない。それでいいのだと私の頭の中のバカボンが歌っているのだが、そうなのだろう。ヘンコに優しい、さらにはヘンコでなくても優しい、ユニークな住職さんがここにはいる。

面白い場所なので、滞在を増やすことにした。

住職書房、泊まりたい人や訪ねてみたい人は、おすすめです。

では!

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