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たとえ時を戻せても

 もし、突然過去に戻ったらどうしよう——。

 そんな、まるでする必要のない不安が、ごくたまにふっと降りてくることがある。

 過去に戻るなんてお断り!
 だって、今周りにいてくれる人たちが大好きだから。誰かひとりでも欠けたら、私は私ではなくなってしまう。

 もし過去に戻ってしまったとして……。
 同じ選択をすれば今の未来にたどり着けるという保証はどこにもない。

 何月何日の何時にあの坂を登ったのか覚えていないし、どこの席に座ればいいのか自信がない。
 何かひとつでも狂ってしまったら、あの人と出会うきっかけは失われてしまう。

 なんで怖いんだろう…!

 ひとつ補足しておくと、私は決して綺麗な人間でも強い人間でもない。出会いたくなかったと思うくらい嫌いな人もいるし、ふいに蘇る苦い経験もたくさんある。

 けれど、もし目の前に可愛い魔女が現れて

「過去に送ってあげる。無条件の、大サービスだよ!」

 と甘い言葉を囁いても、笑顔で断るだろう。

「必要ないよ。だって私は、今の私で生きていきたいから」


 ありがとう。過去の私。
 あの選択をしたおかげで、私は今幸せです。

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