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F分布の話

0.この記事の概要

この記事ではF分布を導入して、その活用法を紹介する。
想定読者は統計検定2級を受けようと思っている人・2級を受けた直後でこれから準1級を目指そうという人である。

1.F分布とは何か知っているか

前回χ^2分布を定義したように、今回もF分布を定義するところからスタートしよう。

今、W1とW2がそれぞれ自由度df1,df2のχ^2分布に従うとする。このとき、
F=(W1/df1)/(W2/df2)が従う分布を「自由度df1,df2のF分布」といい、F(df1,df2)と書く。

期待値や分散の求め方はこちらを読んでみよう。

2.χ^2分布といえば平方和、ならばF分布は分散の比

χ^2分布の学習の際には、式の形から偏差平方和を連想し、標本不偏分散の分布を求めたり母分散を区間推定したりχ^2検定を行ったりした。

今回も同様に連想をしながら、F分布を活用していこう。

問1
今、2つの正規母集団A,Bがある。それぞれの母分散は5^2と4^2である。このとき、Aからサンプルサイズ15、Bからサンプルサイズ20の標本を抽出する。
(1)AとBのそれぞれの標本不偏分散の分布はどのように表せるか。
(2)AとBの標本不偏分散の比の分布はどのように表せるか。

問2
今、2つの機械A,Bが工業部品を作っている。
2つ機械が作る部品の重さはそれぞれ正規分布に従っていると考えられる。
2つの機械が同品質であるかどうかを調べたいので、以下のように調査と検定を行う(等分散性検定)
Aからサンプルサイズ15、Bからサンプルサイズ20の標本を抽出した。このとき、不偏分散はそれぞれ4^2と5^2であった。
AとBの母分散は同じであるといえるだろうか?
(1)それぞれの母分散をσ1^2とσ2^2とした場合、標本不偏分散の比はどのような分布に従うだろうか。
(2)σ1^2=σ2^2とした場合、標本不偏分散の比はどのような分布に従うだろうか。
(3)今回の標本不偏分散を用いて、p値を求めよ。(両側検定か片側検定か注意せよ)
(4)帰無仮説を棄却するべきか判断せよ。

3.分散分析

適合度検定でχ^2検定を行うように、分散分析でF検定を行うことを知っている人は多いだろう。
しかし、分散分析表は書けてもなぜF検定をするのかについてはよく知らない人も多いのではないだろうか?
この章では疑問の余地をできる限り減らしながら分散分析を学ぼう。

問3
あなたはコンビニチェーンのオーナーで、地域A、地域B、地域Cにそれぞれ4件ずつコンビニを持っている。
合計12件の今月の売上を元に、あなたは地域ごとに売上の母平均が同じかどうかを検定したいと考えた(つまり、次の店舗を出すとしてその店の売上の期待値は地域によって変えるべきかどうかを知りたいのだ)。
そのために以下の手順で分散分析を行うことにする。

地域Aの店の売上を、x_a1,x_a2,x_a3,x_a4とする。
地域Aの店の母平均をμa地域B,Cも同様に表記する。
また、各地域内での売上は正規分布に従い、その母分散はすべてσ^2とする。
すなわち、各店舗の売上y_ijは
y_ij=μi+ε (εはND(0,σ^2)に独立に従う。)と表せると仮定する。
(1)帰無仮説と対立仮説を立てよ。
(2)群内平方和を式で書け。
(3)群内平方和が従う分布を説明せよ。
(4)群間平方和を式で書け。
(5・難)帰無仮説が真である場合に群間平方和が従う分布を説明せよ。
(6)帰無仮説が真である場合、(群間平方和/2)/(群内平方和/9)がF分布に従うことを示せ。

謝辞

このnoteはピースオブケイク様での統計勉強会のために作成した資料です。勉強会での講師の機会をくださった参加者のみなさまに感謝申し上げます。

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