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相手の技を受ける優しさ

 何年経ってもずっと記憶に残っている乱取りがあります。そのうちの1本が高校3年生の時に、教育実習生の先輩とやった乱取りです。当時の私は、高校生最後の試合であるインターハイ予選を直前に控え、プレッシャーで精神的に追い込まれていました。先輩はそんな私の心情を察したのかもしれません。「乱取りやろう!」と笑顔で声をかけてくださいました。
 組む前は、大学4年生との乱取りとあってすごく緊張しました。しかし、いざ組んでみるとそんな緊張はすぐに解けました。先輩は肩の力が抜けており、とても柔らかい組み方だったのです。そして、私がタイミング良く技をかけた時は気持ちよく投げられてくれ、そのたびに「いい技だ!」「これは試合でもかかるぞ!」と言ってくださいました。自力で投げたのでは、と錯覚するほど先輩の受け方は上手かったです。
 インターハイ予選は3位で終わりましたが、あの乱取りがあったからこそ、自分を信じ、持っている力を全て出し切れたのだと思っています。約25年経った今でも先輩に心から感謝しており、先輩は私にとって理想の柔道家です。

 私は受けが上手いことも良い柔道家の条件だと考えています。技が上手く、その原理も理解している。加えて心に余裕がある。だからこそ、相手の技を上手に受けてあげることができます。
 咲柔館では、子どもクラス、中高生・大人クラスともに「相手の技を受けることも稽古」「相手の技を受けることで気づくことがある」とよくお伝えしています。皆さんは、11月11日(土)に行った両クラスの合同稽古でもこのことをしっかりと実践されていました。大人は子どもの技を受ける、有段者は白帯の技を受ける。こうした優しい文化があるからこそ、子どもや白帯の方でも安心して乱取りをすることができます。
 私が高校時代にお世話になった先輩のように、強くて優しくて受けが上手い柔道家をこれからも増やしていきたいです。




「柔道をやることで、人生はより豊かになる」
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